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ファーストフードを取り上げる価値はあるか?論争

この前90年代ローファイ論争について書いたところ、論争って面白いですねという反応があり、他になんかあったかな?と考えて、そういえばこんな論争もあったな、と思い出した話……。

『TOKION』という雑誌があったのを御存知でしょうか? ちょっと前にウェブマガジンとして復活したので、そういえば、と思い当たる人もいるかと思います。

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軽く説明すると、1996年に創刊した日英バイリンガルの季刊カルチャー雑誌で、毎号「Power」「Water」「Dreams」「Friends」とか大きなテーマを持ち出して、そのたびに雑誌の大きさとか質感とかフォーマットを変化させ、日本の若いクリエイターに話を聞きに行く、ヒップで珍しい雑誌でした。

編集長のルーカス・BB(Lucas Badtke-Berkow)はもともとカリフォルニアの大学で文化学を学んでいて、山本耀司や三宅一生など日本のファッションに興味を持っていたものの、1992年に日本に来ると、ジョニオやトライベンティといったもっと若い裏原のファッションクリエイターに興味を持ち、その延長で日本のパワフルなクリエイターを取り上げ世界に発信する雑誌の創刊に至りました。もともと『zyappu』(90年代にあったマニアックなファッション雑誌)の編集を手伝っていたようです。

で、長いあいだルーカスのKnee High Mediaが発行元でしたが、2006年だったか、『STUDIO VOICE』『流行通信』などを発行していたINFASが買収し、誌名以外ほとんど別物のファッション誌として発行を引き継ぎました。これはこれで理想のファッション誌といえるような素晴らしい内容でしたが、1年ほどで休刊します。でも権利はINFASに残ってて、ウェブマガジンなどの展開に至ったようですね。では本題。

TOKION 14(1999-09-30)

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『TOKION』は14号でマクドナルド特集を大々的に組みました。表紙も裏もマクドナルドで、100ページ超え。「ああ、タイアップ記事でしょ」と思うのは毒されすぎで、これは編集部が自主的に組んだ特集だったのです。インディペンデントなスタンスで世間的にはマイナーなクリエイターを紹介してきたこの雑誌が、誰もが知ってるマクドナルドを特集する。しかも批判的ではなく肯定的に。

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…

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