メモ
『よくばり』
有り余る富を持ちたいし寒さ飢え貧さの中で生を実感したい
不埒で放恣な小娘でありたいし慈悲を湛えた器でありたい
輪郭をなくして世界と溶け合っていたいし世界をこの目で見つめる私でありたい
永遠の煌めきになりたいし美しく儚い瞬きのうちに消えたい
『今際の時』
瞬きの中に永遠がある
とろける甘美なひとときに私達は輪郭を失い溶けあう夢を見た
漣と静寂に耳を澄ませる彼の横顔を篝火が照らした
煙草を燻らせ灰を落とした
かくも短く燃える生命はあっけなく終わり塵芥を残すのみ
玻璃を戴いた涯てしない盃の溢れんばかりの揺らぎの中で一匙の幸福に満たされて