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600字で綴る⑬「『未来を語ること』に説得力はない」

「『未来を語ること』に説得力はない」

これは本当だと思う。分かりやすい例でいうと、地球温暖化や気候変動に対する人々の反応。「30年後地球ヤバいです」と、どれだけ騒がれても人は変化してこなかった。20年以上前からずっと研究者やアクティビストが警鐘を鳴らし続けてきたが、大衆レベルでムーブメントが起こり始めたのはつい最近である。その一方で、「台風で水が使えなくなります」や「直下型地震が~年以内に必ず起きます」と言われると、人々は熱心に語り始める。

これはもちろん、「自分事と思っているか」or「他人事で済ませているか」という解釈はあるが、もう一つ重要な観点があるように思える。それは、人々が「未来」として捉えているか、それとも「確定未来」として捉えているか、である。そして、この「確定未来」という要素は、「自分事として考えさせること」よりもずっと強い引力が働くように思える。

例えば、「おれはいつかサッカー選手になりたい」と言っている少年Aと、「おれはサッカー選手になる」と言っている少年Bがいるとして、どちらを応援したくなるか考えて欲しい。一般的には「後者」の方が応援したくなるし、より熱量や説得力を感じるのではないだろうか。この例で言うと、前者が「未来」に起こりうる「願望」として伝えられ、後者は「確定未来」として「伝わっている」のではないだろうか。後者の方は、リアルで説得力のある「現在の状況」に強く関連しており、より「現実的課題」として聞き手に訴えかける。

地球温暖化の例に戻ると、一般民衆が「自分事」として捉えだしたからムーブメントとなった、というよりは、科学的証拠が積み重なった結果、近い未来に高い確率で起こりうる「確定未来」として捉えられたことがまず一つの大きな要因であるといえる。つまり、人に「伝える」ためには、「確定未来」として「伝え」た上で、「自分事として捉えてもらう」、大きく2段階のステップを踏む必要があるのだ。

何が言いたいかといえば、こうだ。あなたが何か自分の夢やビジョンを語るとき、知人に自分の団体にジョインして欲しいとき、社会課題を考えて欲しいとき、何でもいい。相手に伝えたいことが「伝わらない」ときに、分かってくれない相手のせいにしてないだろうか。それらは大方、単なるあなたの綺麗事やロマンで終わっていることが多い。伝えるときに、あなたの「今」と、あなたの「未来(あるいは「先のビジョン」)」が乖離してしまっているのだ。

イーロンマスクは人々の目線を「宇宙」に向けた。スティーブジョブスは壇上で「これから来る未来」を人々を語り、iPhoneに熱狂させた。これは人々がそれらに興味を持ちだしたから、ではなく、人々にそれらを「これから来る未来」として捉えさせたことが大きい。人々がみんな宇宙やiPhoneを「自分事」として捉えていたわけでもないのに、人々は見る先を変えたのだ。

「未来」は「今」と紐づいて初めて説得力を帯びる。だから、あなたが他者の心に訴えたいことがあるとき、自分の思いを他者に伝えたいとき、きちんとあなたが描く「未来」と「今」のあなたを繋げてみて欲しい。こうすれば意外にも簡単に「説得力」を帯びる。ただ、ここには厳しさもある。あなたの「今」が最重要要素なのである。あなたは、今、「そこ」にたどり着くのに必要十分な気概と努力量があるか、そこにたどり着くために何を考え、何を語るのか。「今」なくして「未来」はない。先人の言うことはやはり、あながち間違っていないようだ。


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