自分は編集者&執筆指導の講師として士業・専門家の記事を多数直しています。2013年から編集長を始めたので、人の文章を直すようになってすでに10年たちました。編集の際に一番手を加えるのは書き出し、つまり冒頭です。丸ごと書き換えてしまう場合もあるくらいで、その理由は書き出し次第でどれくらい読まれるかが劇的に変わるからです。
書き出しに必要な「ネタと切り口」
書き出しに入れるべき要素は『この文章は「何を」「どのような視点」で読者に伝えようとしているのか?』です。これをハッキリと伝える必要があります。
何を・どのように、英語ならwhatとhow、自分はこれを「ネタと切り口」と呼んでいます。書き出しがピシっと決まれば文章全体も引き締まって見えます。
ネタと切り口を読者に明確に伝える。
記事を読む準備が出来ていない読者に「前フリ」をする。
これが書き出しに必要な要素です。プロの書き手、ライターや記者の書いた記事には必ず前フリがあります。
一方で文章を書き慣れていない人はこの書き出しが全く出来ていません。そもそも書き出し・前フリがすっぽりと抜けていて、いきなり「本文」から始まっている文章も珍しくありません。いうまでもなくこのような記事は全く読まれません。なぜなら大抵の読者は「文章を読む準備」、つまり「書き手が文章で伝えたいことを受け取る準備」が出来ていないからです。
大手メディアの記事でも「今回はこんな内容の記事です」と編集部側で冒頭に書き出しを補足して、その後に本文が始まるケースをたびたび見かけます。書き直しをさせる手間を考えると編集者が書いた方が早いからです。そのような記事の多くが専門家や士業、つまり専門知識はあっても文章を書き慣れていない人の記事です。
編集者は書き出しが0点のダメな記事をたくさん読んでいますので、書き出し・前フリの書き方をマスターするだけでも、書き手としてプロの編集者から一目置かれます。忙しい編集者にとって、直さなくてもいい文章を書ける専門家は神様のように有難いわけです。
編集者に限らず読者からの印象も、ヘタクソな文章はそれだけで頭が悪く見えます。専門知識、つまり頭の良さがウリの士業・専門家にとって、そんな印象を読者に与えることは致命的です。
なぜ前フリが必要なのか?
わざわざ編集者が書き出しに手を加える理由は当然のことながらより多くの読者に読まれるためです。
せっかく記事に興味を持った読者を離脱させないために、記事の全体像・方向性を冒頭でハッキリと伝えて「この記事は最後まで読むだけの価値がある」と思って貰う事が目的です。たまに最後まで読まずに記事の内容を誤解されたと怒っている書き手を見かけますが、それは最後まで読ませることができなかった書き手の責任です。
少年ジャンプの読者は1ページ目で3割も離脱する。
書き出しが重要な事を示すエピソードとして、週刊少年ジャンプから派生したウェブマンガ誌「少年ジャンプ+(プラス)」が先日話題になりました。読み切り漫画で、読者は1ページ目で2~3割も離脱してしまうといいます。その後は3~5ページ、長くても10ページ程度で最後まで読むかを判断しているといいます。これはアンケートではなくネットで捕捉しているデータなのでまず間違いはありません。
(参照・【第93回】「少年ジャンプ+」のデータ担当Kさんに聞く! 読者の行動は数字で分かる!? 読者を逃がさない読切作品の作り方!! ジャンプルーキー! 2022/10/06)
1ページ目の離脱が極端に多い理由は、間違ってタップしてしまった数字等も含んでいるようですが、それを差し引いても1ページ、つまり一瞬で読むか読まないかを判断している人は多数いる事になります。スマホならば他にいくらでも面白いマンガもゲームもアプリもありますから、読者はつまらないマンガを最後まで読む義理は全くないわけです。
これは文章でも全く同じです。漫画と士業・専門家の書く文章は全く異なる分野ですが、どちらも同じコンテンツです。書き出しを丸ごと書き直してしまう場合があるという話を酷いと感じた人も多いと思いますが、せっかく書いた文章から1行で離脱されないために書き手のサポートとして心を鬼にして行っているわけです。
書き出しと前フリが重要なことは分かったけど、じゃあどう書けばいいのか? 何を書けばいいのか? と思った人のために参考記事の冒頭を9本分載せました。過去にITmediaビジネスオンラインというメディアに書いた記事で、どれも多数の読者に読まれたものです。
Yahoo!ニュースの経済ランキングで1位、総合ランキングで1位、ツイートが2000超、Yahoo!トップ掲載等々、実績のあるものだけです。目次から興味があるものだけ拾い読みして構いません。
1本を除いてどれも書き出しでちょうど1ページ分です。どこでページを分割するかは編集部の判断ですが、ちょうど区切りの良いように書いているので自然とそうなっています。あえて書き出しと本文の境目が分かるように書いていますので、この部分も注目して頂ければと思います。
※「文章のコツとして書き出しで結論を書けとよく聞くけど、方向性・全体像だけで良いんですか?」と上記のようなアドバイスに対して質問を受けることがあります。手短に説明すると「文章の内容や目的による、結論を頭に書く事が常に正解ではない」という答えになります。
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以上、参考にして下さい。
中嶋よしふみ ビジネスライティング勉強会講師・シェアーズカフェオンライン編集長・FP
■ビジネスライティング勉強会とは?
士業・専門家向けの執筆勉強会を月イチで開催しています。上手い文章を書くための「文章教室」ではなく、専門家として質の高い情報発信で信頼を得る方法、結果的に集客とブランディングにつなげる方法を伝えています(SEOは扱いません)。
ライターになることが目的ならば、すでに多数出版されている文章本も役に立ちます。ライター向けの執筆セミナーも開催されています。ただ、これらはいずれもライターや記者や編集者が提供しているもので、専門家の情報発信には全く役に立ちません。なぜなら目的も必要な知識・能力も両者で全く違うからです。
ライターは取材をして記事を書く=他人のことを書く人
士業・専門家は自身の知識や経験をベースに書く=自分のことを書く人
上記の通り、同じ文章でも両者は似て非なるものです。新聞記者やライターのように、取材をして記事を書く士業や専門家はまずいません。
むしろその正反対で通常は取材を受ける立場の人が自ら記事を書くことになります。この部分だけを見ても両者のやっていることは全く違うことが分かるかと思います。
現在はYahoo!ニュースのようなニュースサイトで、あらゆるメディア・あらゆる書き手の記事が混在しているため、両者の違いは余計に分かりにくくなっています。したがって、どのメディアのどの記事をお手本にどんな記事を書けばいいのか、執筆経験の少ない人には全くわからないのが現状です。士業・専門家は優れた書き手になる可能性を秘めていますが、我流・独学でまともな記事は書けません。
◼️執筆勉強会の対象
執筆勉強会では特に士業と各種分野の専門家を歓迎していますが、経営者、やフリーランス、会社員、これから独立予定の人など、働き方も職業も問わず老若男女様々な人が参加しています。ズームセミナーなので場所も問いません(文末に勉強会で教えている内容のエッセンスを含んだ記事も載せましたので参考にしてください)。
また、一定レベル以上に上達した受講者は書き手としてスカウトしたり経済メディアに紹介しています。
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