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Lido CSM 参加方法の日本語完全ガイド (2025年1月時点)


本文献の想定される読者とカバー範囲

本文献はEthereumステーキングプロトコルLidoの最新モジュールであるLido CSM (以下、本文中ではCSMと記載) を全力で伝えるために執筆され、想定される読者は多岐に渡ります。

想定される読者
1. ETH保有者
2. Ethereumのバリデータに興味がある方
3. Ethereumのバリデータ立ち上げを以前に挑戦したが難しくて諦めた方
4. CSMを通してEthereumバリデータを立ち上げたいが日本語リソースが無くて困っている方

カバー範囲
1. Lido CSMとは何か: 本文献を読むことで全体像をつかめます
2. 投資判断の一助: 技術的優位性や利回り捻出の仕組みを概説し、CSMを通してETHを運用すべきかの判断をする際の一助となります
3. バリデータ立ち上げガイド: バリデータの立ち上げ方について概説します

1. Lido CSMの要約

CSMはEthereumのバリデータ運用手法の一つです。
保有するETHをLidoへ担保に入れ、その代わりにLido TVL (Lidoに預け入れられた顧客資産) より32ETHがデリゲート (運用委任) されます。この32ETHを用いてバリデータを運用し、利回りをLidoとレベシェアします。

主たる特徴として、以下が挙げられます。

1. 個人ステーカー向け: これまで、技術的煩雑性や必要な資本額の大きさからEthereumバリデータの運用ができなかった個人に対して機会を提供することが中心理念です
2. 資本効率: 1バリデータにつき1.3 ETH ~ 2.4 ETHで立ち上がります (注: 普通は32ETH)
3. 高い利回り: 従来の2倍前後の利回りが出るように設計されています
4. パーミッションレス: 誰でも参加できます。ただし、Lido TVLの2%を上限としたETHがこのモジュールに捻出されるため、先着順と言う制限付きです

CSMへの参加には、①最低2.4ETH+ ~0.03ETH程度のガス代、②ハードウェアマシン、③インターネット回線が必要です。
一般的なETHステーキングはステーキング・プロトコル (例: Lido) にETHを預け、Lidoが委託したノードオペレータ (バリデータ運用を行う者) にETHを提供することで利回りが貰えます。
他方、CSMはLidoの顧客資産を用いてバリデータを運用することで利回りを得る仕組みです。そのため、マシンとインターネット回線が追加で求められます。

2. Lido CSMの優位性と特徴

本章はCSMの優位性や特徴を説明し、CSMを通したETHの運用を実施するかを判断する上での一助となることを意図したものです。バリデータの立ち上げ方法は3章で説明しています。立ち上げ方のみを確認したい場合は、本章を読み飛ばすこともできます。

個人ステーカーのためのモジュール

従来、Ethereumのバリデータになるには、①立ち上げに際した技術的知見、②安定運用のためのモニタリング環境 (24時間体制が望ましい)、③スラッシングリスク (誤った運用で自身のETHが失われるリスク)、④32ETH (日本円換算: 約1,600万円, 2025.1.19時点)、⑤MEV boost {トランザクション (以下、tx) を承認する際に最大利益を得るための仕組構築} が必要でした。これは個人で確保するにはあまりに敷居の高い要件でした。
他方、バリデータ自体は分散性が常に求められるため、"プロのバリデータが参加者の大多数を占めるのは理想的ではない" というジレンマもあります。
CSMはこの問題に対処すべく誕生しました。具体的には、以下の特徴を通して実現します。

1. ほぼノーコード
2.モニタリングもダッシュボードで完結
3. 32ETH不要
4. MEV boostは平均化される

バリデータの立ち上げはコマンドのコピー&ペーストで完結するため、エンジニアでなくても利用できます (筆者も非エンジニアです) 。また、Lido Discord (英語) や日本語Telegramチャンネルで不明点を相談することもでき、サポート体制も揃っています。

Lido CSM 専用モニタリングサイト (rated.network)

自身のバリデータは、バリデータ評価サイト"rated" の配下に作成される専用のウェブページを通して視覚的にモニタリングできます。筆者は自身のバリデータ評価ページをブラウザでブックマークし、いつでもワンクリックでパフォーマンスを確認できるようにしています。また、バリデータのパフォーマンスをTelegramへ通知するbotも構築が可能です。このbotについては3章の「5. モニタリングを最大化するために」で解説しています。

[32ETH不要] 現時点の最小担保でバリデータが立ち上がる仕組み

CSMでは1台目のバリデータが2.4ETH、2台目以降は1.3ETHでバリデータが立ち上がります。このETHはスラッシングやMEVの窃盗 (ブロックプロポーザルに当選し、txを検証する際の追加報酬の窃盗) が起きた際の損失補填に用いられる担保になります。 端的に言えば、誤ったバリデータ運用をした際の埋め合わせのための保険です。
この担保によって、LidoはCSMノードオペレータをパーミッションレスに信頼でき、プロトコルTVLから32ETHがデリゲートされる仕組みです。つまり、バリデータを立ち上げるための32ETHは全額Lidoから捻出されます。
担保金のみをノードオペレータに提出させ、バリデータ立ち上げに掛かる必要資本を最小化するこのメカニズムは非常に画期的です。言わばETHステーキングの仕組みはそのままに、Lidoが必要な資本を立て替えてくれるモジュールであり、個人ステーカーのエンパワメントに直接的に貢献しています。

通常のバリデータ運用の2倍の利回り

CSMの利回りは以下の2面から発生します。

1. Lido利用の利回り: 自身の担保ETHがLidoに自動でステークされる利回り
➤ 3%前後、Lidoの他の利用者と同じ利率
➤ バリデータ立ち上げの際に提出したETHが自動でLidoにステークされるため発生します
2. バリデータ運用のレベシェア: CSMを通して運用したバリデータ収益の6%
➤ CSMノードオペレータだけが得られる追加利回りの機会 (条件付き)
➤ 1バリデータの場合、単純化すると32ETH *3%APR *6%

以下では、2.4ETHをLidoに預け入れた場合 (通常のLido利用) と、CSMでステークした場合 (CSMでバリデータを1台運用) に分けて1年間の利回りを計算し説明します。年間利回り (APR) は3%とします。また、ETH : stETH=1:1であるとして計算します。

通常のLido利用: 0.072ETHの収益見込み
1台目のバリデータには2.4ETHが担保として必要のため、計算式は
収益=2.4ETH x3%APR
となります。

CSM利用: 0.1296ETHの収益見込み
計算式は
収益= (Lido利用の利回り: 0.072ETH) + 32ETH x3%APR x6%レベシェア
となります。
CSMを用いると通常のステーキングに比して約1.8倍の利回り見込みになります。

次に、執筆時点の1ウォレット当たりの最大運用可能バリデータ数であるバリデータ12台の際の利回りを試算します。この時、必要な担保数は15.8ETHでした (2025年1月時点)。

通常のLido利用: 0.474ETHの収益見込み
計算式は
収益=15.8ETH x3%APR
となります。

CSM利用: 1.1652ETHの収益見込み
計算式は
収益= (Lido利用の利回り: 0.474ETH) + 32ETH x12バリデータ x3%APR x6%レベシェア
となります。
CSMを用いると通常のステーキングに比して約2.46倍の利回り見込みになります。

レベシェアを受け取る条件 (出典: Operator Portal)

この6%レベシェアを受け取るには、バリデータが一定以上のパフォーマンスを定められた期間で発揮する必要があります。この期間は28日間毎にリセットされます。
具体的には "Ethereumバリデータ全体のパフォーマンス平均-5%以上" のパフォーマンスを発揮したノードオペレータがレベシェアを取得できます。添付の図では、「Threshold」が "Ethereumバリデータ全体のパフォーマンス平均-5%以上" を指し、4番のノードオペレータ以外がレベシェアを受け取ります。受け取りは自動で実施され、ノードオペレータ側で追加作業は必要ありません。
なお、4番のノードオペレータも担保のETHをLidoにステークしたことで得られる約3%の利回りは受け取れるため、損失や機会損失は発生しません。

MEV boostの平均化

CSMを通して運用されるバリデータが完璧なMEV boostをセットできない可能性があることはLidoチームも把握した上で本モジュールが設計されています。CSMではLidoが運用委託するプロのノードオペレータ (Curated Operator) との報酬格差を是正するため、Lido運用委託者全体のアクティブなバリデータの数を考慮に入れて、MEV報酬が平均化されています。この平均化により、CSMノードオペレータも平均的なMEV報酬に近しい、より安定した報酬を獲得できます。

CSMの説明は以上です。
質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

3. Lido CSMを通したバリデータ立ち上げ方法

本章では、CSMを通したバリデータの立ち上げを解説します。先ず、必要条件の詳細を説明します。その後、立ち上げ方法を紹介します。

コンポーネント

最低条件
1. 資本:
➤2.4ETH+ガス代 (参考までに、筆者が10gweiで12バリデータを立ち上げたときのガス代は0.0181ETHでした) 
2. ネットワーク (WiFi/有線問わず):
➤上限なし、若しくは月次2T以上のボリューム
➤500Mbpsの共有回線 (最低でも10Mbpsの占有回線は付随していること)
➤UPnPもしくはport forwadingが可能な回線
3.マシン (NUC推奨) : バリデータ運用専用のマシンの用意
CPU: 4 core
RAM: 32GB
ストレージ
➤➤➤4TBで接続方式はNVMeのSSD
➤➤➤毎秒5,000以上のランダム読み取り操作 (IOPS)
➤➤➤毎秒1,700以上のランダム読み書き操作 (IOPS)
4. OS (サーバ)
➤ Ubuntuの最新バーション
5. USB
➤ 新品の8GB以上のもの
6. 周辺機材
➤ NUCに接続するモニタ、キーボード、マウスが必要です (デスクトップパソコンなどをお使いで既にこれらがある場合は不要)

注: CSMのバリデータ要件は通常の32ETHバリデータより若干小さくても立ち上げが可能であり、本最小要件はこちらを踏襲しています。

推奨条件  (最低条件に加えて以下)
1. ネットワーク (WiFi/有線問わず):
IP: 静的 (Static)
2.マシン: 
CPU: 8 core (DVTなど追加のプラグイン/ 運用手法に必要)

NUCとはPCケース・電源・マザーボードがセットになったキットで、好みのCPU・RAM・Storageを組み込むことでノード運用マシンとして動作します。一からマシンを組み立てる必要がなく便利です。NUCを探す場合、ASUS Mini PC を推奨します。小型で最低限の冷却システムを備え、簡素な作りのためRAMとStorageの追加がしやすいです。販売が終了しているものの、Intel NUCでもいいと思います。4 コアというのは格段高いスペックではないため、一昔前のマシンに候補が多くある状態です。
また、MINISFORUMやGMKtecなどの新興中華系ミニPCメーカーにも対応のNUCがあり、中華系を用いるかは好みの問題ですがこちらの方が安価に済みます。
マシンの購入に不安がある方はお近くの家電量販店で本文献を提示しながら一緒に選んでもらうことをお勧めします。
もちろん、上記の要件を満たすゲーミングPCなどにRAMとStorageを追加することでNUCに転用も可能です。
筆者はIntel NUC 11 (4 コア/8 スレッド) にRAMとStorageを追加しようとしていましたが、紆余曲折ありdappnode (バリデータ運用特化マシン) を貰えたため、現在はこちらで運用しています。

バリデータの立ち上げ前に

注意喚起
ブロックチェーンでの作業は不可逆です。一連の流れを理解したら、先ずはテストネットで立ち上げの練習をすることを強くお勧めします。
バリデータの立ち上げ手順をMainnetではなくHolesky Testnetにすることで練習できます。また、下記動画よりETH Pillerを通したTestnetバリデータの立ち上げを概覧することもできますが、この動画はVMを用いて撮影しています。VMの箇所をNUCサーバに置き換えてご参照ください。

バリデータの立ち上げ (具体的な立ち上げ方法はこちらから)

本文献では、非エンジニアでもバリデータを立ち上げられるように「ノーコード性」と「UIを用いた視覚的取り組みの容易さ」を重視しています。そのため、以下のサードパーティツールを使用します。サードパーティツールの利用に関した損失が万一発生した場合でも、筆者は責任を負わないことをあらかじめご了承ください。なお、筆者もこれらのツールを用いてバリデータを立ち上げました。
1. バリデータキーの生成: Wagyu
2. バリデータノード、エグゼキューションレイヤークライアント、コンセンサスレイヤークライアントの立ち上げ: ETHPiller or Stereum
3. バリデータモニタリング: Beaoncha.inrated, Telegram bot

1. OSのインストール
お手元のノートパソコンやデスクトップに以下のリンクよりUbuntuの最新バージョンをダウンロードします (この作業には30分程度の時間を要する可能性があります) 。
https://ubuntu.com/download/desktop

ダウンロードが完了したら、「verify your download」をクリックします。 terminal (Mac) もしくは Windows Power Shell (Windows) を開き、以下のコマンドをペーストします。出力が「OK」であればインストールは安全に完了しています (出典: ETH Home Staking Collection)。
cd Downloads
echo "a435f6f393dda581172490eda9f683c32e495158a780b5a1de422ee77d98e909 *ubuntu-22.04.3-desktop-amd64.iso" | shasum -a 256 --check

ダウンロードが安全に完了したら、Ubuntuをお手持ちの新品USBに保存してください。

次に、ダウンロードしたUbuntuをNUCデバイスに移管した際に自動で立ちがるためのツール (Ubuntuをブートする) を準備します。UbuntuをダウンロードしたUSBを挿入した状態で以下のリンクより、BalenaEtcherをダウンロードしてください。
https://etcher.balena.io/

ダウンロード後「Flash from file」を選択します (出典: ETH Home Staking Collection)。
「Select target」から先ほどのUSBを選択します。「Flush」を押下し完了を待ちます (出典: ETH Home Staking Collection)。
NUCにUSBを接続しブートメニューから「Try or Install Ubuntu」を押下します (出典: ETH Home Staking Collection)。ダウンロード要件は以下の手順に従ってください。
  1. Install Ubuntu

  2. ノードルータのWiFiに接続

  3. Minimal installation (最小限のダウンロード) でUbuntuをダウンロードし、ダウンロード中にアップデートもダウンロードする

  4. ディスクを消去してUbuntuをインストールする (Erase disk and install Ubuntu)

  5. ユーザネームとパスワードを設定し「Require my password to login」を選択する (こちらのユーザネームとパスワードは後程使いますので控えてください

  6. NUCを再起動する

  7. 再起動後、「connecting to your online accounts」が表示された場合、スキップする

  8. 「Livepatch」のセッティングをスキップする

  9. 「No, don't send system info」を選択する

  10. 「location services」を無効にする

次に、SSHサーバをインストールします。NUCで「CTRL + ALT + T」を押下し、Ubuntuターミナルを開き、次のコマンドを順にペーストします。

sudo apt update -y && sudo apt upgrade -y
sudo apt install openssh-server
ip a

これらのコマンドをペーストした後、「wl01」配下にあるIPアドレス (例: 192.168.xx.xx) を控えてください。
これにて、NUCにUSBを差し込んだら自動でUbuntuがOSとして起動するようになりました。

また、NUCにリモートアクセスするには以下のコマンドを用います。
この際、usernameとnode_IP_addressをご自身のものにしてください。

ssh <username>@<node_IP_address> -v

OSの設定は以上です。質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

2. バリデータキーの生成 (Generating new validator keys)
次に、Wagyuを通しバリデータキーを生成します。Wagyuとは、バリデータキーを生成するアプリです。以下のリンクよりダウンロードしてください。
https://wagyu.gg/

重要
「2. バリデータキーの生成」に関わる以後のプロセスでは、プライバシーが最重視されます。以下の状態を確保してください。
1. ご自宅など安全な場所で行い、出先では実施しない
2. WiFiとWAGYUの入ったデバイスのWiFiとBluetoothを切断
3. デバイスのカメラ機能をオフにする
4. このプロセスの過程で、誰もあなたの後ろに立っていないことを確認する
5. 100%の集中

「Create New Secret Recovery Phrase」を押下します。
「Mainnet」を選択します。
画面が切り替わったら「Next」を押下し、上記の画面で24ケタのシードフレーズを確認します。紙などの物理的な媒体に控え、なくさずに保存することをお勧めします (絶対に無くさないように注意し、安全な場所に保管してください) 。控えたら、「Next」を押下します。すると、Wagyuが再度 "シードフレーズを控えたか" を確認してくるので「I'm Sure」を押下してください。
次の画面で紙に控えたシードフレーズを記入します。そして、「Check」を押下してください。
Number of New KeysにはCSMを通して立ち上げたいバリデータの数を記入します。1台目のバリデータは2.4 ETH、2台目以降は1.3ETHの担保が必要です。
Passwordを設定したら、こちらも控えてください。後程使います。
「Ethereum Withdrawal Address」には、以下のアドレスを記載してください。こちらはCSMのリワード回収アドレスです。CSMを通した収益は一度Lidoによって回収され、その後、
各ノードオペレータのパフォーマンスに応じて付与されます。
すべて実施したら「Next」を押下します。

0xB9D7934878B5FB9610B3fE8A5e441e8fad7E293f

確認用Etherscan: https://etherscan.io/address/0xb9d7934878b5fb9610b3fe8a5e441e8fad7e293f
こちらの画面で、前の画面で設定したWagyuのパスワードを入力します。
あと一息です!Wagyuを通して生成されたバリデータキーを保存するフォルダをデバイス内に作成してください。「Browse」を押下し、フォルダを作成した後に「Create」が押下できるようになります。
こちらのロードが完了すると、バリデータキーの生成は完了です。数分の時間がかかるので、勝利のコーヒーなどを飲みながらお待ちください。こちらの画面が切り替わったら、先ほど作成したフォルダにバリデータキーが格納されていることを確認し、インターネット環境に戻ってください。
フォルダには1つの「deposit_data」と生成したバリデータキー分の「keystore」という2種類のデータが格納されているはずですので、確認してください。

バリデータキーの生成は以上です。質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

3. バリデータのセットアップ
このセクションでは、バリデータを立ち上げ、ブロックチェーンの最新データと同期します。従来は複雑なセットアップやコーディングの知識が必要でしたが、以下の2種類の手法を用いることでコーディングを最小化できます。

  • ETHPiller: 最速でバリデータ立ち上げまで到達するが、コードのコピペが若干必要

  • Stereum: コードのコピペが不要で直感的な操作が可能だが、それはつまり英語のグラフィックUIですべてを完了させることを意味する

ETHPillerを用いた設定
NUCにETH Pillerをインストール
します。terminal (Mac) もしくは Windows Power Shell (Windows) を開き以下のコマンドをペーストします。

/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/coincashew/EthPillar/main/install.sh)"

以後、以下の動画の遷移時点から20:17までを参照することでエグゼキューションレイヤークライアントとコンセンサスレイヤークライアントをセットアップできます。

20:17の画面では「2. Import validator Keys from offline key generation or backup」を押下してください。
先ほどWagyuで生成したファイルの内、keystoreファイル(deposit_dataを除くすべてのファイル) をETH Pillerにアップロードします。

ETHPillerを用いたバリデータの設定は以上です。「Stereumを用いた設定」を実施せず「deposit_dataをLido CSMにアップロードする」へお進みください。質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

Stereumを用いた設定
先ず、以下のリンクよりStereumの最新バージョンをNUCにダウンロードします。https://www.stereum.com/

ダウンロード完了後、まずは言語を選びます。下にスクロールすると日本語もあるようですが、翻訳機能がやや不安なため、今回は英語で進めます。
こちらの画面の右側を入力します。
「Server Name」は自由に決めることができます。
「IP or Hashname」・「Port」・「Username」・「Password」は「1. OSのインストール」で設定した情報を入力します。
完了後、画面右上の「+」を押し、左側にサーバ情報を保存してください (次回のログインが楽になります) 。
ログイン後、「1 Click Installation」を押下します。
Networkは「Ethereum Mainnet」を選択します。
CSMのアイコンのある「Node Operator」を押下します。
左側上の二つの項目 (execution, consensus) を指定します。それぞれエグゼキューションレイヤークライアントとコンセンサスレイヤークライアントです。Ethereumではこれらクライアントの分散性も重要なため、可能であれば以下のリンクよりメジャーなクライアントを選ばないようにしてバリデータの分散化にご協力ください。
https://clientdiversity.org/
Additional Optionの「Start up client after Installation?」にチェックを入れてください。
こちらの画面はMEV boostの設定です。原則変更不要だと思いますが、念のため以下のリンクを参照し、必要なリレイヤーが揃っていることを確認してください。
CSM MEV リスト: https://enchanted-direction-844.notion.site/6d369eb33f664487800b0dedfe32171e?v=8e5d1f1276b0493caea8a2aa1517ed65
次の画面ではCheckpoint Syncの設定をします。Checkpoint Syncとは、バリデータノードを同期する効率的な手法で、こちらを用いることで1番目のブロックからゼロベースで各ブロックを同期する必要がなくなります (ゼロベースの同期は少なくとも数日がかかります)。データソースは何でも大丈夫ですが、個人的には「Lodestar」か「EF Dev Op」を推奨します。
これで設定が完了しました。「Next」を押下してダッシュボードに進みます。
画面の右側に「No Fee Receipient」エラーが出ていると思います。こちらをクリックしてください。
入力画面にLido Execution Layer Rewards Vaultのアドレスである「0x388C818CA8B9251b393131C08a736A67ccB19297」を入力し「Confirm」を押下します (Ethescan確認用リンク)。
画面上部の「Staking」を押下します。
切り替わった画面で先ほどWagyuで生成したファイルの内、keystoreファイル(deposit_dataを除くすべてのファイル) をドラッグ&ドロップします。
keystoreファイルをドロップしたら、画面下部にパスワードを入力しチェックボタンを押下します。
こちらの画面はNoで大丈夫です。 出典: Stereum Youtube

以上でバリデータノードのセットアップは完了しました。質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

最後に、deposit_dataをCSMにアップロードすればセットアップは完了です。

4. deposit_dataをLido CSMにアップロードする (1/31以降で実施可能です)
このセクションはCSMを通したバリデータ立ち上げの最終章です。LidoのCSM専用ページである「CSM Widget (https://csm.lido.fi/ )」にアクセスし、deposit_dataを提出します。この時、ウォレット接続が必要です。担保のETHとガス代があるウォレットを接続してください。
なお、deposit_dataとはバリデータを登録する際に使用されるデータセットで、ETHをステーキングするために必要な情報が含まれています。

「Create Node Operator」を押下します。
こちらの画面にdeposit_dataを入稿します。
deposit_dataのデータを開き、テキストをコピーしてCSM Widgetに貼り付けます
そうすると、必要な担保額が出てくるので確認し、「Create Node Operator」を押下してください。
トランザクションを承認し、これですべての行程が完了しました (添付画像はテストネットのものです)。

以上でCSMを通しEthereumバリデータを立ち上げるすべての準備が完了です。お疲れ様でした!
Lidoプロトコルが追ってdeposit_dataにETHを入金してくれます (具体的に何日かかるかはLidoプロトコルへの入出金事情により前後しますが、その間も預け入れた担保ETHがLidoにステークされているため約3% APRのステーキング報酬を獲得できます) 。
質問がある場合は、日本人CSMノードオペレータ・個人ステーカーコミュニティ (https://t.me/CSM_JP )、若しくは筆者 (https://x.com/amsofdms, https://t.me/penguin3ams )までお気軽にお願いいたします。

5. モニタリングを最大化するために
バリデータのモニタリングを最適化し、6%のレベシェアを獲得するためにも以下の設定は最小要件として推奨いたします。

  • Beaoncha.inを通し、バリデータのパフォーマンスを確認する

  • Ratedを通し、バリデータのパフォーマンスを可視化する

  • Telegram botにてバリデータのアラートを飛ばす

  • CSM Mainnet Node Operator Contact Infoを記載し、運用ミスがあった際に第三者からの連絡を貰えるようにする

  • 日本語ノードオペレータチャンネルに参加する

Beaconcha.inについて
Beaconcha.inはバリデータのパフォーマンスを確認できるサイトです。CSM Widget (https://csm.lido.fi/)  を下限までスクロールし「External Dashboard」のトグルを開きます。

「beacoincha.in v2」を押下してください。

特に以下の数値のパフォーマンスをケアしましょう。

Attestations (なるべく100%に近づける)
ブロックチェーンの状態を承認するための投票を指します。EthereumのAttestationsはエポック (32ブロックの単位) ごとに実施され、エポックの間隔は約6.4分です。Attestationsの対象は、合意された最新のブロック (最後のブロック) と現在のエポックにおける最初のブロック (最後のブロックに接続するブロック) であり、どのブロックが正当なブロックなのかについての投票を行います。
Source vote accuracy (なるべく99.5%に近づける)
バリデータが現在のエポック (32ブロックの単位) の起点( Source Checkpoint) を正しく投票できた割合を表します。これが高いほど、バリデータがエポック間での整合性を維持していることを示します。
Target vote accuracy (なるべく99.5%に近づける)
バリデータが現在のエポック (32ブロックの単位) の終了時点 (Target Checkpoint) を正しく投票できた割合を示します。この精度は、取引の最終承認 (Finality) を確保するために重要です。
Head vote accuracy (なるべく98%に近づける)
バリデータが最新ブロック(Head Block)を正しく認識し、それに対して投票した割合を示します。これが正確であるほど、ネットワークの最新状態が正しく維持されています。
Att. Efficiency Avg. (なるべく95%に近づける)
バリデータが行ったAttestationsの実行率と正確性を総合的に評価する指標です。高効率であれば、バリデータが適切に機能し、ネットワークへの貢献度が高いことを意味します。
Incl. Distance (なるべく1に近づける)
バリデータが作成したAttestationsが、ブロックチェーンに含まれるまでの平均距離 (ブロック数) を指します。この値が低いほど、バリデータのAttestationsが迅速にネットワークに取り込まれていることを示します。

Ratedについて
Ratedはバリデータのパフォーマンスを確認できるバリデータ格付けサイトです。CSM Widget (https://csm.lido.fi/)  を下限までスクロールし「External Dashboard」のトグルを開きます。
Beaconcha.inがバリデータのパフォーマンスリアルタイムで示すのに向いているのに比し、Ratedは約1日の遅延を伴いながらもパフォーマンスを可視化するのに向いています。

「Rated exploer」を押下してください。
こちらの画面でバリデータのパフォーマンスを可視化できます。パフォーマンスが悪い際や改善方法を模索している場合はTelegramで筆者 (@penguin3ams) までお気軽にお声掛けください。

Telegram botについて
CSMSentinel_botにご自身のノードオペレータIDを入力することで、運用エラーが出た際にアラートを取得できます。
botのリンク: https://t.me/CSMSentinel_bot

/start コマンドを入力し、出てくるポップアップで「Follow」を押下します。その後、
ご自身のCSMノードオペレータIDをタイプすることでフォローができます。

CSM Mainnet Node Operator Contact Infoについて
下記のフォームを記載することでLidoチームや他のCSMノードオペレータがみなさんのバリデータ運用ミスに気付いた際に連絡してくれます。記載して提出しましょう!
https://tally.so/r/nGJWgo

日本語ノードオペレータチャンネルについて
筆者はLido Community Lifeguardと共に、日本のCSMノードオペレータやソロ・ステーカーをサポートするチャンネルを運営しています。是非ご参加ください!
https://t.me/CSM_JP

Lido Discordに参加しよう!
下記リンクよりLido のDiscordに参加しCSMノードオペレータのロールを獲得することでディスカッションに参加できます。
https://discord.com/channels/761182643269795850/1255114639168245790

「community-staker」と「CSM Operator」のロールを取得することでオペレータのチャンネルに参加し、議論や質問ができます (Lido チームに質問することも可能です) 。

Lido CSMに関するQ&A

準備編

Q. 運用開始までの流れとしてはどういう手順を推奨しますか
➤ Testnetで練習した後にMainnetバリデータを立てることを推奨しています。

Q. ランニングコストはどのくらいですか
➤ お使いのインターネット回線 (上限なし、若しくは月当たり2T以上のボリューム、500Mbpsの共有回線) 契約費 と電気代 (年間約1~2万円) と推察されます。

Q. マシンの初期費用はどのくらいですか
➤ 約7~10万円で必要なマシンが組み立てられます。

Q. セットアップに関して質問が出た際はどうすればいいですか
➤ https://t.me/CSM_JP でお気軽にご質問ください。

Q. マシンを組み立てる自信がありません
➤ dappnodeを購入することで完結しますが筆者の本文献の公開が遅れてしまったため、今から購入すると間に合わないかもしれません。dappnodeの購入をご検討されている方は筆者までご連絡ください。

Q. CSMに関する損益はどう計算すればいいですか
➤ 回線代を算出します。次に電気代として1万円、マシン代として10万円を計上しコストを算出します。次に「(Lido利用の利回り:=担保額ETH x3%) + 32ETH xバリデータ数 x3%APR x6%レベシェア」の値を12で割り月次収益を概算します。最後に「(月次収益 x運用月数)  -コスト」を計算し、正の値となった後は黒字化です。

Q. CSMを通したバリデータ運用の注意点は何ですか
➤ Ethereumは常に改善され、変化していることに注意してください。例えば、Beam Chain構想Pectraアップデートなどが控え、一部では推奨ハードウェアの見直しが議論されています。バリデータ運用の過程の情報収集を通し、Ethereumの先端議論も自動的にインプットされることがCSMの魅力の一つかもしれません。

運用編

Q. VM (バーチャルマシン) で運用できますか
➤ 技術上は運用可能ですが、ランニングコストの観点からおすすめはしません。TestnetをVMで実施し、メインネットは物理マシンを推奨しています。物理マシンは元手回収の期間 (約半年前後) がありますが、VMの場合は一生月次のランニングコストを払うことになります。

Q. 担保をCSMウィジェットの提出しましたが、Lido TVLからのデリゲーションが実施されません
➤ LidoプロトコルからのデリゲーションはLidoの入出金により前後します。例えば、前日に100ETHの出金超過があった場合 (例: 入金900ETH, 出金1,000ETH) 、当日の100ETHはまずこの差分の埋め合わせに使われます。このケースは一例ですが、こうした様々な観点を踏まえCSMノードオペレータにデリゲートが可能な余剰ETHがプロトコルに存在した時点でdeposit_dataにETHが入金されます。みなさんが事前にCSMへ入金したETHはその時点でLidoにステークされているため、待ちの間はLidoのステーキング報酬を獲得できます。

Q. 利回りはどのように出金できますか
➤ CSMウイジェットから出金可能です。Lidoにステークされた担保ETH (Excess bond) はいつでも出金できますが、6%レベシェア分 (Rewards) を出金するにはバリデータの運用終了が必要です。

Q. バリデータの運用終了はどうすればいいですか
➤ 別途ガイドを作成します。ガイドの公開前に運用終了をしたい場合は筆者までお声掛けください。サポートさせていただきます。

付録: 公式リンク、ドキュメント等


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