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テレビディレクターのバチェロレッテ分析後編


後編のキーワードは「経済力」「財力」です。
ちゃんと仕事をして十二分にお金を稼げているのか、実家に潤沢な資産があるのかです。

バチェラーの場合、参加の女性を「金があるかないか」で判断することは皆無だったと思います。たとえ女が無職であろうとも、バチェラーに余裕で養えるだけの十分な経済力があるからです。
そもそも、金がない男はどんなに本人が魅力的であっても、バチェラーに抜擢されません。
彼を射止めたいと思う女性が集まらず玉の輿バトルとして成立しないというのもありますが、金のないバチェラーは「その人が好きかどうか」ということだけで女性を選べないからです。
「〇〇ちゃん、見た目も性格もすごく好きだ。だけど家事手伝いなんだよなぁ… なのに家事も苦手みたいだし…」とか現実的なことを考えるのは、番組でいうところの“真実の愛”ではないんですね。
そんなものを取っ払って純粋な気持ちで選ぶから、バチェラーのラグジュアリーな世界は成立しているし、見ている側もその「浮世離れ」に浸って楽しめるんです。

ところが、バチェロレッテはそうじゃない。
福田萌子さんは、モデル/スポーツトラベラーという職業をやってらっしゃいます。それなりに稼いでいるだろうけど、1の久保さんレベルじゃないと思います。2の小柳津さんよりも低いのではないでしょうか。それでも、バチェロレッテ以前の出演番組やSNSを見る限り結構ゴージャスな生活を送っているようです。

なぜか。答えは、簡単。ご実家がとても裕福だからですね。

構図は、3の友永さんと同じです。自分で病院を経営する医者の息子で、その理事をやりながら、自身も実体があるのかないのか分からん通販会社を一応経営している。前澤友作ほどじゃないけど家には金はうなるほどあるから、自由に使える。まぁ彼女も似たようなものでしょう。

自分自身がセレブなのではなく、セレブな家に属している。
そんな萌子さんと友永さんが決定的に違うのは、結婚した先に“親の金を自由に使えるかどうか”です。

おそらく友永さんは使えます。使えなきゃただのプー太郎なので詐欺なんですが、ご両親の感じを見ると「息子が幸せにさえなってくれれば何でもいい」というくらい過保護なので、資金援助は容易にしてくれるだろうし、彼もそれを使うことに抵抗はない。

けれど、福田萌子さんは使えません。
彼女自身が「自分の親から資金援助してもらうような男はノーサンキュー」だからです。あれだけ正論をぶちまくる彼女にとって、自分の財産を頼りにするような男など論外なんですね。嫁ごうが養子をとろうが、萌子のポリシーがそうさせない。

だから、どうしても最後の一人を選ぶときに、男性にお金があるのかどうかが判断の中に入ってきてしまうはずなんです。

最後の二人は…
・杉ちゃん(35)…食うには困っていない現代芸術家。実家は三重の一般人。
・黄皓(33)…自分で会社を経営する実業家。実家は中国のお金持ち。

とっくに結論は出ているんです。

しかし、だからこそ、最終回は見ものです。果たして“真実の愛”なるものが見えるのか?という目で見るとよいと思います。

萌子さんに愛を伝えている(愛している度)でいえば、スギちゃんがダントツです。他の参加者にはない、知的さ・ユニークさ・優しさで、心をつかんできました。
その逆に、黄皓は、全然愛が伝わっていないし、伝えてもいない。直前で落ちたローズにも足元にも及んでいません。けど、ずっと上位で残っている。ルックスの好みもあるんでしょうけど、ひとえにやっぱり何も成し遂げていない他の男どもにはないスペックに魅力があるってことなんだと思います。
「経済力」。結婚相手を選ぶ際に考慮されるべき、とてもなく現実的なファクターです。これまでのバチェラーで取っ払ってきたもの、取っ払ってきたからこそ面白かった「浮世の現実問題」が、どーんと立ちはだかってきます。
だから、終盤で萌子の方から「愛してくれているなら、それを確信させてくれ」とすがるように言ってしまう。「愛してくれるなら、あなたを選びます」ってことなんですけど、読み替えれば「愛を感じてこなかったけど、ここまで残してきた」ということです。「純粋な愛情で選ぶ」というバチェラーシリーズにおいて、本来こんな状況は存在してはいけないんです。
主人公にゾッコンじゃない参加者がいるのは厳密にいえばおかしいし、最終的に主人公が追う側になってしまっているんです。

バチェラー3においても、友永さんもはじめから岩間さんを追っていた。だけど、岩間さんに「好きかどうかわからない」発言された友永さんは、一度は彼女を選ばない選択をする。それは番組テーマ的に正しいんです。自分は好きだけど自分への愛がブレている女性に踏ん切りをつけて、一途に愛してくれる水田さんを選んだ。「純愛」だと視聴者は感動した。職業に貴賎なしと言いたいところですが、彼女が水商売経験であることも大きいかと思います。まさしく「シンデレラストーリー」です。
(それにも関わらず、とんでもないルール破りをしたものだから、その落差から友永さんは非難の嵐にさらされてしまいました。リアリティショーの世界の話なので、当事者をネットリンチするのはもちろん間違いなのですが、“真実の愛”なるものを期待する視聴者にとっては許すまじき行為だったということです)

要するに、最終回で黄皓が見ている側を納得させる・少なくとも萌子さんの心を突き動かすなんらかのアクションを起こさないまま、黄皓が選ばれたら「やっぱりお金か…」となってしまうんです。「真実の愛じゃねえ」ってなってしまう。人生の選択としては自由なのですが、番組的には納得感にかける結末になる。

黄皓が何もしないまま、もしくは何かしたけど上手くいかなかった結果、スギちゃんが選ばれれば「最後に愛は勝つ!真実の愛だ!」となります。
単にスギちゃんの愛が深かったから勝ったではなく、彼女がスギちゃんを選ぶということは「セレブな生活と決別する」ということを意味するからです(番組後ちゃんと結婚するとして)。
別にスギちゃんは食うや食わずの貧乏画家ではないので、一般的な暮らしはできると思います。けど、肉を食うためにだけに海外に行っちゃうような生活はできない。自分の育ってきた文脈を捨てて、自分を愛してくれる人を選ぶわけなので、彼女の覚悟=真実の愛もわかるし、スギちゃんの「逆シンデレラストーリー」として感動もできると思う。

もちろん黄皓が覚醒してくれれば、これまた「真実の愛」となります。ラブラブなセレブ夫婦として、どこまでも突き抜けてくれればいいと思います。個人的には「結局、リア充なセレブ同士の戯れだったか」と思ってしまうかもしれませんが(笑)

スギちゃんにも伸びしろは残されていないし、やれることは全部やってここまでたどり着いたので、最終回は黄皓の挙動のみに注目したいと思います。

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