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FRBついに大幅利下げに踏み切る🇺🇸現地からFOMC詳細と解説(全文無料)


雇用の急な落ち込みで、FRBが4年ぶりに大幅利下げに踏み切る


2024年9月にFRBが4年ぶりに利下げを行いました。しかもFF金利が0.5%ポイント(50bps)と従来の予想より大幅な利下げとなりました。11対1で決定したことから反対者が一名います。(ボウマン理事)
0.5%ポイント利下げの可能性があるとの先週のWSJ報道を裏付ける形となります。


利下げ実行


7月の雇用統計が弱かったことを受けて、FRBが高金利を長期化したために、労働市場を危険にさらしているのではないかという懸念に対応するものとの見方が強まっています。

  • FRBは11対1の票決で、FF金利を50Bpsと大幅引き下げ、4.75%~5.0%の目標範囲とすることを決定。これは4年以上ぶりの利下げとなる

  • FRBは、11対1の票決で基準金利を50ベーシスポイント引き下げ、4.75%〜5.0%に設定。

  • これは4年以上ぶりの利下げで、ボウマン理事は0.25%ポイントの小幅な利下げを支持し反対票。

  • ドット・プロットでは、年末までに1%ポイントの金利引き下げが予想され、19人中9人が0.75%ポイント以下を予想。

  • 2025年の金利見通しは3.4%で、来年はさらに0.25%ポイントの引き下げを4回示唆。

  • 雇用は「減速している」と指摘され、インフレはやや高止まりとしている。

  • FRBは、インフレ率2%の目標に加え、「雇用安定」を重視。

  • 雇用とインフレ目標達成に向けたリスクは「概ね均衡している」との見解を示す。

今年6月から大きく変わった経済予測

経済予測

今回の経済予測では、利下げのペースが従来の見通しよりも加速し、インフレ率もさらに低下するとの見方が強まっています。年末までに1%の利下げが予定されており、年内に残る2回のFOMCで、さらに0.25%の追加利下げが計画されています。

利下げと大統領選挙。パウエル議長はトランプ避けたい?

FOMCの19人の投票者のうち、10人が0.5%ポイントの追加利下げを支持している一方、FRB内では反対意見もあり、ボウマン理事がその一人とされています。彼女は、トランプ元大統領によって任命されており、トランプ氏自身も利下げは選挙後に行うべきだと発言しています。

パウエル議長は、トランプ元大統領からの指名を受けて就任しました(ムニューシンの推薦によるものです)。本来であれば、テーパリングをうまく乗り越えたイエレン議長が再任される可能性が高かったのですが、オバマ政権時代のレガシーとして、あえて交代させられた形となりました。しかし、パウエル議長は過去に利下げを強要されたり、解雇の可能性をほのめかされたこともあります。そのため、公の場ではトランプ氏への個人的な意見を避けてきましたが、FRBへの介入に対して困惑を示す発言をしたことがあります。FRBの独立性を守ろうとするパウエル議長にとって、トランプ候補を有利にするためにあえて利下げを伸ばすことは、得策ではないように思われます

(パウエル議長を批判し、議長交代を示唆するトランプ元大統領)

今回の0.5%の利下げは、バイデン政権にとって追い風となり、ハリス副大統領の選挙勝利を後押しするものと見られています。
早速、民主党のハインリッヒ上院議員がFRBの利下げを歓迎する声明を発表しました。

FRBメンバー

FRBパウエル議長 声明文

皆さん、こんにちは。私と同僚は、アメリカ国民の利益のために、最大雇用と物価の安定という二重の目標の達成に引き続き注力しています。全体的に見て、米国経済は強く、この2年間で目標に向けた大きな進展がありました。労働市場は過熱状態から落ち着き、インフレはピーク時の7%から2024年8月時点で推定2.2%まで大幅に緩和されています。私たちは、最大限の雇用を維持しつつ、インフレを2%の目標に戻すことに引き続き尽力しています。

本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利を0.5ポイント引き下げることを決定しました。この決定は、政策の再調整により労働市場の強さが維持され、インフレが持続的に2%に向かうと考えたことに基づいています。また、証券保有の削減を継続することも決定しました。

最近の指標は、経済活動が引き続き堅調に拡大していることを示しています。2024年上半期のGDP成長率は年率2.2%であり、第三四半期も同様の成長ペースが予想されています。個人消費の成長は依然として強く、設備投資も昨年の低迷から回復しつつあります。住宅投資は、第2四半期に低下しましたが、供給状況の改善が需要を支え、米国経済の強さに貢献しました。

労働市場は冷え込みつつあります。過去3カ月の雇用増加は月平均11万6,000人であり、年初のペースから顕著に減速しています。失業率は上昇したものの、依然として4.2%と低水準にあります。全体として、労働市場はパンデミック前の2019年に比べて引き締まっておらず、インフレの原因にはなっていません。

インフレは大幅に緩和されましたが、依然として2%の長期目標を上回っています。2024年8月までの12カ月間で、PCE(個人消費支出)物価指数は2.2%上昇し、食品とエネルギーを除いたコアPCEは2.7%上昇しました。長期的なインフレ期待は、世帯や企業、予測者の調査および金融市場の指標により、依然としてしっかりと固定されています。

私たちの金融政策は、最大雇用と物価安定を促進するという二重の目標に基づいています。過去3年間、インフレは目標を大きく上回り、労働市場も非常に引き締まっていました。そのため、インフレを引き下げることが主要な焦点となっていました。物価の上昇は、特に生活必需品の価格に影響を与え、最も困難な状況にある人々に大きな負担をかけています。


FRB声明文

FRBパウエル議長 記者会見 詳細とまとめ

2024年9月のパウエル議長、FOMC記者会見質疑応答


パウエルFRB議長の発言まとめ

  • パウエルFRB議長は、今日行われた0.5%ポイント(50bps )の利下げが今後も続くのではないと強調。

  • 今後の政策は、インフレや雇用などの経済データに基づいて慎重に調整され、FOMCごとに決定されると主張。

  • 物価安定と完全雇用を維持しつつ「ソフトランディング」を目し、失業率の急上昇を避けたいとしている。

  • 利下げに対して柔軟に対応していく姿勢を強調。

  • FRBが利下げを急ぐのは景気後退を恐れているからではない

  • 金利の調整は長期にわたって行われる

パウエル質疑応答の詳細や発言

  • これまで利下げを行わなかったことについて、インフレが2%に向かわせる上で効果があったからとしている

  • より中立的な水準への(金利)の動きが必要であることを示唆

  • 50bpsの連続的な利下げを期待しないように促している

  • 今回の50bps利下げは「後れを取らないための表れだ」と説明。「後れを取っているとは思っていない」とも。

  • 利下げについては、良いスタートを切った、満足していると発言

  • ここ最近で、FOMCメンバーの間でFRB政策金利見通しに大きな変化があった

  • (ボーマン理事の反対にもかかわらず)、FRBメンバー内には多くの共通認識があると強調。

  • FOMCメンバーは、ブラックアウト期間が始まる時点で25bpsトか50bpsかを決めていなかった

  • より適切な政策に調整する時が来た、これはその始まりだと発言

  • 基本的にFRBは引き締めを継続的に解除することを見込む。←利下げを継続するということを示唆

これからどうなる?大幅利下げなのにFOMC後の米国株価は下落…?!

FOMC後の9月19日の米国株価

FRBが経済懸念を理由に積極的な引き締めを行っているという疑惑を和らげようとアピールしたことが、逆に市場に裏目に出た可能性があります。(インフレの上振れリスクが大幅に低下したことを利下げの理由として示していた)

パウエル議長が「利下げの加速は期待すべきでない」と釘を刺したことを受け、FOMCの政策発表後に上昇していた株価が下落しました。

これは、WSJ報道による0.5%利下げの期待で昨日まで株価が上昇していたため、すでに0.5%が織り込まれていたことから「材料出尽くし」とも言えるでしょう。

しかし、ラッセル2000の中小型株は底堅く、プラスで引けました。今後の展開は明日、機関投資家が今日のFOMC内容をどのように消化するかにかかっています。

個人的には、実際の利下げが行われたことにより、高金利で打撃を受けていた銘柄やセクターにとっては企業投資が加速し、追い風になる可能性があると考えています。たとえば、建設や不動産セクターが挙げられます。今日の利下げを受け、30年固定住宅ローン金利が(7%→5.6%)下落しています。

短期的には、来月の雇用統計が注目されていますが、明日の市場の動き次第で、その雇用統計までの流れが見えてくるかもしれません。来週のコアPCEとGDPにも注目ですね。

FRB利下げで住宅ローンの大幅低下

利下げは、コロナの副作用脱出からの第一歩

コロナさようなら


ついに待望の利下げが実施されたことで、我々一般市民に大きな影響を与えていた高金利にも、ようやく雪解けの兆しが見えてきました。
車を買うにも、住宅を買うにも、太陽光パネルを設置するにも、ローンが7%くらいで何をするにも高くつきました。

コロナによるインフレが原因で利上げを余儀なくされていましたが、今ではインフレも落ち着きつつあり、金利の上昇に終止符が打たれることで、コロナの副作用から抜け出すための第一歩が踏み出されたと言えるでしょう。

これでようやく、少しは負担が軽減される兆しが見えます。FF金利3%はまだ遠く、バランスシート縮小ペースは緩和されたとはいえ縮小が続いているため、完全な緩和には至っていませんが、企業投資や住宅、耐久財(車や家電など)購入等を促す、程よい流動性を期待したいものです。


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