物書庵初心週記帖(28号)「突然の辞任劇と椅子取りゲームの開幕」
安倍首相の辞任が突然発表され、政権与党の自民党の後継者選びが急ピッチで進んでいる。前回、安倍首相が約1年で突然の辞任をして以降、短期間で目まぐるしく総理大臣が変わり続けた中、良くも悪くも総理大臣の椅子に7年8ヶ月腰を据えて、国内外の難曲に立ち向かい、経済を回復基調に乗せてきたのは一つの功績だろう。持病の悪化に伴う辞任劇という事もあって、これまでの労をねぎらう風潮にもなっている。
体調の悪化によって、情熱を傾けていた事を志半ばで終えざるを得ないのは言葉に出来ないほど悔しいだろう。自分の身に置き換えて考えてみると大なり小なりの共感はある。が、それだけに流される事なく、是々非々の姿勢で長期政権となった安倍内閣の振り返りを行い、次の政権、未来に繋げていって欲しい。常につきまとう政治とカネの問題から、情報管理や法解釈変更など、週刊誌やワイドショーのスクープネタで終わらせてはいけない問題を辞任と一緒に無かったことにしてはいけない。これは与党、野党関係なく国会議員の使命だと肝に命じて欲しい。長期政権により安定した政治の舵取りが行われた側面、権力の集中によって腐敗した側面、是非両面から検証をしていって欲しい。
ポスト安倍の椅子取りゲームはあっという間に菅官房長官の優勢に傾いてきた。石破氏に席を譲るのだけは避けたい、という思いで主流派が団結した格好だ。今回空いた椅子はあくまでも来年9月までのスポットと考えれば、大崩れは無さそうな菅官房長官に中継ぎとして継投してもらい、国内外に大きな影響が出ない形を作りながら、来年9月の自民党総裁選を勝負所として足固めを進めていく、という岸田氏、石破氏の思惑だろうか。その次の総裁選を見据えて戦局を見極めたい野田氏、稲田氏、河野氏。こんな構図か?
一時は期待のホープとして遠くない未来の首相候補とまで期待の声があったものの、その勢いに陰りが見えている印象の小泉進次郎氏。にとって、このタイミングの辞任劇はどんな風を吹かせる事になるのだろうか?小泉進次郎氏の政治家の力量はまだ未知数なのかもしれないが、若手の政治家が台頭してくるのは歓迎したいというのが愚庵の立場だ。
組織の頭が変わるという事は必ず潮目が変わってくる。大統領選挙を控える中で「シンゾー、ドナルド」の仲が崩れた日米関係はどうなるのか?長期政権化への基盤を固めたロシア、中国との関係性は?トップが変わるはずもない北朝鮮にはどの様に接していくのか?
この一年、国内の椅子取りゲームに明け暮れた結果、諸外国に相手にされなくなる、とならない事を切に願うばかりだ。