換気量を測定する方法
今まで投稿した記事を見ますと換気関係の記事のアクセス数が増えているようです。
以前に住宅の換気システムをチェックするという記事を書きました。
これは風量測定器による換気システムの換気量を測定する内容でした。
最近テレビではスモークを使用した換気測定しているのを目にします。
これはテレビなので視覚的にわかりやすいということで行われているのかもしれません。
スモークを使用した測定のいいところは空気の流れを見える化できることです。
ただ、長時間の測定には向きませんし、換気量が少ない場合は変化が少なくわかりづらいという欠点があります。
どのくらい興味ある方いるかわからなかったので、今まで記事にしなかったのですが、こういう時期なのでもうちょっと専門的な換気の測定方法も書いておきたいと思います。
ちょっとマニアックな話になるので、興味ない方はスルーしてください。
研究目的で換気量を測定する場合は、トレーサーガスを使用した測定を行います。
トレーサーガスにはいくつかの種類があります。
以前ですとSF6というガスが使用されていましたが、これはオゾン層を破壊するということで現在は入手が難しくなっているようです。
入手しやすいからかCO2(二酸化炭素)をトレーサーガスとして使用する実験が多いように思います。
トレーサーガスを使用した換気量の原理は単純です。
ガスを放出すると濃度が高くなります。
換気されると濃度が下がります。
基本的にはガスの放出量と一定時間後の濃度の関係から換気量を求めます。
換気量の測定方法には、減衰法、一定発生法、一定濃度法などいくつかの方法がありますが、一番簡単なCO2による減衰法を例にご説明します。
CO2濃度計で測定しながら、CO2を一定の濃度になるまで部屋に放出します。
たとえば、5000ppmまで濃度を上げるとします。
予定の濃度まで上昇したらガスの放出を止めます。
後は一定間隔でCO2の濃度を測定します。
換気量が多いと早くCO2の濃度が下がり、換気量が少ないとゆっくり濃度が下がります。
この濃度と時間の関係から計算して換気量を計算します。
減衰法は機材が少なくて済むので便利な方法なのですが、欠点としては短時間の測定しかできません。
短時間の測定ですと、換気量の変化を見ることはできませんし、風の影響や外気のCO2濃度の変化によるを考慮するのが難しくなります。
(意外と知らない方が多いのですが、外気のCO2濃度もけっこう変化します)
そこで、長期の測定を行う場合は、一定発生法、一定濃度法が行われます。
一定発生法は一定の放出量でガスを放出して濃度を測定し、放出量と濃度から換気量を計算します。
一定濃度法は一定濃度になるように放出量を調整し、放出量と濃度から換気量を計算します。
濃度が安定し定常状態になることから、一定濃度法の方が精度は高くなりますが、濃度をコントロールするためにはコンピュータが必要になりますので、測定は大がかりになります。
風量測定器を使用した換気量測定は、あくまでも換気システムの換気量です。
そのため、すき間に抜けていく分の換気などを考慮することはできません。
その点トレーサーガスを使用した換気量測定は、すき間から逃げていく換気(漏気)や、すき間から入ってくる換気も考慮できるため、より正確な換気量の測定が可能になります。