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Lido Community Staking : ETHの割り当てとバリデータ運用終了について

*この記事は2024年2月に公開されたLidoのブログ記事「Lido Community Staking:Stake Allocation & Validator Exits」に一部補足説明を加え、日本語に翻訳したものです。
参考

本稿は、コミュニティ・ステーキング・モジュール(以下、CSM)に関する全四回解説記事の第四回の記事です。CSMによるノードオペレータへのETH割り当て方法、バリデータ終了処理に関して説明します。過去の記事については、以下を参照してください

  1. 概要:https://note.com/buythedipams/n/nf4c9afac33d3

  2. ボンディング(担保):https://note.com/buythedipams/n/n8bb64fb1551e

  3. リワードとペナルティ:https://note.com/buythedipams/n/ne57c1c81c52b

CSMにおけるETHの分配方法

2024年7月時点では、Lidoは三つのモジュールを提案しています。今回提案されたCSMに先行するモジュールとして、Curated ModuleとSimple DVT Moduleの2つがあります。前者は、Lidoにより承認された30強のプロフェッショナルチーム(通称:Staking Service Provider)へのETHの割り当てを担当します。後者は、複数オペレーターで共有のバリデータに対してバリデータ活動を行うDVTへの割り当てを担当します。Simple DVTでは、Obol・SSVという2つのミドルウェア事業者と連携しています。

Lidoに預け入れられたETHのこれら3つのモジュール間での配分方法に関して、以下のルールが提案されています。

各モジュールには、targetShare いうパラメーター(DAOにより変更可能)が存在し、各モジュールが取得できるETHの最大割合(Lidoの全預りETHの内何割を当該モジュールに割り当てるか)が定められています。

以下のルールに従い、各モジュール間でのETHの配分が行われます。
ルール1. 各モジュールへの現時点での配分量に基づいて優先順位付けを行い、アクティブなバリデータが最も少ないモジュールを優先する
ルール2. モジュールは空き容量(現在の数量 + 新規で配分されるETH < targetShare)がある
ルール3. モジュールは空きバリデータ(配分されたETHを運用するバリデーター)がある

出典:blog.lido.fi

ルール1「アクティブなバリデータが最も少ないモジュールを優先する」という観点からCSM開始時点では、CSMは最優先でETHの割り当てを受けることができます。

CSMの立ち上げ時点で、CSMは3つのモジュール間で最優先権を得ます。はじめは、targetShare を1%に設定し、その後モジュールが成熟するにつれてDAO投票を通じて最大10%まで徐々に増加させる。

出典:blog.lido.fi

具体的な割り当て量としては、Lidoに預け入れられた全ETHの1%をCSMに割り当てることが計画されています。DeFi Llamaを参照すると、2024年7月18日時点におけるLidoのETH TVL(プロトコルのETH総預り枚数)は約975万枚のため、約9.75万枚(約525億円相当)がCSMに割り当てられることになります。Ratedを参照し、Curated Moduleのうち最も割り当ての小さいFigment社の27万8,400枚と比しても小さい値となっています。

CSMモジュール内では、FIFO(First in, First out)メカニズムが使用されます。つまり、各ノードオペレータは担保金であるETHを預けた順番、もしくは、それに近い順序でETHが公平に割り当てられます。

従来のステーキングでは、Ethereumバリデータのエントリーキューが長引くいた場合にバリデータ運用の開始が遅れ、報酬の提供開始時期も付随して遅れることになります。しかしCSMでは、担保金であるETHはすぐにステークされ、オペレータはすぐにステーキング報酬を獲得できます。これは、オペレータのバリデータがアイドル状態で資本が非生産的になる従来のステーキングに比べて望ましいです。

出典:blog.lido.fi

Ethereumでノード運用をする際、留意すべき点の一つにエントリーキュー(バリデータとなるための待ち列)があります。各ブロック内で受け付けられる新規バリデータの数には限りがあり(2024年7月時点では1ブロックにつき15台)、それを超過した場合は次のブロックに持ち越しになります。この待ち時間はバリデータとなりたいプレーヤーの需要によって変動しますが、2024年6月~7月にかけては概ね半日~数日の待ち列が発生していました(参考:validatorqueue.com)。この待ち列に並んでいる間は、たとえETHが手元から離れたとしても実際にバリデータ業務を開始しているわけではないため、リワードは獲得されません。一方で、CSMでは担保金であるETHのステーキング報酬が即座に得られるため、資本効率が高まることになります。

バリデータの終了

自主的なバリデータの終了

CSMのpermissionless性を考慮して、オペレータは好みのタイミングでバリデータを退出させ、その後ロックされた担保金を引き出せるように設計されています。ETHの引き出し前に、CSMはバリデータの引き出し残高を確認し、バリデータ運用を通して損失が発生していたかどうかを判断する必要があります。万一に損失が発生している場合、その損失は担保のETHから徴収されます。引き出し残高の情報は、EIP-4788を活用してLidoによる介入を最小限に抑えた方法で取得されます。最終的に引き出し可能な担保金の額が決定されると、オペレータはそれをCSMに対して請求することができます。

出典:blog.lido.fi

Lido、Lidoによって提供されるCSMはpermissionlessに重きを置いており、最小限のコントロールを原則にしています。つまり、各自が望む任意のタイミングでCSMへの預け入れや引き出しができるように設計されています。バリデータ終了申請時に当該バリデータのパフォーマンスが評価され、損失が発生している場合には預け入れた担保金のETHの一部が没収されます。例えば、過度なアテステーションミスやスラッシングなどによる損失は、担保金であるETHから補填されます。

強制的なバリデータの終了

Lidoのバリデータエグジットポリシーに従い、各モジュールはLidoにETHを預け入れているユーザー(stETH保有者)の引き出し要求を満たすためにバリデータの強制的な退出をサポートする必要があります。既存のVEBO(Validator Exit Bus Oracle)アルゴリズムにおいて、CSMバリデータはバリデータの退出において最も優先度が低くなります。

出典:blog.lido.fi

VEBOとは、バリデータを強制的に退出させる際の順番を定めるルールです。現時点でCSMバリデータは他の2つのモジュール間と比べて退出の優先順位が低い、つまりCSMにおいて強制的なバリデータ終了が発生しづらい順番にあります。これはLidoがCSMの参加を促し、経済的な安全性を確保していることを示しています。

EIP-7002によってエグゼキューションレイヤーからトリガー可能なエグジット機能が実装されると、Lidoはバリデータ引き出し資格情報(withdrawal credential)を通じてバリデータを直接排除することができるようになります。この強制排除は、バリデータの残高が大幅に減少した場合や、保証金のカバレッジが不足している場合にトリガーされます。スラッシングを除いて、バリデータの残高が短期間で大幅に減少することは稀です。しかし、長期間オフラインであったり、誤ったアテステーションを提出し続けたりすると、累積的な損失が大きくなる可能性があります。このような場合、バリデータキーの紛失やメンテナンスの停止など、バリデータに何らかの問題があると考えられ、追加の損失を防ぐためにも該当バリデータは強制的に排除されるべきです。

別のシナリオとして、ペナルティ適用後にバリデータの保証金が最低保証金要件を満たせない場合も、経済的セキュリティの観点から排除されるべきです。

出典:blog.lido.fi

バリデータの強制的な退出手法として、Ethereum Improvement Proposalsの7002番で提案されている手法の活用が計画されています。これらの強制的な退出を発動する条件として、長期間のオフライン・過度なアテステーションミス・担保金割れ・スラッシング、等が挙げられています。

さいごに

Lido DAOは、Ethereumのセキュリティと分散化を強化することに専念しています。このミッションに沿って、コミュニティステーキングモジュールの導入は、Permissionlessのノードオペレーターをオンボードし、より強力なバリデータセットを構築することで、重要なマイルストーンとなるでしょう。

前述の通り、CSMは2024年末にテストネットとメインネットを開始する予定です。コミュニティ・ステーキングのDiscordフォーラムに参加して、コミュニティ主導のモジュールを一緒に構築しましょう。ブログシリーズ全体を読んでいただきありがとうございます。Galxe経由でOATを請求することもできますので、ぜひご利用ください。

出典:blog.lido.fi

(付)さらなる理解のために


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