【みんなの山月記②】そわそわする 恋愛ソングの女王の「山月記」
BYTHREEの2022年の年賀状「NEW YEAR BOOK 2022」に掲載している「みんなの山月記」より、1話ずつ抜粋しています。
あぶないところだった
たよりない月の光の下 たしかに聞こえた虎の言葉
その時あたし気づいたの
彼は昔の友達だって 思い切って聞いてみた
ねぇ もしかして 李徴なの?
少し沈黙があったね
でも覚えてるよ 忘れないその懐かしい声
いかにもぼくは李徴
うす暗い道端に草むらのカーテン 君の姿は見えない
でも覚えてるよ 忘れない癖のある話し方
一緒に飲んだメロンソーダ
虎になった君は言ったね
ほんの少しでいい 僕と話をしてくれないかな
苦しいほどに懐かしい
あぁ 君の優しさ思い出したんだ
***
本当は分かってた
ぜんぶ自分のせいだってこと
気づかないふりをしていたんだ
臆病な自尊心と尊大な羞恥心
心の中に棲みついた黒い想いが大きくなって
ねぇ それがきっと僕を虎にさせたんだね
冗談みたいな運命 誰か笑ってくれるかな
***
カーテン越しに別れを告げた朝 一瞬だけふり返った
あたしは見たんだ虎の君
白む下弦の月 切ない咆哮
生涯忘れることはないでしょう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?