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イスラエルで起こったこと、何が問題なのか
全体未聞のハマスによる奇襲地上戦
イスラエルとハマスの間には常に緊張関係があるが、今回のハマスによる攻撃は警告なしのユダヤ教を祝日狙った奇襲だった。ちなみに10月6日は、中東戦争を引き起こした1973年50周年記念日の翌日でもある。
ハマス戦闘員が国境を突破してイスラエル側に直接侵入し、数十人の市民を殺害し、民間人を拉致して捕虜にしたのは前代未聞のことだ。
ちなみにハマスとは、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム武装組織であり、イスラエルを敵としている。米国からはテロ組織に指定されている。
フェンスを突き抜けてイスラエル側に
ガザ自治区とイスラエル地域には、柵のフェンスがあり普段は行き来ができないが、今回ハマス戦闘員はブルドーザーを使ってフェンス突き抜け、パラグライダーに乗って空からイスラエル地域に侵入している。
Hamas terrorists BULLDOZE Israeli border fence while shouts of "Allahu Akbar" can be heard. pic.twitter.com/85rGwWhG7I
— JLR© (@JLRINVESTIGATES) October 7, 2023
その境界線近くで運悪くライブイベントが行われていた。イベントの真っ最中に、境界を突破したバンに乗ったハマス兵士が突然現れ、電気を止めて乱射を始めたようだ。会場で踊っていた一般人は、雨のように銃弾が流れる中、逃げ回っていた。ハマス兵士は1部のライブ参加者を拉致し、ガザに連れて行った。やまるで地獄絵のようだったとオレンジの木に身を潜めて助かった目撃者が語っている。翌日、260人以上の遺体が現場で発見された。
BIGBREAKING: Saw these distressing scenes of civilians fleeing the Palestinian Hamas Attack at the music festival in southern Israel near Gaza border fence?
— Ashwini Shrivastava (@AshwiniSahaya) October 8, 2023
Authorities have confirmed the recovery of over 250 bodies at the site, initial report suggest that among the victims,… pic.twitter.com/iQHXBcSqVT
ハマスは何千発のロケット弾をイスラエルのテルアビブ等に向けて撃ったが、イスラエルが誇る「アイアンドーム」のような高機能な防空システムによりほとんどが撃ち落とされている。逆に高度な諜報機関モサドを持つイスラエルがここまで大きなハマスの計画を予測できなかったことが、驚くべきことでもある。
Additional footage being released from Gaza of rockets launched towards Tel Aviv from Gaza this evening. pic.twitter.com/jhcmkj8nbv
— Aurora Intel (@AuroraIntel) October 7, 2023
1日と経たないうちにイスラエルから報復が行われた。警告は行われたものの、ハマス関係とみられるビルが根こそぎ爆破されている。ガザでは、400人以上のパレスチナ人が死亡した模様。イスラエルがガザ自治区への電力を止めたため、現在医療現場は混乱している。
ここ数ヶ月は、イスラエルとサウジアラビアなどの関係正常化で、パレスチナは取り残された感じだった。この動きを阻止したいがための攻撃ともいえる。
Israel has pounded Gaza for a second straight night after formally declaring war against Hamas, in response to the Palestinian group’s unprecedented attack on Israel ⤵️ pic.twitter.com/e9Qk7Phcbn
— Al Jazeera English (@AJEnglish) October 9, 2023
どうやって武器を手に入れた
2005年、イスラエルがガザから撤退したことで、イランやシリアとの間に秘密の補給路を設けた。リビアやスーダンからシナイ半島を通ってガザに至る武器密輸ルートはもある。エジプト国境を越える必要があるが、賄賂を渡しているよう。トンネルなどを掘って、武器庫を強化している。
ハマスの武器のかなりの部分は海を経由して到着しており、武器が入った密封カプセルはガザの海岸から投下される。
また、ハマス自治区内でもロケット弾や迫撃砲の製造が行われているという。
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複雑なイスラエルの歴史を超簡単に、どうしてこんなことになったのか(エルサレムについては省きます)
2000年前
2000年ほど前には、ユダヤ人の王国がパレスチナにあった。しかし、ローマ帝国に滅ぼされ、パレスチナを追い出されて世界に散り散りになる。
↓
第一次世界大戦
自分の国がなかったユダヤ人だったが、第一次世界大戦が始まり、イギリスの(詐欺まがいの)提案により、ユダヤ人はパレスチナに「イスラエル国家」を作ることになる。イギリスは、パレスチナ人にも「独立国家をつくろう」と約束している。
↓
第二次世界大戦
第二次世界大戦が始まり、ドイツなどでユダヤ人が虐殺され、大量のユダヤ人がイスラエルに押し寄せてくる。
↓
正式にパレスチナの地をイスラエルと認めようという国連決議が採択される。イスラエルが半分、パレスチナが半分の土地と認められる。
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1963年
しかし、1963年にイスラエル軍は境界線を越えて、国際法上では認められていないところまでパレスチナを占領する。
↓
どんどんイスラエル人の入植が進み、パレスチナの抵抗も増える。
↓
1992年
湾岸戦争が始まり、パレスチナ問題が戦争にも利用されたことで、これはまずいとオスロ合意(パレスチナ自治区を認める和平案)に至る。
↓
2004年
しかし、パレスチナをまとめていたアラファト議長が2004年に亡くなったことで、パレスチナを収めていた組織がバラバラになり分裂する。
↓
武装勢力のハマスがパレスチナのガザ地区で台頭し、実質的に支配するようになる。またレバノンでは、ハマスと同じくイスラエルを敵視するヒズボラが勢力をつけ、レバノン国会議員もいることから、政治的にも力のある組織となっている。イスラエルを度々攻撃している。
↓
現在
ハマスがガザ地区からイスラエルに向けてロケット弾を撃ち、イスラエルが報復として空爆することの繰り返しが行われる。
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イスラエル軍の方が当然軍事的に優っているので、報復によるパレスチナ被害の方が大きい。(事前警告がある)誤爆も多々あり、人口密度の高いガザでは、民間人の多くが犠牲に。以下のグラフに詳細がある。
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これからの展開は?
長引きそう
ネタニヤフ首相は「長く困難な戦争になる」と発表している。イスラエル軍がガザ自治区を抑えようとする動きもみられている。
イスラエル全土に広がるかどうか
ヨルダン川西岸地区など、他の地域のパレスチナ人がハマス協力に呼びかけに応じるかどうかが注目されている。また、レバノンには、強力な過激派組織ヒズボラがいる。(ヒズボラもパレスチナの解放を訴えている)
ヒズボラはイスラエル北部に向けて多数のミサイルや砲弾を発射したようだが、死傷者は出ていない模様。
ハマス後ろにいるイランの関与次第
イランは、イスラエルのことをイスラム教の聖地でもあるエルサレムを奪った「イスラムの敵」と見なし、パレスチナ側についている。過激派ハマスやヒスボラにも資金や武器を提供し、訓練をサポートしている。
イランの治安当局者が今回のハマス作戦の立案に関わり、イラン当局者が攻撃を承認したとの報道もある。一方で、米政府高官は、イランが直接的な関与を行ったか判断するには時期尚早だと主張している。イランによる関与が明らかになり、イスラエルやアメリカの対応次第では、国際的な問題に発展する可能性や原油価格にも影響がでそうだ。
個人的な思い
10月6日に起こったことだけを挙げれば、ハマスが悪いということになるだろうが、この半世紀近くイスラエルもパレスチナに非道なことをたくさん行っている。学校を砲撃したり、入植地から長年住んでいたパレスチナ人を容赦無く追い払っている。
イスラエルに住んでいた時、イスラエル人側の友人たちは、徴兵は大変と不満を漏らしていたが、入植問題やパレスチナ人との確執については、触れたくなさそうだった。しかし、ガザでタクシーに乗った時に、アラブ人の運転手さんが何気に放った言葉は今でも覚えている。「イスラエル人は蛇みたいだ」と。
でも、もしイスラエル人として生まれてきたらイスラエル側のように疑問を持たずにいただろうし、ガザに生まれたら、ハマスを応援していたかもしれまない。
ライブイベント会場で拉致した遺体状態の女性をトラックの荷台に乗せて、奇声あげて興奮するハマス戦闘員たち。そして、同じライブイベント会場でイスラエル軍に射殺されたハマス戦闘員の遺体に尿をかけるイスラエル人たち。
今回、ハマスは人道的に一線を超えてしまっただろう。ハマスに対する憎しみを一気に増大させてしまった。しかし、遺体に尿をかける行為も感情に揺さぶられた狂気という意味では似たような行為なのかもしれない。
何かあるごとに、狂気が狂気を生み、憎しみの連鎖が続く。
明けない夜はないというが、それはいつになるだろう。
ウクライナの夜も明けてほしい。
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