物書庵初心週記帖(50号)「グングン上がる最高気温とめっきり上がらないオリンピック熱の行く末はいかに」
ここ数日、最高気温が30度を超える日が続き、梅雨を飛び越して夏が訪れたような雰囲気だ。季節外れの暑さに遭遇すると、これも地球温暖化の影響か?と反射的に思ってしまう。脱炭素が政界、経済界のキーワードになっているが、果たして本当に間に合うんだろうか?と心配になるのは素人の杞憂で済めばいいのですが…。
開幕まで50日を切った東京オリンピック。マスコミを通じて聞こえてくるのは、世論は延期の声が大きくなっているぞ、とか。菅総理、担当大臣、組織委員会会長、都知事、著名人が「どう言った」「こう言った」とか。概ねこんな報道でオリンピックの開催是非を論じている。その一方で「五輪代表決めた」「無念の落選」「日本代表争いが白熱」というアスリートの活躍が同時に届けられる。いや、そのニュース自体はとても喜ばしく、今のこのクニで明るいニュースは芸能人の結婚とアスリートの活躍位だと感じている中では大歓迎ではあるのだけど、はてさて、一体マスコミはオリンピックを開催したいのか、したくないのか、どちらなの?とよくわからなくなってしまう。
朝日新聞がオリンピック中止を求める内容を社説に掲載した是非はともかくスタンスを明確にした態度に天晴れと思ったのも束の間、翌日には公式サイトでオフィシャルパートナーとしての活動を続けると表明というすったもんだも話題になりましたが。それにしても、会社の意向(この場合はオフィシャルパートナーという立場)に反する内容を社説に掲載して全国に配れてしまうというのは、それだけ紙新聞に対する力の入れ具合が落ちているという事なのかなと思ってしまう。オリンピックとは別の意味でビックリした出来事でした。
そして、オリンピック直前のタイミングで、ようやく?重い腰を上げて菅総理が「国民の命が大事、開催ありきではない」と言った趣旨の発言をしたようですが。世論調査では五輪中止の支持率が上がり、内閣の支持率は下がる、という状況の火消しに躍起になっているというところでしょうか。
実際は、諸所で細かい調整が行われており、何よりも本来の主役であるアスリートが最終調整に入っている段階で、開催国都合での「中止」はありえない。というか、IOCに交渉する外交力も様々な批判を受ける覚悟と決断力がない、と言う方が正しいかもしれない。そして開催すれば池江璃花子さんを筆頭に日本人アスリートの活躍によって五輪開催反対論なんて吹き飛ぶだろう。そんな思惑なのでしょう。
政府のスタンスを指摘するのならば自分のスタンスを表明するのが筋だと思うので、愚庵はオリンピック開催は賛成派です。オリンピックにまつわる金や利権の問題は数あれど、一競技に人生をかけて取り組んできた世界中のアスリートが一同に集うオリンピックが生きている間に自国で開催される、というのはやはり名誉な事だと思います。そして、今のタイミングで「やっぱりやりません」と言って世界各国のアスリートの目標を奪うのは残酷すぎるのではないかと。なので、このクニの政府には自国民に対してしっかりとしたメッセージを発してもらいたいと切に切に願っています。
「オリンピックは開催する。開催する事でのコロナ対策への影響は●●と想定しているが、万全を期すために●●の対策を政府の責任で行う。国民には●●を理解して●●の行動をお願いしたい。」このようなスタンスを明確にしてくれれば、是々非々での意見交換や建設的な提言も出るのではないかと思うのですが、議論の軸がないまま、それぞれの立場で意見を言っているから、あちらこちらでよくわからないままドンパチ打ち合っている空中戦にしか見えない。結局オリンピックをやると感染状況にはどのような影響があり、国民一人一人は何に気を付けるべきなのか(まぁ、これまでと変わらず、接触を控えて、自宅で感染なのでしょうが)というのがよくわからないまま、オリンピックまでの日数は減っているから、来月には世界各国からアスリートが集まり、メダルを争って最高峰のレベルの戦いがこのクニで繰り広げられる、という実感がまるでない。多くの国民が感じているのはこんなところではないでしょうか。
結局は政治の力ではなく、市民代表のアスリートの力によってオリンピックは支えられていると言えば聞こえはいいのですが、果たしてこの1ヶ月でどういう着地となるのかが開幕前の見所になりそうです。