省エネ基準計算は重要な設計ツール
省エネ性能の説明義務制度などで注目を集めている省エネ基準の計算ですが、本来は外皮平均熱貫流率(UA値)、平均日射熱取得率(ηA値)、一次エネルギー消費量の省エネ基準計算は、住宅の省エネ性能を判断するための設計ツールです。
外皮平均熱貫流率は住宅の断熱性能を、冷房期の平均日射熱取得率は冷房時の日射遮蔽性能を、暖房期の平均日射熱取得率は暖房時の日射取得性能を、一次エネルギー消費量は設備も含めた住宅全体の省エネ性能を判断するためのものです。
省エネ基準の計算を行うことで、断熱性能が不足しているから断熱材や窓を変更しよう、夏の日射が入って冷房費が増えそうだから庇を設置しよう、設備の省エネ性能が低いから省エネ性能が高い設備に変更しようというような判断ができます。
残念ながら従来省エネ基準の計算をしている建築士はあまり多くありませんでした。
これは住宅の省エネ性や快適性などに関心がある業者や施主が少なかったことが原因ではないかと思います。
また、昔は高気密高断熱住宅を高価(贅沢品)と考えている人も多かったように思います。
高気密高断熱住宅が徐々に普及するにつれて、窓の性能が高くなってきたり、施工方法が開発されたりして、最近はコストや手間が抑えられるようになってきており、すでに贅沢品とは言えなくなってきています。
省エネ基準計算は面倒で計算に時間がかかりますが、住宅がどのくらいの省エネ性能なのかを判断できれば、費用対効果を考慮して設計することが可能になります。
長年省エネ基準計算は面倒で難しく敬遠されてきましたが、今後は説明義務制度で計算する人が増えてきますので、設計ツールとして活用されることを期待しています。
単に省エネ基準の基準値をクリアすることを目的とするのではなく、省エネ計算により住宅の性能を知ることで、よりよい設計ができるはずです。
なお、モデル住宅法や簡易計算は面積が考慮できないなど、簡易な計算方法なので設計ツールとしては使用できません。
設計ツールとして使用するためには精緻な標準計算が必要です。