オランダで骨を折りまして4【ドイツ療養〜帰国編】
(前回のお話↑の続き)
ベッドから起き上がり脚を地面に対して垂直にすると、足首を引きちぎられそうな痛みが数秒続く。
私はこれを勝手に「重力の痛み」と呼んでいた。
重力の痛みには鎮痛剤も効果が無いため、体を起こすたび痛みに耐えるしか無い。
『ククク…これがッ…重力に魂を惹かれる痛みッ!!』
固まったまま中二病的なセリフを脳内で呟く。
回避不可能な痛みに耐えるため、私はアホになった。
ちなみにこの痛みは2週間以上続くことになる。
ドイツへ電車移動の日(術後4日目)
ドイツへ移動する電車に乗る前に、アムステルダム中央駅でオランダ在住Hさんとランチをすることに。
オランダらしいものを食べてもらいたいとのことで、駅のすぐ側の有名なダッチパンケーキのお店を紹介してもらう。
サーモン&クリーチーズ、アップルシナモン、ネギと…何か(忘れた)だっと思う。クレープのように薄くて、食べやすくてどれも美味しい!
ネギはお好み焼き感があってまた良い。
また身体が拒絶してきて少ししか入らなかったのが悔やまれるが。
電車に乗るためHさんとお別れする。
ありがとう。今度は日本で!!
駅からICEという新幹線的な電車に乗り込む。
一等車両の指定席を選んだので広々だし、スーツケース置き場やフットレストもあったので快適だ。
しばらく走ると駅でも何でも無いところで止まり、車掌さんが切符(といってもアプリのQRコード)を確認に来る。
もしや…と思いGoogle Mapを開く。
国境だ!!
外を見ても特に何かあるわけではなく、草原が広がっていて牛達がのほほんとしてた。
あの牛はどちらの国の子なんだろう…
スマホの電波は自動的にドイツの会社に切り替わっている。
どういう仕組みなんだろう…GPS?
島国で暮らす私にはなかなか味わえない感覚に興奮する。
4時間半くらいかけてフランクフルト空港駅に到着。
ホームではドイツ在住Tさんの旦那さんが待ってくれていた。
皆んなで久しぶりの再開を喜ぶ。
ここまでの事を話しながら車でTさん宅まで送迎してもらう。
Tさん宅に着くとTさんと子供達が迎えてくれた。子供達はそろそろおネムの時間だが、まだ起きててくれたようだ。久しぶりの再開を皆んなで喜ぶ。特に娘さんは松葉杖で動く様に興味津々のご様子だった。
軽くルームツアーをした後に、夕飯をご馳走になることに。
お米を食べたいとリクエストしていたので、カレーを作っていてくれた。
美味しい!米!!コメッッッ!!!
おこめはおいしい。
そう、日本人ならね。
久しぶりのお米に感動する。
人生で一番美味しいカレーだったと思う。
ちなみに「イタリア産コシヒカリ」とのこと。
語呂が良過ぎて声に出したいワードだ。
ドイツ療養(術後5〜9日目)
1日目
子供達は保育園に行き、Tさん夫妻とTさんの住む都市「マインツ」を観光。
久しぶりのマインツ大聖堂。
『早く脚が治りますように!』
あまり神頼みしないけど珍しくちゃんと祈る。
大聖堂の広場ではマーケットが開かれていた。
Tさんとひでまるがお買い物をしてる間、Tさん夫と私はカフェでのんびりさせてもらうことに。
とても天気が良くてお散歩日和。
ひでまるは途中で見つけた陶器のお店に夢中なご様子。
行きと帰りに2回寄ったが買うのは諦めたらしい。あまり見たことの無い珍しいデザインが多くてカワイイ。
夜はマーケットで購入したドイツの春の名物「シュパーゲル(白アスパラガス)」を料理してくれた。
日本では見たことの無いサイズの白アスパラガス。味は意外にも白菜のようで、食感もとろけるような柔らかさだ。
でも最後はちゃんとアスパラガス感がある。
昔から食べたかったけど春にしか出回らないものなので食べる機会が無かった。
やっと食べられて2人とも感激した。
2日目
Tさんファミリーはスペインへ行くので、ひでまるは家の設備について一通り教わる。
家はとても広くどこにも段差が無い。完全にバリアフリー仕様で療養には最高の環境だ。
ファミリーがスペインから帰国する日、私達はオランダに移動するので行き違いになる。
今日が最後なのでお別れをして見送った。
ありがとう。今度は日本で!!
そのときまでに歩けるようになっておきます。
3日目
海外2拠点生活(要介護老人付き)みたいな生活が始まった。
今日からシャワーを浴びられるので、怖くて放置していた傷口のガーゼを剥がす。
初めて全部の傷口を観察する。
『人間の皮ってこんな感じに縫うんだー(棒)』
数カ所余った糸が飛び出している。
しかも輪っか状になってる。
『どこかに引っ掛かったらやばそうだな…』
鼻毛切りバサミを消毒した後、淡々とセルフカットする。ヨーロッパスタイルに慣れ始める私。
ひでまるに補助してもらいシャワーを浴びる。
透明なシャワーブースでシャワーを浴びる私。
少し離れて椅子に座り待機するひでまる。
『すごく囚人と刑務官ぽいです…』
独りで妄想しながら1週間ぶりのシャワーを堪能する。
全身拭いているとはいえ、頭を洗ったときの爽快感は格別だった。
4日目
やっと浮腫と腫れが引き始める。
足の指だけは限りなく元のサイズに近くなった。
この日は散歩がてら近くのレーベ(REWE)というスーパーに買い出しに行くことに。
日本だと成城石井的なポジションで、ちょっと意識高くてお高めでオーガニック食材とか置いてある感じた。
お店のロゴが入ったグッズが可愛いので、2人ともお気に入りのスーパーだ。ひでまるはキットカットが丸ごと入ったアイスを見付けてご満悦の様子だった。
5日目
この日は近くのIKEAに行くことに。
入り口で車椅子を貸してもらう。
初車椅子!
なんて快適!!
ひでまるに押して貰い、イケアの中を駆け巡る。
すごく快適だけどなんか老後感が凄い!
一通り回り少し買い物もして、ホットドッグと甘い物を食べた。
尚、ぬいぐるみは日本ではサメ推しだかドイツではタコ推しだった。どこに行ってもタコが居るのが積んである。国によって違うのかな?
オランダへ電車移動の日(術後10日目)
オランダに前泊するためドイツを後にする。
ありがとうドイツ!また必ず来ます。
オランダへは行きと同様にICEを利用。
5時間ほどかけてアルステルダム中央駅へ移動した。
駅にはショップやレストランが入っているため、夕飯を食べてお土産を物色してからホテルに行くことに。
ここに来てひでまるがスーツケースに私を乗せて移動する方法を編み出す。
大きなアジア人男性が
小さいアジア人男性をスーツケースに乗せて
楽しそうに駅を駆け抜けて行く…
すれ違う人々に異形の目で見られる。
想定内だ。
もはや明日帰国するだけとなった私達は無敵だった。
帰国の日(術後11〜12日目)
Uberで空港へ向かう。
Uberのお兄さんはめちゃくちゃ良い人で、日本大好きで車もプリウスだ。
ずっとトヨタと「ドクター・ナカムラ」について熱く語る。
後で調べたところ中村哲さんというアフガニスタンで活動していた医師の事だったらしい。
海外でこんなに愛されている日本人が居ることを初めて知り衝撃だった。
空港では事前に車椅子サポートを予約していたため、専用のチェックインカウンターへ通される。
車椅子を借り、専属のアシスタントに案内される。
出国審査等も全て専用の窓口を案内され、スイスイ進んで行く。
なぜか保安検査だけは入念にチェックされる。
多分ギブスにイケナイモノを仕込んでるパターンとかがあるからだろう。
入念にボディチェックされる。
患部に触れられる。
「Oh...」
ちゃんと英語でオーバー気味にリアクションしてみた。
驚いた検査員のお兄さんにオランダ初日に骨折したことを説明する。
検査ニキ「オランダ最高だろ?元気になったらまた来いよ!(意訳)」
最後の最後までオランダ人は皆んな明るかった。
優先搭乗になるためゲートで待っていると名前を呼ばれる。
車椅子は飛行機の入り口までで、機内は松葉杖移動になる。誰も居ないので楽々だ。
無事自席に到着していよいよ出発。
ありがとうオランダ&ドイツ。
フライト中は浮腫との戦いだった。
極力脚を上げるが直ぐにパンパンになりはち切れそうになる。
通路側に脚を上げる。
ひでまる側に脚を上げる。
時間が来たら薬を飲む。
寝たい。
眠れない。
寝ても直ぐに起きる。
音楽や映画で紛らわす。
やっぱつらい…
ひたすら繰り返す。
長い戦いの末、日本に到着。
飛行機の出口に私の名前が入ったボードを持っている男性が居る。
車椅子サポートの人らしい。
ちょっと恥ずかしいけど助かります!
入国も専用ルートでスイスイ進む。
早すぎて預け荷物がなかなか出てこないレベルだ。
車椅子もどこまでも押してくれる。
サポートニキ「帰りはどうします〜?電車?バス?」
新宿までバスに乗ることに。
バスの切符売り場へ車椅子を押してくれる。
サポートニキ「こちらが切符売り場でーす!」
ありがとう。ここでお別れかな?
切符を購入する。
サポートニキ「じゃあバス停行きますねー!」
サポートニキ「トイレ大丈夫ですかー?」
まだ押してくれるの??
サポートニキ「こちらがバス停でーす!」
結局バス停まで押してくれた。
恐るべき日本スタイル。
バスの列に並んでいると、何も言ってないのに優先で乗車させてくれることに。
座席も優先席に座らせてくれた。
恐るべき日本スタイル。
優先シートは最前列で足上げ放題で快適だった。
新宿からはタクシーで移動する。
どんどん見慣れた風景になって行く。
どんどん家が近づいて来る。
家に帰れる!
私のマンションが見えてくる!
かえれるっ!!
帰宅うううううううううううッ!!!
喜びで全てを投げ出してそのまま寝るかと思ったら、大量の植物達を見て我に帰る。
2人で一通りチェック。
その後はあまり覚えてない。
とりあえずこの旅で一番安らかに眠れたのは間違いない。
やっぱり自宅サイコー!!
そして私をサポート、心配してくれた全ての人に感謝を。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
旅行の全行程は以上になります。
また海外傷病保険や治療費、療養について、有益そうな情報あればまとめたいと思います。