室内を加湿することの弊害
だんだん寒くなってきましたね。
外が寒くなると室内は乾燥します。
特に今年は加湿しましょうと言われることが多くなっています。
でも、今の日本の既存住宅で必要以上に加湿すると、問題が発生することはあまり指摘されていません。
では、なぜ冬は室内が乾燥するのでしょうか。
たとえば外気の温度が4℃で相対湿度が50%だとします。
この空気が室内に入ると、暖房により空気が暖められ温度が上がります。
相対湿度は温度によって変化します。
室温が20℃だとすると、外から入った空気は相対湿度が17%になります。
人が生活していると、炊事・洗濯などで水蒸気が発生します。
また、人も水蒸気を発生します。
そのため、実際には17%よりも高くなります。
住宅内の水蒸気発生量が0.44kg/hでだとすると、湿度は34%まで上がりますが、それでも乾燥している状態です。
これが冬乾燥する理由です。
一般的に相対湿度は50%前後がいいと言われています。
相対湿度を50%にするためには、上記の条件ですと水蒸気発生量が0.85kg/h必要です。
水蒸気発生量が不足している分は加湿器などを使用して相対湿度を上げる必要があります。
このとき加湿器の水蒸気発生量は0.85 - 0.44 = 0.41kg/hが必要です。
一般的な加湿器の水蒸気発生量がどのくらいあるのかわかりませんが、仮に加湿器によって50%の湿度を維持できるとしましょう。
つまり、室内は温度が20℃で相対湿度が50%とします。
温度が20℃で相対湿度が50%の空気の露点温度は9.2℃です。
つまり、室内で9.2℃以下になるところがあれば、そこで結露します。
日本の多くの既存住宅は、住宅内にけっこうな温度差があります。
たとえば、玄関や風呂場、暖房していない部屋の押し入れや収納の温度は低くなります。
また、断熱性能が不十分な住宅は上下温度差がが大きくなりますので、床面に近いところは温度が低くなります。
さらに、隅角部(外壁や床(または天井)が交差する角の部分)は3次元で熱が逃げるのでさらに温度が下がりやすくなります。
窓表面とその周辺(特に下側)の温度も低くなります。
既存住宅に多く使われている窓は断熱性能が低いため、窓の近くの空気は温度が下がりやすく、その周辺(特に床に近い部分)は結露しやすくなります。
このようなことから、住宅内には露点温度以下になる場所がいたる所にあり、そこは結露しやすくなります。
もう一つ結露しやすいのは外壁・天井・床の中です。
気密性能が低い住宅の場合、室内の空気は外壁などを通るときに冷やされて内部で結露します。
これを内部結露(壁内結露)と言います。
結露が発生するとその周辺が濡れます。
濡れるとその結露水が蒸発することで、相対湿度が高い状態が保たれます。
相対湿度が高い状態が保たれると、カビが発生しやすくなります。
一般的にカビは温度が高く湿度が高くなると発生すると思われていますが、実際には5℃以上あればカビは発生します。
梅雨時期にカビが多く発生するのは、冬に結露で発生したカビが、温度が高くなることで成長し表面化しているという一面もあります。
また、木材が濡れると腐朽しやすくなります。
特に壁内結露の場合は乾きづらく、濡れた状態が長く続くため注意が必要です。
グラスウールなどの断熱材は、濡れると断熱性能が低下します。
このようにカビ以外にも結露の弊害があります。
このようなことから、日本の一般的な住宅で必要以上に加湿すると、弊害があるということは覚えておきましょう。
この当たりは専門家でも指摘している人が少ないので注意が必要です。
相対湿度を50%くらいまで上げたいのであれば、住宅の断熱性能を高めなければなりません。
断熱性能を高くすれば、住宅内の温度差が少なくなり、冬の結露を防ぐことができます。
ただし、リフォームによる断熱改修は非常にお金がかかりますので、新築住宅を建てる場合は、ぜひ高気密高断熱住宅をご検討ください。
なお、結露を防ぐ場合は、全室暖房、24時間暖房も検討しましょう。
全室暖房、24時間暖房が無駄と考えている方は、以下をご参照ください。
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