超高気密住宅は気密測定が難しい?
ちょっと専門的な話でわかりづらいと思いますが、気密性能が非常に高い住宅(すき間が非常に小さい住宅)では気密測定が難しいという話をします。
気密測定は圧力差と通気量の関係から求める
気密測定の原理は、送風機で住宅内の空気を外に出して減圧(減圧法)し、その時の圧力差と外に出した風量(通気量)の関係から、住宅のすき間の大きさ(総相当隙間面積(αA))を計算で求めます。
(計算方法はJISで決められています)
αAを延床面積で割ったのがC値(相当隙間面積)です。
なぜすき間が小さいと測定が難しいか
まず、気密測定はすき間がないと測定できません。
これはすき間がないと送風機をいくら回しても空気が出て行かないので、通気量がゼロのままだからです。
そのため、気密測定するためにはある程度のすき間があることが前提になります。
気密性能が高い住宅では送風機を少し回すだけで圧力差が上がります。
送風機が少ししか回っていないため、通気量が少ない状態での測定になります。
通気量が少ないということは送風機内に流れる風が遅くなり、わずかな風や測定器周りで人が動いただけでも通気量がばらつきます。
そのため、気密性能が非常に高い住宅ではデータのばらつきが大きくなり、測定エラーになりやすくなります。
測定器には測定範囲がある
気密測定器で通気量を測定する方法はいくつかありますが、国産の気密測定器の多くはピトー管を使用しています。
整流筒という装置の中にピトー管を設置することで精度の高い測定ができます。
ただ、ピトー管で測定するためには、風量がそのピトー管の測定範囲内になければなりません。
住宅用に使用されているピトー管の測定範囲はおおよそ100~2000m3/hです。
(実際の測定範囲は整流筒やピトー管によって異なります)
つまり、通気量が100m3/h未満の場合は、測定範囲から外れてしまうため通気量の測定が難しくなります。
環境によっては通気量が上がらなかったり、風などの影響でマイナスになったりすることもあります。
そのため超高気密な住宅では測定が難しいのです。
超高気密住宅の測定をするためには
理論的には整流筒の管径を細くすれば、整流筒に流れる風速が速くなり超高気密でも測定できるはずです。
実際気密測定器のオプションとして、標準よりも細い整流筒(100φ)が販売されています。
ただ、細くしすぎるとピトー管での測定は難しくなるため、オリフィスなどの別の方法で測定しなければなりません。
送風機もプロペラ式では安定性が悪くなるため、シロッコファンなどの別の送風機が必要です。
そうしますと、通常の住宅用の気密測定器と超高気密用の気密測定器を別々に用意する必要があり、気密測定が大がかりになる上費用もかかります。
また、住宅は実験室内にあるのではなく、あくまでも外にあるわけですから、完全に風の影響をなくすことはできません。
どんな測定方法でも風の影響は受けてしまいます。
このように、超高気密住宅の気密測定は非常に難しく今後の検討課題になっています。