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社内公用語が本当に100%英語だった会社でのこと。

私はまだ破綻する前のLehman Brothers (リーマン・ブラザーズ)に派遣社員として働いていたことがあった。言わずもがな有名企業で、六本木ヒルズにオフィスを構える、私にとったら遠い存在の企業だった。私は人材派遣の会社に全く別の会社の紹介を受けに行ったのだが、ちょうどリーマンが人を探しているとの事で、「オフィス内に入れる機会など早々ないからこれは社会見学でもしてこよう」という軽い気持ちで面接に行った。そして受かってしまった。

私は金融関係の会社が苦手だ。なぜなら私は数字が苦手だから。そしてあまりお金に直接かかわる仕事は好きではなかった。しかし結局3か月だけの短期派遣なら、という条件で仕事を開始した。

私はそれまで日本でもアメリカでも仕事をした経験があったけれど、どの会社も日系企業だったこともあり、オフィスの中では日本語を話し、書き、聞こえてくる言語はもちろん日本語だった。だがリーマンは違った。そこはまさにアメリカだった。

上司は日系アメリカ人、同僚はアフリカ系アメリカ人。周りにたくさん日本人もいたけれど、他部署と関わることはほぼなかった。会社では1日中英語。PCが不具合を起こせばインドにあるIT部門に連絡をし、どういった問題が起きているのかを英語で説明しなければならなかった。これには本当に苦労した。電話がかかってくればシンガポールからのヘッドハンティングだった。一体どこからしがない派遣社員の私の名前がシンガポールまで届いたのか、本当に謎だ。社内ミーティングも、社内メールも、社内での会話も、書類も、とにかく全てが英語だった。極めつけは社内の従業員食堂だ。スタッフも全員外国人で、食事の注文も英語で行わなければならなかった。

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同僚だったアフリカ系アメリカ人は日本語を学びに日本に来たらしいが、「ここで働いていると日本語も忘れるし、日本にいるということ自体忘れてしまいそうになる」と言っていた。そりゃそうだろう。ここはもうアメリカだよ。

私は3か月で辞めてしまったけれど、ここにいたお陰で英文メールがお手の物になった。これには今でも感謝している。ここで随分鍛えられた。ものすごいスピードを求められる職場だったから、Google翻訳も使わずバンバンメールを打っていた。

リーマン以外にもたくさんの外資企業で仕事をしたけれど、あそこまで日本にいることを忘れさせてくれた会社は無かったな。その後リーマンショックが訪れるなど想像もできないくらい活気があり、信じられないくらい忙しそうにしている人々ばかりがいた会社だった。

「社内公用語を英語にします」と言っている会社もあるけれど、実際にはどのくらいの程度英語が使われているのか大変興味深い。PCの不具合まで英語で説明させる会社なのだろうか?従業員食堂でも日本語は使えないのだろうか?なんて。

また、英語しか使えない会社で働くことができたら私の英語力は飛躍的に伸びるのではないか?とも思うけれど、なかなかそんな会社には出会えないかな。一歩会社に入ればそこはアメリカ。そんな経験ができたことは、やっぱり貴重でありがたいものだったなと今は思う。

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