安倍晋三元首相の訃報を受けて思うことと犯人の動機

7/8、11:30頃、奈良で街頭演説をしていた安倍晋三元首相が撃たれ、17:03に亡くなった。

驚きとともにショックである。日本を良くするために尽力され、大手メディアの言いがかりにも屈せずに戦ってきた、素晴らしい政治家であったと思う。心よりご冥福をお祈りします。

犯人はなぜこんな蛮行に至ったのだろうか?

逮捕された犯人は、私が記事を書いている時点では、

「安倍元総理大臣に対して不満があり、殺そうと思って狙った」

「元総理の政治信条への恨みではない」

というようなことを言っているらしい(NHKニュース 安倍元首相死亡 容疑者「拳銃や爆発物複数製造した」【速報】)。

不満があるとのことだが、おそらく安倍さんに直接何か、まして、殺意を抱くまでの何かをされたとは考えにくい。さらに政治信条とも関係がないということは、動機はなんなのか?

事実は、今後の取り調べで判明してくると思うが、上記の発言を見たとき、あることが浮かんだ。それは、

もしかして、犯人は空っぽなのではないか?

ということ。

空っぽとはどういう意味か。
私が空っぽという言葉とともに思い出したのは、ある漫画のワンシーンだった。

その漫画とは、ONE PIECE。
読んでいない人でも、どんな漫画かはだいたい分かると思う。

現時点で102巻まで単行本が発行されているONE PIECEには、いろいろな舞台が登場し、●●編といったかたちで、物語が区切られている。その中に、魚人島編というものがある。単行本では61~66巻。アニメだと517~574話までの部分である。

魚人島というのは、その名のとおり、人間とは違う魚人という種族が住む国で、長い間人間たちに差別されてきたという、暗い歴史を持つ。

その一端を示すものを上げると、魚人島の法律の中には、たとえ死にかけの人間がいても、人間に輸血することは許されないというものがある。つまり、人間に輸血したら犯罪者になるということである。それぐらい、人間との確執はかなり根深い。

だが、子どもたちの未来のために、人間と和解しようと、先人たちが信頼関係を築くために努力をしてきたこともあり、徐々に差別は解消されつつあった。少なくとも、魚人島の王であるネプチューンやその息子である三人の王子と、王女であるしらほし姫は、人間を恨まないようにという想いを胸に国を守ってきた。

そんな魚人島に、ルフィたちが上陸する。
最初は犯罪者と思われ、捕まってしまうルフィたちだが、後に誤解は解ける。しかしその裏で、人間と和解しようとする国のトップを腑抜けと吐き捨て、力をもって国を乗っ取り、地上の人間たちを皆殺しにしようとする、ホーディ・ジョーンズの一味が暗躍し、ネプチューンたちは捕らえられてしまう。

ホーディたちは、人間に対する激しい憎悪をもち、人間だけでなく、人間と仲良くしようとする魚人にも手をかけ、国を乗っ取ろうとする。

やがて、ルフィ率いる麦わらの一味と、ホーディ・ジョーンズ率いる新魚人海賊団の戦いが始まり、ルフィたちに救われた三人の王子も戦闘に加わる。

その戦いの中で、ネプチューン三兄弟の長男であるフカボシが、ホーディに問う。

「なぜこんなことをする!? 人間がいったい、おまえに何をしたんだ!?」

それに対してホーディは答える。

「なにも」

その答えを聞き、フカボシは驚愕する。

つまりホーディ・ジョーンズは、自身が人間に差別されたわけではなく、傷つけられたわけでもなかったが、子供のころから周囲の大人の言葉……それが行き過ぎた虚構か事実かは関係なく……を聞き、自爆テロをした魚人を英雄を褒め称える環境で育つ中で、

「人間はこの世から抹消しなければならない」

と思い込むようになった。

大人になっても、自分が聞いたことが事実かどうかを確認することもなく、決めつけ、魚人島を乗っ取り、人間を皆殺しにしようと思い立った。同じ環境で育ったすべての魚人がそう考えたわけではない。ホーディとその一味はそう考え、国の乗っ取り計画を実行したということである。

これだけ聞くと、イカれてると思えてくる。
しかし、今私たちが生きている世界はどうだろうか。

既得権益に守られた大手メディアが垂れ流す一方的な情報、ネットに溢れるデマ(ネットには事実もあるが)に煽られ、物理的な暴力ではないにしろ、殺傷能力のある言葉を浴びせる人間と、それに乗っかる人間。

犯罪でも犯した人間なら叩かれてもしょうがない部分もあるが、自分の価値観や倫理に反するという理由だけで、赤の他人を叩きまくる。

かつて安倍さんも、大手メディアに叩かれまくっていた。
事実など関係なく、大手メディアはただ安倍さんを潰すことだけを目的とした報道を続けていた。

これがONE PIECEの話とどう繋がるか。

たとえばの話。
そういった一方的な悪評を聞き続けた結果、政治のことは分からない、自分が何かされたわけでもないけど、この男は殺さなければならない……そんなふうに思ってしまう人間もいるのではないか、と思う。つまり、ホーディ・ジョーンズのような人間ということである。

突飛に聞こえるかもしれないし、そんなことを考えて、実際に殺人までやってしまう人間はほとんどいないだろう。

しかし言い方は悪いが、自分で考えることをせず、溢れている情報を鵜呑みにして危険な思想に染まってしまう空っぽな人間は、一定数いると思う。

このテロ事件を起こした犯人は、もしかしたら、そんな空っぽの人間の行き過ぎた姿だったのではないかと、ふと思った。

今後の取り調べの結果、もっとハッキリとした殺意の理由が出てくるかもしれないが、本当に明確な動機は出てこないかもしれない。空っぽなら、そこには自身の体験や思考はないからだ。

しかしどんな理由であれ、今回のような行為が許されるとは思わない。
どんな主義主張をもっていようと自由だし、人それぞれ、立場も違えば考え方も違う。それは健全なことだと思うが、自分の正義を押しつけて人の命を奪うようなことは、許されてはいけない。

決して。


みなさんに元気や癒やし、学びやある問題に対して考えるキッカケを提供し、みなさんの毎日が今よりもっと良くなるように、ジャンル問わず、従来の形に囚われず、物語を紡いでいきます。 一緒に、前に進みましょう。