嫌なことノート 09_拝啓「ニトリ」様
ソフトウェアを利用してるとよく出くわすシーンについての考察。
「対象を選択したうえで、メニューを選択し実行する。」が正解か、それとも「メニューを選択してやりたいことを決めておいて、そのうえで、何かを選択すれば実行される。」が正解か。
もちろん、これはケースバイケースだと思いますので、どんなシーンにおいてもこれが正解ということはないと思います。
しかし、ここで重要なことはその理由。つまり、何を根拠にしてそのようなオペレーションにしたのか?ということ。
「この方法のほうが手数が少なくて済むから。」とか?それとも「この方法のほうが操作し易いと考えたから。」とか?
でも、これでは説明になっていません。
では、なぜ、この場合、手数が少ないほうが良いのか?多少手数が多くてもわかりやすい方法があるのならそちらのほうが良いとは考えなかったのか?
では、なぜ、この場合、ここで操作し易いほうが良いのか?この後の一連の作業を考えると、手前で多少操作し辛いところがあっても、トータルで操作しやすい状況になるのであれば、そちらのほうが良いとは考えなかったのか?
そんなことを思うと、何を根拠にしたのか?と一口に言っても、どこまでの範囲をフォーカスするのかによって、意思決定の方法や、導き出される結果が異なってくるかも知れません。
「部分的にはばっちり。でも全体としてはいまいち。」ということもあるでしょうし、逆に「部分的にはまずまず。でも、全体としてはいい感じ。」ということもあるでしょう。
「それは、お客様のどこからどこまでの行動に対して考えた結果ですか?」
今回は、そんなお話しです。
言わずと知れた「ニトリ」さん。
ニトリはほんといい。そう頻繁に行ける訳ではないけれど、何度行っても飽きません。
気がつけば、お店を何周も何周も回っている感じ。
そのニトリ。お店の所々に、こんなブースがあります。
タブレット端末がありますね。
メンバーズカードの情報を確認できたり、商品に関する情報を確認できたりするようです。
ということで、早速、使ってみます。やはり、どんなシステムなのかものすごく興味がある。「商品情報確認」のほうをタップします。
画面が遷移しました!
バーコードをスキャンするか、数字を入力するか、かぁ。
バーコードスキャナがあるんだな。なるほどなるほど。
赤外線もちゃんと出てますね。
では、商品を持ってきて、バーコードをスキャンして、ってやってみるか。
いやいや待てよ。
ここで一つ嫌なことノート。
これ、このような比較的小さな商品であれば簡単に持ち運べるから端末のところにも持っていけるしバーコードをスキャンすることができます。
しかし、こんな大きな商品になるとそれができません。
あぁ、そんな商品でもこの端末で情報を得られるようにするために注文カードがあるのか。注文カードだけ持っていけばスキャンできるもんね。端末にも「商品または注文カードに」って書いてるからね。
っておーい。注文カードあれへんやんけ。ほら。価格表示のための1枚だけですやん。
これどうするの?このでっかい商品を端末のところまで運ぶ?嘘でしょ。それはないわ。
あ、そうか。スマホで値札の写真を撮って、そのバーコードをスキャナで読み取ればできそうだ!
って、それもないでしょ。かかる手間よ。
あ、そうか。スマホアプリがあればいいのか。
そもそもスマホを持っている人は、こんな端末を用意していただかなくても、専用アプリを提供してくれさえすればいいんですよ。
ということで。ダウンロード。
しかし、店舗の端末と同じことをしようにも、それがどの機能なのかわからず。
いろいろ触ってみて、バーコードスキャンができそうなのが「手ぶらdeショッピング」
お。できそう。
しかしどうもおかしいな。
これ、店舗で商品を見ながらも、店舗では購入せず、ネット経由で購入するためのものみたい。いわゆるショールーミング的なやつですね。
どうやら、端末とまったく同じ機能はなさそうですね。
ということで、結局、「店舗で、タブレット端末で、大型商品の情報を得たい場合は為す術がない。」という結論に至るんですけど。
これでいいですか?ニトリさん。
ソフトウェア開発技術者の端くれとして、ちょっとだけ偉そうなことを言わせていただきますね。(でも、大した技術者じゃないから、あとで、当事者に会ったら、「ごめんごめんごめんごめん。ごめんって。そんな意味じゃないんですって。いやほんと。」なんて言いますけどね。)
当然、ソフトウェアは仕様どおりに動作すれば良いというものではありません。見た目の良し悪し、使い勝手の良し悪し、その他にも様々良し悪しを決定付ける要素があります。
しかし、それらの良し悪しを決定するための前提というか、ベースにあるのが、「ユーザーが実際に操作することを想定し、そのとおりに、ストレスなく利用できるかをとことん確かめる。」ということです。
ユーザーが「そもそもそんなことしないよ」ということであれば、いくら見た目が良くても、いくら使い勝手が良くても、何の意味もありません。
今回の件で言えば、「お客様が店内を買いまわっているときにどのような動きになるか?」というところから検証して、あの端末に至るまでの経緯や、至ってからの行動や、そういうことがユースケース的にしっかりと洗い出されてこその「手段としてのソフトウェア」だと思います。
ですので、たまたま今回は「こんな端末がありますね。」から記事をはじめましたが、本当なら、
お布団の売り場で商品を見てたとき、「あれ?この商品とこの商品はどう違うんだろう?詳細な情報があるといいのにな。何?このPOPは。どれどれ?より詳細な情報は端末で見れますよって?いいじゃん。注文カードを持っていって、バーコードをスキャンすればいいのね。じゃあ、この紙持っていこうか・・・」
という流れになりませんか?私はそう思います。
ですので、もしも、「端末を設置しているのでサービスレベルは高いんです。」という認識であれば、それは違うと思います。折角設置したのであれば、認知してもらってなんぼ、使ってもらってなんぼ、そうなるように誘導してなんぼだと思います。
エスノグラフィーって言うんですかね?「人々が活動している現場を観察・理解し、それを描写するための手法。」というやつです。こういうことが本当に大事なんだと思います。
これは、何もマーケティングだけのものではなく、商品やサービスを提供しようとする者は誰しもが必要なことなのではないか、と思います。
そんな視点を外さない企画マンでありたいと思います。