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テスラのロボタクシーイベントが不調に終わった訳 (今後の考察とお披露目製品レビュー)


待望のロボタクシー登場だが、CEOのマスクに問題あり?

今回お披露目されたロボタクシーのサイバーキャブ

半年以上待たされ、株価復活の希望とされていた待望のテスラのロボタクシーイベント。

テスラCEOのイーロン・マスクがロボタクシー「サイバーキャブ Cybercab」に乗って颯爽と会場に現れ、試乗ができる「サイバーキャブ」が会場外にずらりと並び、観客を沸かせた。

ロボタクシー車「サイバーキャブ」は、ハンドルもペダルもなく、まさに無人運転車といえるデザイン。外観はモデルXを近未来的にアレンジしたような印象だ。車体価格も消費者に優しい3万ドル程度とのことだ。おそらくテスラの根底にある、利益よりも普及を重視した戦略ともいえる。

「サイバーキャブ」を個人が直接購入できるとなると、運転に不安のある高齢者や、毎日子供の送迎が必要な保護者にとって非常に便利だろう。また、使用していない時間帯にはロボタクシーとして商用に活用でき、収益源にもなり得るので、購入資金の回収にもつながる。

しかしながら、華やかで期待を膨らませるイベントだったが、投資家のやアナリストの視点からは、マスクのスピーチは内容が浅く、具体的な計画性に欠けており、期待外れで、アナリストや投資家からは失望の声も上がった。

ハンドルもペダルもない無人運転車のサイバーキャプ

2025年からロボタクシーを開始する予定のようだが、走行承認を得るためのプロセスや、安全性の証明が不十分な点が失望を深めている。
「サイバーキャブ」は2026年〜2027年からの生産開始が予定されているが、完全自動運転機能(FSD)やサイバートラックのように、再び遅れるのではないかという懸念がある。
「サイバーキャブ」は完全運転自動車なので、購入者が好き勝手に規制外の場所に移動して使用することができない。だからこそ、走行承認プロセスの計画が重要視される。
テスラは、どこでも自動運転が可能という点で他社を圧倒する優位性を持つが、広い地域で承認されない限り、ロボタクシー分野では、その強みを完全には活かしきれない可能性がある。

また、UberやLyftなどと提携せず、独自にロボタクシーを運用するなら、プラットフォームの立ち上げも必要となる。(イベントのデモではWaymoを真似たような簡易版に見えた)テスラとして最大級イノベーションの見せどころのロボタクシー運行が間近に迫り、CEOも従業員もまさに大忙しであるべき時期だ。

冷静なアナリストたちは、ライドシェアの提携なしに規模を拡大できるかどうか、そんなテスラに疑問を抱いている。

多くの投資家やアナリストは、マスクが自動運転事業にどれほど関わっているかを知りたがっていたが、最近はトランプ元大統領支持やXに夢中で、事業に集中していないことが浮き彫りになったかたちだ。

ロボタクシーに試乗したひとたちの動画

お披露目されたサプライズのロボバン

「サイバーキャブ」については少し前から情報が出ていたが、テスラの「ロボバン Robovan」の登場はサプライズだった。今回の発表は予想外で、観客を驚かせた。

従来のバンとは一線を画し、新幹線のような流線型デザインで、車輪が見えない構造になっている。車両は最大20人が乗車可能で、荷物の輸送にも対応している。

このバンは、自動運転配車サービス「テスラ・ネットワーク」向けに開発されたものだ。テスラは以前から交通ソリューションを開発していると発表し、自動運転バスの展開も示唆していた。今回、その構想が実現した形となった。

商用向けであり、計画の詳細が不明なため、「サイバーキャブ」よりも展開は後になりそうだ。
交通ネットワークの向上に加え、地域や政府への貢献も期待され、テスラのEVトラック「セミ」のように企業同士をつなぐソリューション連携の役割を果たす可能性がある。もし貧困層の生活を支援するものであれば、民主党系や地域コミュニティにも歓迎され、政府や地方政府からの受注もあり得る。

気になるテスラロボット、株に影響は?

ロボタクシーイベントでは、ロボットの「オプティマス」が披露された。

会場ではダンスを披露し、飲み物を振る舞ったり、じゃんけんをしたりする場面もあった。イーロン・マスクによると、このロボットは基本的に何でもでき、犬の散歩や子供の世話、芝刈りなどの手伝いも可能になるとのこと。価格は2万ドルから3万ドルで、大量生産も可能だという。
お手軽な価格帯だが、サイバートラックもそうだったように、イーロンマスクの価格予想にはブレがあるので、上限プラスを考えた方がよいかもしれない。

大量生産実現にはロボタクシーよりも時間がかかりそうだが、長期的な材料として夢を与えてくれる。堅調に成長している蓄電池事業とは異なり、投資家に長期的ながら希望を与え、時にインパクトを与える、どちらかといえばサイバートラックのような存在になるだろう。

ウェイモ (Waymo) に遅れをとっているテスラ、果たして。

どデカい360度カメラを車の上に積んでいるロボタクシーWaymo

一方、Google(Alphabet)傘下のライバルであるウェイモ は、ロボタクシーの先駆者として2020年から運行を開始し、現在ではフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど複数の都市で展開しており、テスラよりも一歩先を進んでいる。

そんなウェイモ のロボタクシーは、外観よりも安全性を重視しており、車両の上にどデカい360度カメラを搭載し、Lidarを用いて3Dマップを活用して走行している。自動運転ハードウェアのコストはテスラ車よりも高く、運行エリアも限定され、見た目もダサいが、安全性には定評がある。

果たしてWaymoに追いつけるかが疑問となるが、テスラも異なるコンセプトで十分にロボタクシーのリーダーとなれる可能性がある。筆者もテスラ車を使用しているが、製品自体は素晴らしい。特にソフトウェア、特に自動運転機能に関しては革新的であり、車体の仕上げや乗り心地は決して最高とは言えないが、それを補うほどの性能を持っている。

最近では呼び出し機能が復活し、この機能を使うと無人のテスラ車が自動で発進し、目の前まで来てくれる。周囲の人々は驚いた表情で、ゆっくりと移動する無人の運転席を見つめる。

テスラの自動運転機能(FSD)は、黄色信号に変わった瞬間に急ブレーキをかけたり、夜間や悪天候時に対象物や交通標識を見間違えたりするなど、完璧とはいえないものの、出発地から目を瞑っていてもほぼ目的地に着く。米国内のどこでも自由に、いつでもマイカーでFSDを走行できるのはテスラだけだ。

また、マイカーをロボットタクシーに貸し出すこともできる、そんなロボットタクシーもテスラだけ。

コストや外観よりも、安全性と運用面を重視するウェイモ 。コストと普及と外観と利便性を重視するテスラ。両者の違いが年々大きくなっている。

CEOの行方、株価の動向と今後 (考察)

黒のMAGA帽子を被ってトランプ選挙キャンペーンに参加するイーロンマスク

ロボタクシーが期待外れに終わった今、新たな材料が出てこない限り、決算まで株価は低調に推移する可能性が高い。

しかし、中国でのテスラ需要の増加や米国内での自動車ローン金利の低下、新車全体の需要増加がガイダンスに反映されれば、再び株価が上向く可能性もある。
また、決算のカンファレンスコールで「モデル2」の詳細が明かされれば、さらなる期待感が高まるかもしれない。反対に、決算になんらかの問題があり、「モデル2」に関する進展も曖昧であれば、再び株価が下がるリスクがある。

CEOであるマスクに問題があることは非常に残念だ。イベント翌日の株価に投資家はもちろん失望しているが、従業員の方がより深く落胆しているかもしれない。かつてはイノベーションに専念していたマスクだが、今はXでの政治攻撃やデマ拡散に夢中になっている。

イーロン・マスクCEOが温暖化を否定するトランプ元大統領を強烈に支持し、過激な発信を続けることで、環境問題に関心のある民主党支持層の購入意欲を損なっている実情もある。筆者の友人(CA州)もEVには興味があるが、イーロン・マスクが嫌いだという理由でテスラを買わないと言っている。特に、ロボタクシーの運用場所は都市部に限定されるため、民主党支持層の多い都市部の人々に嫌われたままだと、逆風となるだろう。

Q3決算では、選挙に夢中になっているが、トランプが大統領選で敗北すれば、トランプ推しだったイーロン・マスクも敗北したとみなされ、短期的には株価は下がりそうだ。(逆に勝ったら、トランプ政権により携わるため、テスラ離れが加速するとみられる)
しかし、中・長期的には、Q4にはイーロン・マスクが再びテスラやスペースXに集中してくれるのではないかと、少しだけ期待している。

AI、自動運転、交通ネットワーク、蓄電池、ロボットと、これほど幅広くハードとソフト両方で拡張性が期待できる企業は、テスラ以上にないだろう。CEOが事業に集中するか、アップルのクックCEOやマイクロソフトのナデラCEOのような、従業員や投資家からも信頼される優秀なCEOに交代し、適切に舵取りを行えば、将来的に(5年〜10年)時価総額が3兆ドルを超える可能性があると個人的には思っている。

鍵を握るのはCEOだ。

参考
https://www.theverge.com/2024/10/10/24267225/tesla-robotaxi-optimus-we-robot

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