『新しい野良犬/ニューストリートドッグ』出演者インタビュー|中林舞
中林:中林舞と言います。普段は舞台に出る俳優と振り付けをすることが多いです。
今野:バストリオとの出会いと印象を聞かせてください
中林:これ聞かれるだろうなと思ってお家で考えて、もしかしたらずっと喋っちゃうかもって思ってたんだけど。まず、最初にバストリオを見たのは去年、こまばアゴラ劇場で『一匹のモンタージュ』 リクリエーションで。最初はストーリーを追おうとして見てたんだけど、最終的になんかもう無自覚に浴びてて。それから、劇場出て、最寄り駅から自分の家に帰る途中に、フラッシュバックとも違うんだけど、ただのいつも通りの家に帰る道で、さっき見たバストリオが、スッと差し込まれてきたみたいな感覚があって。それにびっくりしたんです。なんでびっくりだったのかなっていうのは、昨日気付いたんですけど、なんか私って…、ちょっと遠回りしながら話します。
今野:うん、もちろんいいですよ。
中林:私って、人類が1番愚かな生き物だ、みたいな気持ちが自分の土台の一部にあって。人間好きなんですけど、周りの人とか。でも、今の情勢も、昨日の選挙とかもそうなんですけど、「人類め!」みたいな気持ちになることがちょいちょいあって。自分が人類として産まれて生きていかなきゃいけないことが、悲しい、ままならないというのが土台の一部にあると思うんです。
今野:それっていつからなんですか。
中林:結構もう、中学生高校生とか子供の頃からなんとなくあって。そのままならないのをどこにぶつけようってなった時に、演劇とか映画とかだったというか。そういうままならなさを出すことで、もしかしたら安心する人もいるかもしれないし、私自身もそういう作品を見て救われることもあって。 結構、生きていく上でその部分にスポットライトが当たっちゃってるというか。バストリオの稽古だと散歩したりして、普段何気なく目にするものを大事に、掬っていくじゃないですか。でも私の場合、なんていうのかな、1回何も考えず自分に通して、時間が経ってから残ってるものを、例えば役者としてやる時に引き出しとして使えるものにするとか、私はそういう印象で周りのことを捉えてて、だから、なにか作品を見て何年後かにあのシーンすごく覚えてる、あのセリフすごく覚えてる、みたいのがあった時に、ああ、自分のものとして吸収されて引き出しになったんだなみたいな感覚になることの方が多いんです。だから『一匹のモンタージュ』 リクリエーションを見て、その日の帰り道のただの日常にスッと差し込まれてきたみたいなのが結構驚きだったのかなって。
今野:なるほど。
中林:で、昨日気づいたって言ったのは、今野さんと話してた時に「人間って理論で生まれてきてないじゃないですかって、居て、存在してるじゃないですか」っていうのを言ってて、それってすごくいいな、安心することだなって。それは正しいよなって私は思ったんです。それで思考を巡らせていったら、バストリオを見て、私が人に見せるようなものじゃないと思ってる私の本当の日常にスって差し込まれたってことにびっくりしたし、すごく興味をそそられたっていうのは、そこから来てるのかなっていう。
今野:じゃあ、結構昨日話したの大きかったですね。『新しい野良犬』のクリエーションはどうですか?
中林:バストリオの散歩してるとき、さっき散歩したことを、すぐに何が印象に残ってるだろうっていうの共有して創作するっていうのをワークショップの『十回転』の時からやってるじゃないですか。 なんか、私はその時に何をピックアップして、自分の中で掬い上げればいいのかがピンと来ない。自分の中で懸命に、どうだったかなと考えながらやる感じがあって、これは普段私がやってないことなんだろうなっていう感覚があって。
今野:うん、なかなかやんないっすよね。
中林:そっか。でも、みんなはやってんのかな、やってないの私だけなのかなとか思いながらやったりしてたんですけど。でも、そういう人間でも、一緒にやってるメンバーが散歩に行って掬い上げて、すごい小さいことでも、何かを出してくれた時、全然見れるし、聞けるし、そういう小さいことを言ってくれたんだっていうのが、うん、すごく、尊めの収穫、みたいな感覚があります。
中林:だから、バストリオと感性がそんなに近くないかもって思ってる人がいたとしても、1回見てみたらいいんじゃないかなって。例えば、宝塚とか、ああいうものに触れるのもすごくいいことだと思うけど、もし仮に、そういうものだけが「舞台」だって思ってる人でも、その人にもやっぱり産まれてからの生活や過ごしてる時間があって。バストリオみたいな作品を見たことないような人も、一回見てみたら面白いんじゃないかなと思ってます、勝手にね。
今野:公演を見に来てくれる方へメッセージをお願いします。
中林:ちょっと重複しちゃうかもしれないですけど。見に来てくださる皆さんと同じように、今の時代を生きてる人たちが集まって、それぞれが感じているものとか、時間とか、些細に見えるかもしれないものとかを、大事に集めて、出すっていうのをしているので、それを見てもらうのがすごい楽しみだなと思ってます。見て何か伝えたいなと思ったら感想とか聞かせてほしいです。楽しんでくれたら嬉しいなと思います。
今野:ありがとうございます。
インタビュー:今野裕一郎
編集:坂藤加菜
『新しい野良犬/ニューストリートドッグ』公演情報
↓特設サイトはこちら↓
「街をウロウロして集まってきたら目が合った瞬間噛みついて止まることなく走って辿り着いたそこは最も人間がいないと期待されている場所」
「子孫たちが街で繁栄、すれ違うそれぞれのイメージが宇宙から落下してくる」
「どこまでも走る犬たち、人間たちは歩いてそこへ向かう」
「風景みたいにね」
演出:今野裕一郎
出演:坂藤加菜 髙橋慧丞 中條玲 槌谷颯晃 つちやりさ 中林舞 橋本和加子 吉田萌
会期:2024年7月11日(木)〜15日(月・祝)
7月11日(木)20:00〜
7月12日(金)14:00〜
7月12日(金)19:00〜
7月13日(土)13:00〜
7月13日(土)18:00〜
7月14日(日)13:00〜
7月14日(日)18:00〜
7月15日(月・祝)13:00〜
↓ご予約はこちら↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?