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断言する素人と歯切れの悪い専門家

こんにちは、公認会計士の吉川です。

最近「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルにはまっています。言語学をゆるく学べるチャンネルですが、言語学以外にも様々な分野を取り扱っています。

”ラジオ”とチャンネル名にもある通り、1本の動画時間が長く、ゆったり聞き流しもできるので作業中にもおすすめです。

さて、本題です。
こちらの動画で「ダニング=クルーガー効果」を紹介していました。

動画内では、少し勉強した人は自分を過大評価してしまい、たくさん勉強した人は自分を過小評価してしまう、と説明されていました。(動画3分頃~この話が出てきます)

ビジネスの場やSNSなどで、何かを断言している人を見かけると、それは言いすぎじゃないかなぁと心配することが多々あります

この現象は「ダニング=クルーガー効果」と関係があると感じましたので記事にしました。

ある分野を専門的に勉強している人は、あるある!と思っていただけると思います。

また、その中に潜む問題点と解決策を自分なりに考えてみました。
専門家である人、そうなりたいと思っている人はぜひ最後まで読んでみてください。

ダニング=クルーガー効果

ある分野について、少し知識ががある人は自分の能力を過大評価する傾向があるという仮説をダニング=クルーガー効果といいます。この仮説では、知識の量が増えると逆に自分の能力を過小評価する傾向があります。

この現象は、特定の分野について専門的に学んだことのある人は分かると思います。

勉強を始めたある段階で、なるほど分かったぞ!と自信が出る瞬間があります。しかし勉強すればするほど自分が何もわかっていない気がしてくる、あの感覚です。

①勉強スタート→何にもわからん・・・俺ってバカなんだな・・・
②少し勉強が進んだ頃→完全にわかった。俺ってすごい!
③さらに勉強を進めた頃→マジでわからん、すべてがわからん。やっぱり俺はバカなんだな・・・

以下②と③をループします(笑)

私も会計の勉強を始めてから今日まで、資格試験や仕事を通じて15年近くこの分野の勉強を続けてきました。

それにもかかわらず、今は会計も税務もわかってることは本当にごくごく一部分だけだと感じます。

特定の分野に絞っても、勉強に終わりはありません。
知識が付くほど、理解できていない分野がどれほど大きく、深いかが明らかになってくるため起こる現象でしょう。

あるあるなシチュエーション

そんな中でよくあるシチュエーションがあります。

それは、金融機関の新人やコンサルタントを名乗る人が会計・税務に関する専門的な内容について経営者に対してアドバイスしている場面です。

税務のアドバイスをすることは、税理士法などの問題もありますが、それはいったん置いておきましょう。

断言する素人

「素人」という単語を使うと角が立ちそうですが、対比するためにあえて使わせていただきます。

「○○をすると税金が安くなりますよ!
「××の処理をした方が決算書が良くなるので金融機関の評価がよくなります!

自信満々に断言しているのを見ると、なぜこの人は断言できるのだろうか・・・?と疑問に思ってしまいます。

少し会計や税務を勉強した人はその分野の深さをまだまだ理解していません。自分が勉強した範囲で分かったつもりになって断言してしまうのでしょう。

私も思い当たる節がたくさんあります。。まさにダニング=クルーガー効果です。

歯切れの悪い専門家

一方で、ある分野に精通した専門家はどうでしょうか。

「〇〇をすると今期の税額が安くなる可能性があります、しかし××の場合は不利に働くこともあるので難しいところです。」
「〇〇の処理をすると決算書の××が良くなります。しかし△△に影響を及ぼしてしまうので一概に良いことばかりではありません。」

一例ですが、こんな回りくどい言葉遣いをしている人が多い印象です。

専門家はたくさんの事例を知っているために、今後こうなったら××になるし、ここでこの処理をすると別の部分で問題が出る可能性があるなと、様々な仮定を想定してしまうため歯切れが悪い回答になってしまうのでしょう。

断言する人の方が信頼を得やすい?

さて、ダニング=クルーガー効果によって、素人が断言しがちであることを説明しました。ここである問題が起こります。

それは、断言する人のほうが信用を得やすいことです。

クライアントからすれば、自分の質問に対して明快な答えを与えてくれる人のほうが望ましいのはある意味で当然です。

また、自分には分からない専門分野だからこそ外部の専門家に業務を委託しているわけです。小難しい内容の話を理解したうえで相手の言っている内容の正しさを判断することを求めることは難しいのです。

しかし、素人の言葉に従って損害を被ってしまっては元も子もありません。
専門家はどのような行動をとるべきなのでしょうか?

大きく分けて、あえて自分も断言をする方法信頼を積み重ねる方法があると考えています。

あえて断言する

これは様々な可能性を考慮したうえで、可能性の低い部分を省略して、クライアントの利益になるような判断をあえて断言する方法です。これは自分もリスクを取る方法でもあります。

ケースバイケースではありますが、時には断言することが必要な場面もあると思います。

信頼の積み重ね

内容で判断するのではなく、誰が言っているのかで正しさを判断する人もいます。○○さんが言っているのだから正しいだろう、というやつです。

これは権威主義的でよくないという側面もあります。しかし、ビジネスの場ではどうでしょうか?自分のビジネスに集中して、専門分野は信頼できる専門家に任せるという選択肢は合理的です。

専門家の立場からすれば、どれだけ信頼してもらえるかという話になります。信頼してもらうためには、日々の積み重ねしかありません。
本当にクライアントのことを考えて行動し続けることで信頼が得られると思っています。

専門家の責任

信頼を勝ち取った専門家には大きな責任があります。自分の意見がある程度通ってしまう以上、本当にその会社、その事業にとって有益な判断かどうかを見極める必要があるためです。

専門知識はあっという間に陳腐化してしまうため、日々の学習も必須です。勉強をして、クライアントのビジネスを理解し、そのうえで正しい判断ができるような良き相談相手になる必要があるのです。

だからこそ専門家はやりがいのある仕事なのだと感じます。

まとめ

・YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」は面白い
・少し勉強をすると自分を過大評価し、たくさん勉強すると過小評価する傾向を「ダニング=クルーガー効果」という
・素人は断言しがち、専門家は歯切れが悪くなりがち
・専門家があえて断言することも必要
・信頼の積み重ねが重要→信頼を得た以上、責任は大きい

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