気密測定のエラー
気密測定をすると測定エラーになることがあります。
気密測定時の主なエラーとしては三つあります。
隙間特性値(n値)エラー
気密測定した場合、理論的には隙間特性値(n値)は1~2の間に入ります。
そのため、n値がこの範囲外の場合には測定に何らかの問題があったことになるため、再測定が必要になります。
n値はすき間の状態を表す数値です。
一般的にはすき間が小さいと1に近づき、穴が大きくなると2に近づくと言われています。
厳密に言いますと、n値が1に近ければすき間から入る空気が層流になり、2に近ければ乱流になるということです。
そのため、n値が2に近いとすき間からの空気が乱流になっていて、どこかに大きな穴があいていると判断されます。
なお、大きな穴の可能性があるのは、すき間が大きな住宅での話です。
気密性能が非常に高い(すき間が小さい)住宅(高気密住宅)では、n値が2に近いからといって大きな穴があいている訳ではありません。
最近相当隙間面積(C値)が小さいのにn値が大きいのはおかしいというクレームが増えてきているらしいのですが、実際には気密性能が高い住宅でも条件により2に近くなることがあります。
重要なのはn値が1~2の範囲に入っているかであり、n値だけですき間の大きさを判断するのは正しくありません。
すき間の大きさはn値ではなく、あくまでも総相当隙間面積(αA)、または相当隙間面積(C値)で判断してください
詳しくは以下をご参照ください
n値が範囲に入らない原因として考えられるのは、気密施工をし忘れている場所がある場合、どこかを閉め忘れている場合、風などの影響でデータがばらついている場合です。
とりあえず、気密施工に問題ないか、閉め忘れている場所はないかを確認してください。
高気密住宅では特に風の影響が大きくなり、エラーが出やすくなります。
高気密住宅ではすき間が少ないため、送風機を少し回すだけで圧力差が上がります。
そうしますと通気量が少ない状態で測定することになります。
通気量が少ないということは通気量を測定する整流筒に流れる風が遅くなるということです。
そうしますと、外のわずかな風や室内で人が動いただけでも測定値に影響を与えます。
そのため、高気密住宅ではデータのばらつきやすくなり、n値が範囲に入らないことがあります。
風の影響でデータがばらつく場合は、風が収まってから測定しなければなりませんが、現場では都合よく風がないときに測定できるとはかぎりません。
このような場合は、自動測定ではなく手動測定で圧力差を高くして測定してください。
通常気密測定は圧力差が20~50Pa間で測定します。
これを圧力差を30~70Pa間、または40~80Pa間、または50~90Pa間で測定します。
圧力差が高くなる分通気量が増えますので、多少風などの影響を受けづらくなります。
また、測定点を増やすのも一つの方法です。
たとえば、50~90Pa間で10点測定するなどです。
測定点が増えると、風で1点ずれても全体のずれは平均化される可能性があります。
決定係数エラー
決定係数はデータのばらつきを表す数値です。
ばらつきがなければ1に、ばらつきが大きいほど数値は小さくなります。
2017年末のJIS改正で決定係数が0.98未満の場合は再測定となり、2018年の気密測定技能者テキストから決定係数の説明が追加されました。
そのため、新しい気密測定器では決定係数が0.98未満の場合はエラーになります。
決定係数エラーの主な原因は風です。
n値エラー同様に「高気密住宅」ほど風の影響を受けやすく、エラーになる頻度が高くなります。
対処方法としては、n値エラー同様に圧力差を高くして測定するか、風のないタイミングを見計らって何回か測定するということになります。
ばらつきが少ない風がない日に測定するのは理想ですが、現場の状況を考えると気密測定できる日程は限られており、都合よく条件のいい日に測定できるとはかぎりません。
気密測定のために住宅の完成を遅らせるわけにはいきませんので、決定係数をチェックするようになって現場の測定は苦労されているようです。
あと、気密測定の最中に気密測定器の近くを歩くと、これもデータのばらつきの原因になります。
測定中は測定者以外は気密測定器から離れるようにしてください。
また、室内で他の作業をしている場合、測定中は一旦作業を中断してください。
圧力差が上がらないエラー
気密測定する場合は、基本的には圧力差が50Paまで上がらなくてはなりません。
昔の気密性能が悪い住宅や大きな建物ではすき間が大きくなりますので、送風機を最大で回しても圧力差が50Paまで上がらないことがあります。
このような住宅では一般的な気密測定器では測定することができません
そのため、特殊な測定器や測定方法が必要になります。