母になってからの「母の日」

就学前頃から
「母の日にはお母さんに贈り物をするもの」と認識し、
花やハンカチを贈った。
手紙を書いたときもある。
母は笑顔でありがとう、と受け取ってくれた。
学生の頃はどうしていたか記憶が確かでないが
近年はほとんど物を贈っていない。
用意するとしても「消え物」を選ぶ。
食べてしまえばなくなる。
なくなれば管理の労がない。
感謝の気持ちで贈った物が相手の負担を増やすようでは
自己満足でしかないのではないかと考えるようになったからである。

自分が母になって何度か母の日を経験する中で
嬉しかったのは子どもからの手紙だった。
「おかあさんい
つもありがとう」と
拙い文字で書いてある。
「ありがとう」は日々言ったり言われたりするけれど
文字で伝えるのは非日常。
何度も見返すことができるのが嬉しくて
手帳に挟んでいる。
感謝は物でなくて言葉で伝えるのが一番だと思う。

筆不精の方におすすめしたいのが
「好き勝手なことだけしていい1日」を贈ること。
自分のやりたいことだけをしても
家事の心配がないように
いつも「母が担当していること」を他の家族が担う。
どんな性格の母であるかによっても異なるが
私は一人でいるのが好きなので
母の日に家族が私を置いて1日出かけてくれたら
とても嬉しい。
家族の栄養バランスなんて考えずに
良い加減な食事をして過ごしてもかまわないのはたいそう気が楽だ。
家にある食材だけで地味な料理を作っても
つまらなそうな顔をされる心配もない。
そしてお土産無しで、手ぶらで帰ってきてくれたら完璧である。

ギフトがギフトとして成り立つためには
相手の望みをよく知る必要がある。
せっかく気持ちを表すのに、一方的ではもったいない。
正直に「母の日はどんな贈り物が嬉しい?」と
聞いてみてはいかがだろうか。
私は「母の日だから」となにかを買ってもらうのは全然嬉しくない。
タイミングも物も、自分で選びたい。
こんなことを言う母は多くないかもしれないが
こんなことを考えている母は実は多いのではないだろうか。

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