日記32 みなみのみなと街から
2023年9月第一週
学生の身分で過ごせる最後の1ヶ月となる。完成したビジネスプロジェクトを提出していなかったので週末に提出。スーパーバイザーのピーターに提出の報告をすると週末にも関わらず秒で返事が来た。
「ウェルダン、リラックスしてね〜!」
折角なので、「これより英国で就職活動をしてみるつもりなのでコネクションか何かを紹介してくれないか」と連絡したら一切返信が来ないのだった。プロジェクト提出期限2週間前に提出し身軽になった自分は一気に活動的になる。自国に戻るブックやペイウェン、チャールズに最後の挨拶をしにいく。またいつの日か、世界のどこかで会えたらいい。
同様にプロジェクトを提出させたマイとアミールとは、一緒にバスで少し離れた街ウィンチェスターに小旅行。天気も良く、散歩日和。サンデーローストに舌鼓。その時、学生の身分終了後のビザ関連の話を進めるうちに、9月いっぱいはこっちに滞在していた方が良いことが判明。9月中旬に退寮となるので、その後の住処を探すことになった。
2023年9月第二週
アミールと一緒にいる機会が多い。夕飯を一緒に食べたり、リキの家に一緒に行って、インドのインスタントラーメンリゾットみたいなものをご馳走になったり。その家にはロナックも一緒に住んでいて、自分を見つけた彼はチキンカレーを振舞ってくれた。どちらも美味かったが腹がはち切れそうになる。しかし、ロナックの笑顔は憎めないんだよな。
アミールに「今後どうすんの?何の仕事に就きたいの?」と尋ねられ、自分自身何も定まっていないので頭に浮かんだことを話していたら、自分のバックグラウンドに関連のあるビジネスの話がアスウィンの元に来ているらしく「今度リバプールに話を聞きにいくから一緒に行くぞ」ということで、それに加わることになった。面白い話ならいいな。一方、寮では寮中のインドのフラットメイトたちがコモンルームに集まり盛大な卒業パーティみたいなものを催しており、自分もお呼ばれになり参加することに。照明を落として音楽を流し、どこかで買ってきたミラーボールでクラブ調にする本格感。しこたま飲まされ夜中2時くらいにラフルと退散。お互いの今後のことを少し話し、固い握手をして自分の部屋に戻った。
退寮後の住処は、奇跡的に同じ大学を卒業した日本人と繋がることができて、その人の部屋を貸してもらえることになりそうだ。片田舎からロンドンに出る。
2023年9月第三週
ヤンやソンヤと最後の挨拶。ヤンとは中国の政治経済の話などを小一時間話す。やはりしっかりしている人はこういう話題にも精通しており話すのが楽しい。ソンヤとも同様にお互いの国の状況や卒業後の話をしながらお茶をする。同じグループで一緒に真剣に課題に取り組んだクラスメイトは俺の中で特別な存在になっている。別れが惜しいが、またどちらかの国で会える。
今週はビジネスプロジェクト提出の週である。提出締め切り前前日にメイからヘルプの連絡があり、図書館で落ち合う。有料バージョンのChat-GPTまで手に入れて論文を完成しようとしている。10月から始まる新学期、生成AI第一世代がこぞってテクノロジーの力を借りて課題や論文に取り掛かるだろう。使い方次第では非常に生産的ではあるが、ただそれに頼る人は堕落する一方であろう。これからの教育機関の舵取りは難しい。そんなメイは自分がスワナに会っていた合間に論文を完成させており、無事(?)に提出できたのであった。その後はリキからお誘いがあり、街で評判のインド料理屋でカレーを頬張る。その時、お互いに知ってはいたが、これまで話す機会がなかったクラスメイトのルーダンがその場にいて、初めてちゃんと会話をするのであった。話してみると彼女はとても愉快で、なおかつ真面目な性格だった。もっと前からコミュニケーションしておくべきだったと後悔する。リキと会うのもこれでとりあえず最後になりそうだ。お互いグッとハグして別れる。
そして、メインイベントは我らがマイの誕生日。アミールと一緒に日付が代わる瞬間を見届けお祝いし、その日の夜はレストランでディナーである。部屋も見つかり念願のロンドン生活が始まろうとしている彼女は誰が見ても楽しそうであった。