【王女モドキ物語】~あまたらかの戦い編~
【王女モドキ物語】~あまたらかの戦い編~
久しぶりに雨が降っている。季節は、秋。
秋らしく、少し肌寒い雨だ。
雨は黄色や赤色の葉を叩いては、落とし。
人よらずの森の風景を変えている。
黒髪の長髪、片目が隠れ、紫の左目だけが見えている王女モドキという男は、森の中、傘も使わず雨に打たれていた。
刀をにぎる手も、濡れて滑りそうになる。すると、青い名刀【ひとめ】が柄(つか)についた赤色のしっぽを腕にくるませてくれた。
「ひとめ、良いのかい?私は、今、女性の姿をしていないよ。君は女性にしか手を貸さない刀じゃないか」
王女モドキは、刀を強く握り直し、目の前にある岩に向けて振る!
岩は、斬れず。砕けた。
やはり、女性が使わないと刀は、しっぽをくるませてくれても、全力の力を出しては、くれないようだ。
本当の力を使えばこんな岩など、豆腐だ。
力をいれずとも斬れる。
「王女モドキたる姿を見せよう」
王女モドキは、炎のような紫のオーラに包まれ剣土国(けんどこく)の第三王女の姿に瓜(うり)二つとなる。
もう一度刀を近くの他の岩にぶつける。
岩は豆腐のように、斬られことを望むかのように、スッと斬れた。
「まったく君という奴は……この女好きめ」
王女モドキは、ため息を吐いた。
そうして、その日1日刀を振り続け、肩慣らしをする。
明日のために……
時がたち、王女モドキは、その日の月夜。
名刀ひとめに語りかける。
「明日は、ルウォル・レイルが森に来る、王から命令を受けて、人よらずの怪物を滅ぼすのが、剣土国の剣士のつとめだ。私も例外なく、彼は命令に従い倒しにくる。戦わなければならない」
刀を持ち上げ青き刀身を月に向けた。
「力を貸してくれよ。名刀ひとめ」
刀は、赤い二本のしっぽを左右にくねらせた。
次の日の早朝、落ち葉の敷き詰められた森で、1人の金髪の男が現れた。
王女モドキは、最初からそこに来るのがわかっていた。だから、彼もそこで待っていた。
白い長い上着に、紫色の服、赤い腰巻き、黒いズボンに赤い靴。それに、青き名刀、ひとめ。
しっかり正式な準備をしていた。
「ルウォル、君が来ることは、わかっていた。君はだいぶ前からここに来ることを計画しているから、私は、君が来ることに気づけた。未来は、これから作られる以上見えないが、一度姿を見た生物の現在までの人生が私には、わかる。だから、準備は、できていた」
王女モドキは、どこからともなく、本を手から取り出すと、目の前に投げた。
それを、金髪で水色の制服を着こんだ男がキャッチする。
本を開くと、黒く塗りつぶされたページがあった。
これでは、読めない。
王女モドキは、自身に生えた二本のしっぽを揺らがせながら笑う。
「人間には、読めない。黒塗りの紙にしか見えないだろ?だが、君の人生がそこにある。規律や序列、堅苦しい決まりを重んじる君の人生が」
王女モドキは、黒髪の男性の姿で刀をルウォルという英雄剣士に向けた。
「さあ、戦おう」
ルウォルは、それを見ると目付きを変えて、本を静かに近くの切り株に乗せると。
剣を抜いて。構えた。
その時!女性の悲鳴がいくつも重なった形で聞こえたと思いきや、突然のこと、空から数えきれないほどの矢が辺り一帯に降り注いだ。
ルウォルは、とっさに、手から炎の魔法を出し自分に迫る矢をできるだけ消し飛ばす。
王女モドキは、刀としっぽをかざし盾にする。
だが、ルウォルは、うまくしのいだが、王女モドキは、ガードを貫かれて矢はその下の地面に達していた。
だが、血液のひとつも出ていない。
体を動かすと、矢は地面に突き刺さったまま、すり抜けることができた。
対してルウォルは、何発か、炎を越えてかすって
小さな傷が皮膚にできている。
王女モドキは、状況がわからず、混乱して、後ろにジャンプし、ひとまず、この場所を離れようとする。そうすると、矢は体を傷つけることなく、服だけを地面に刺し止め、王女モドキは、服を破きながら転倒した。
そうして倒れ、隙をさらすと、また、数多の女性の悲鳴が聞こえた。
何千という矢がまた、落ちて来る。ルウォルは、もう一度火を放ち、矢を消し炭に変えた、火山の噴火のように、荒々しく燃え上がる炎は、上空の矢を溶かす。
そして、その炎のわずかな隙間を掻い潜る矢は、火を放つ手とは逆の手で、剣ではじいた。
それと同じ時間、王女モドキは、全身に矢を受けていた。
転倒した直後でなすすべなく。
けれど、服は、傷つけても、体は無傷だった。
王女モドキは、考え提案する。
「一騎討ちは、中断しよう。これでは、戦いどころではない」
ルウォルは、こちらをちらりと見る。
「わかりました。また、会いましょう。優先度がかわりました」
そう言って、自国の方角に歩いていった。
ルウォルがいなくなると、王女モドキは、しっぽで服に刺さった矢を抜きつつ、辺りを警戒。
そうすると、片腕が弓矢になっている女性がたくさん、周りにぞれぞろ現れた。百人は、いるかもしれない。
王女モドキは、目をまるくした。
「人よらずの怪物、王女モドキ、私達と、人間の国を奪わない?」
彼女らは、提案した。
立ち上がり名刀ひとめを構えつつ、高い視点で辺りを見ると、同じ赤い髪の顔の女性が笑っていた。
「君達は?」
「私達は、ひとよらずの【あまたらか】、国を落とす者よ。さっきの矢落としの要領で国を落とす。そう考えている者の集まりよ」
「ふふ、さっきの攻撃で英雄1人倒せずに国盗りとは、笑わせる」
奴らは王女モドキをにらみつける。
最後の服に刺さった矢を抜くと跳び上がり王女モドキは、奴らを、乗り越え踏み越え姿を隠した。
森の中にある屋敷に帰ると、服を着替え、部屋の紫色の壁にもたれかかる。
そして、手に力を込める、すると、本が現れた。
剣士、ルウォル・レイルの本。そこには、多数の敵が森で統率された動きで矢を放った可能性があり、こちらも、人数を用意しなければ厳しい、そう考え部隊を国で編成しているのが見てとれた。
あの時、一度戦いを止め退いたのは、私と戦うのには、一騎討ちでかまわないが、あの数の矢を放った何者かは、おそらく集団で強さが未知数と考えた結果。
拠点で、体制をととのえるという考えだった。
噴火のような魔法の炎は、魔力を相当使う。残りの魔力で、次の矢を打ち消すのは厳しくなっていたのも要因。
それだけの過去情報を王女モドキの能力で作った本で読めた。
「次だ……」
続いてあまたらかという女性の本を作り出した。紫の左目で見た生物なら、人生の本は、作り出せる。
何を思い赤い髪の女性、が動いていたのかわかる。
まず、眼を惹いた一文は、人よらずの怪物たる能力だ。分裂できるという能力があり、そして、彼女らの作る弓矢は、ひとよらずの身体だけをすり抜けダメージを与えない。
あまたらかの目的は、人のいない世界をつくること。
手始めに刀土国(とうどこく)から攻めいるつもりのようだ。
王女モドキは、しばらく様子を見ることにした。
あまたらか、軍団は、刀土国の付近のひとよらずの森に潜み、扇状に散らばった。
瓦屋根の家々が、彼女らには、見えている。
木製の古い家々をにらみ、その視線を上に向けた。
そして、弓に変質した右腕を上げて一斉に分裂体と共に矢を放つ。
矢は次々家々に突き刺さり。まるで、屋根にたくさんの茶色い草が生えて来たかのような有り様。
すると、人間が家から1人出てきて薙刀を持ち、歩いて来る。
隻腕で、黒髪、茶色い眼、胸は、世界的な記録になりそうなくらいのものを持っていた。
その人は、声を上げた。
「わたしは、わつやし、そえな。宣戦布告してきたからには、覚悟を頼む」
そえなと名乗る女は、薙刀を振るった。
瞬間、森に潜む、あまたらかを扇状に、1人残らず破壊した。そして青い土に変えてしまう。
王女モドキは、あまたらかの本を思わずびっくりして落とし。汗をかきつつ、もう一度拾い上げよんだ。
あまたらかは、青い土になったかと思うと液体のようになり土に染(し)み入り、森の木々が、根っ子で、受け渡しをして、本沈みの沼に帰された。
ひとよらずは、ひとよらずの森で倒れれば、本沈みの沼に帰されしばらくすると、復活し上がってくる。
だが、もし、今の薙刀の一撃が森から離れていた時に撃たれていたら、そのまま終わりだっただろう。
王女モドキは、恐るべき者を読んだと本を閉じた。
すると、王女モドキが本を読んでいた紫の壁で囲われた部屋に、灰色髪のツインテールの女性、キラメアが入って来る。
「王女モドキ様、汗をかいてどうされたんですか?」
「いいや、ちょっとね。私とルウォルが手を組んでも勝てない奴が現れた」
END