【充電規格】 USB PD と QC3.0(超訳)
スマホの充電器を選ぶ際、よく目にするようになった「USB PD」と「QC3.0」ですが、いまいち違いが分からない。
「結局、どれを買えばいいの?」という疑問に答えるべく、ざっくり知りたい方に向けた記事です。
「USB PD」も「QC3.0」も急速充電できる USB規格です。
「USB PD」と「QC3.0」の名称について
スマートフォンにも Androidと iPhoneの2種類があるように、USBの急速充電規格は、大きく分けて「USB PD」と「QC3.0」の2種類です。
「USB PD」は、USB Power Delivery(USBパワーデリバリー)の略ですが、単に PDとも PD3.0 呼ばれます。
対して「QC3.0」は、Quick Charge 3.0(クイックチャージ3.0)の略ですが、単に QCとも Quick Chargeとも呼ばれます。
それぞれリビジョン(版)によって細かい違いはありますが、この記事(超訳)では触れません。
「USB PD」と「QC3.0」では、どちらが充電速度が速いか
「USB PD」と「QC3.0」のどちらが早く充電できるかは、スマホの仕様に依存します。
PDとQCのどちらの規格に対応しているか、また、サポートしている最大電力の仕様によって決まります。
充電器を買う際は、お使いのスマホの充電仕様を確認が必要です。
使われる USBケーブルの違いについて
PD と QCでは、充電器側のコネクタによって、使うケーブルが異なります。
PDは、USB Type-C(USBタイプC)のケーブルが使われます。
QCは、USB Type-A(USBタイプA)のケーブルが使われます。
スマホなどのデバイス側コネクタによっても、使うケーブルが異なります。
PDは、USB Type-C(USBタイプC)か Lightningケーブル、
QCは、USB Type-C(USBタイプC)か USB Micro Bケーブルが使われます。
つまり、PDに使うケーブルは、以下の2種類となります。
(充電器側)USB Type-C --- USB Type-C(デバイス側)
(充電器側)USB Type-C --- Lightningケーブル(デバイス側)
また、QCに使うケーブルは、以下の2種類となります。
(充電器側)USB Type-A --- USB Type-C(デバイス側)
(充電器側)USB Type-A --- USB Micro-B(デバイス側)
注意:サポートされているインターフェイスは、上記に限定されている訳ではありません。リビジョン(版)によって、使えるケーブルも異なります。
ケーブルは、充電器側とデバイス側のコネクターに合ったものを選びます。
使われる USBのコネクタ形状の違いについて
PD対応の充電器には、USBタイプCのケーブルが挿さるコネクタがあり、「USB-C」や「PD」と印字されているものがあります。
ケーブルは、上下の区別がないため、挿し間違える心配はありません。
QC対応の充電器には、USBタイプAのケーブルが挿さるコネクタがあり、「USB-A」、「QC」または「QC3.0」と印字されているものがあります。
なお、「USB-C」だからといって、PD対応とは限りません。
同様に、「USB-A」だからといって、QC対応とは限りません。
スマホメーカーごとのサポート状況について
Apple製品は、QC非対応です。iPhone8以降、PDに対応しており、USB Type-C か Lightningケーブルでデバイス側に接続します。
ソニーモバイル Xperiaや SAMSUNG Galaxyなど、Androidスマートフォンでは、Quick Chargeに対応している機種は多くあります。
OPPO Renoでは、PDとQCの両対応のモデルもありますし、VOOCといった独自規格のモデルもあります。
Xiaomi Redmi Noteなどでは、独自方式で超高速充電を実現しています。
・67W Turbo Charge(ターボチャージ)
・120W Xiaomi HyperCharge(ハイパーチャージ)
「USB PD」の仕様について
USB PDの電源は、ワット数で表記されます。
そして、表記ワット数によって、出力する電圧・電流が決まります。
つまり、PD対応の充電器を選ぶ際は、電圧・電流の値を気にせず、ワット数でのみ選択すればよい訳です。
ちなみにPDでは、5V、9V、15V、20Vの4種類の電圧を使います。
20V以外の出力電圧では、最大出力電流は3Aまでとなっています。
なお、60Wを超える電力を流す場合は、電力制御を行う eMarker(イーマーカー)というチップの入った USB Type-Cの5Aケーブルを使います。
60W以下の電力を流す場合は、USB Type-Cの3Aケーブルを使います。
独自の充電方式のスマホで使う充電器について
充電に独自方式を採用しているスマホは、純正品の充電器やケーブルを選ぶことで充電品質が保証されますが、汎用品でも高速充電ができるケースがあります。
たとえば、USB PD対応の充電器では、出力する電圧が5V、9V、15V、20Vの4種類と決まっています。
独自方式のスマホ充電器に記載されている仕様(電圧と電流の組み合わせ)を確認し、USB PDの基本仕様と同じあれば、汎用品(市販のUSB PD対応の充電器)でも高速充電できたりします。
それは、メーカーが独自の充電仕様を持っていても、基本となる技術を USB PDや QC3.0を使っていたり、サポートしていたりするからです。
注意:スマホの充電性能は、機種によって異なるため、保証はありません。
それでは、具体的に説明します。
USB PD対応の充電器では、以下の組み合わせで電力供給します。
では、独自方式の Xiaomi Redmi Note 11Sの充電器を確認します。
電力供給なので、Output(出力)の仕様を見てみましょう。
Output(出力)の仕様を見ると、上記のようになっていました。
太字にした部分は、USB PDの基本仕様と重なる部分です。
Xiaomi Redmi Note 11Sの純正充電器の代わりに、15Wまたは27Wの USB PD対応の充電器(汎用品)を使っても、15Wまたは27Wで急速充電できるということです。
なお、この充電器(MDY-11-EZ)は、最大33Wの電力を供給する性能を持っており、Xiaomi Redmi Note 11Sに対して、独自方式の33W Turbo Charge(ターボチャージ)で充電か可能です。
仮に45W、60W、100W対応のUSB PD対応の充電器(汎用品)を持っていたとしても、「33W:11V⎓3A」に対応していなければ、33Wの電力供給ができません。
純正品でなくてもいい方は、このようにして、市販の商品から自分のスマホで使えそうな充電器を探してみるのもいいかも知れません。
「QC3.0」の仕様について
QC3.0は、電圧を3.6V~20Vの範囲で電圧値を200mV刻みで変動させ、接続したデバイスの充電に最適な電圧に調節することで、急速充電を行います。
最大出力は、36Wとも60Wとも言われていますが、定かではありません。
(Qualcomm社からQC規格に関する仕様書は、公開されていないようです)
少し細かい話をすると、QC3.0対応の充電器は、スマホなどのデバイスの出力電圧の要求に応じて、Class A(5/9/12V)または Class B(5/9/12/20V)の電圧を出します。
Class Aの最大電圧が12Vなので、3Aの電流で36Wの電流が供給できる、または、Class Bの最大電圧が20Vなので、3Aの電流で60Wの電流が供給できる、という仮定で最大出力の計算がされているのだと考えられます。
(Class A)36W:12V⎓3A
(Class B)60W:20V⎓3A
しかし、QC3.0で使われる電流は、「2.6A」と「4.6A」のいずれかのようなので、上記「3A」という値も大雑把な数字である可能性が高いと思われます。
少なくとも、QC3.0対応のケーブルとしては、5A(アンペア)以上のケーブルを選んでおくと良いでしょう。
ちなみに、USB PDは、ケーブルが3A(アンペア)でも、60W(20V⎓3A)まで急速充電できるので、ケーブル価格を抑えることができます。
なお、2024年執筆現在、QC3.0対応の充電器(5機種)を調査したところ、全てが USB PDにも対応しており、QC3.0に係る仕様を確認したところ、全て最大電力が「18W」になっていました。
なお、電流の仕様は、以下のようになっていました。
「QC出力時:3.6-6V時は3A、6-9V時は2A、9-12V時は1.5A」
おそらく、電力出力20W以下の充電器は、PD/QC3.0両対応の製品が多いのだと思います。
よって、ノートパソコンなど多くの電力を必要とするデバイスでない限り、上位規格については、あまり気にしなくても良いと思います。
参考までに、その他の QC規格についての情報もまとめておきます。
なお、これ以上、互換性について細かい話をしすると、超訳ではなくなるため、気になる方は、Qualcomm(クアルコム)社のウェブサイトをご覧ください。
USB PD 3.0のオプション規格「PPS」について
PD対応の充電器を選ぶ際、最近では「PPS規格対応」という言葉を目にすることが増えてきました。「PPS」とは、USB PD 3.0のオプション規格です。
Programmable Power Supplyの略で、プログラマブル電源と訳されたりします。「PPS」が最もポピュラーなので、本記事でもそう呼ぶことにします。
PPSの機能は、前述の QC3.0の仕様とやや似ており、電圧20mV、電流50mA刻みで変動させ、接続したデバイスの充電に最適な電圧値、電流値を調節することができます。
このように自動調整することで、充電速度を上げています。また、高速充電器に付いて回る問題として、熱の発生がありますが、PPS対応の充電器であれば、エネルギー効率が高く、余計な熱の発生を抑えることができます。
新規格 USB PD 3.1について
2024年執筆現在、対応しているデバイスが少ないので取り上げていませんが、軽く触れます。PD3.1は、EPR(Extend Power Range)と呼ばれる拡張電力範囲が定義され、最大240Wまで出力可能です。なお、100Wを超える電力量で、28V、36V、48Vの3種類の電圧を使います。
電流は、出力ワット数(供給される電力量)に応じて計算されますが、使用するケーブルは、5Aまでの電流を流せるものになります。
なお、前述のPPSと似た機能として、AVS(Adjustable Voltage Supply)と呼ばれる電圧調整機能があり、電圧を100mV刻みで変動させることができます。
AVSの動作電流は、供給できる電力量と動作電圧によって変動します。使用するケーブルは、5Aまでの電流をものがあれば事足ります。
ちなみに EPRという拡張電力範囲が定義づけるされたことで、以下、従来の PD 3.0の電源仕様は、SPR (Standard Power Range)と呼ばれるようになりました。
PD3.1は、EPR(Extend Power Range)だけでなく、100W以下の電力量にてSPRを使うことができます。
USBケーブルの見分け方について
本タイトルの趣旨から外れるので、今回は割愛しますが、別の記事で紹介したいと思います。ご興味のある方は、フォローをしてお待ちください。
なお、この記事をいいと思ってくれた方は、
「賢く選ぶモバイルバッテリーの豆知識」、
「時短にも役立つスマホ充電の豆知識」もあわせてお読みください。
以上