『Holy cow/わたしたちは一度しかない』self-introduction/represent|本藤美咲
『Holy cow/わたしたちは一度しかない』のクリエイションでは、参加メンバーそれぞれが縁のある(あるいはない)土地についてのテキストを書くことからシーンを立ち上げている時間もあります。ある土地について語るということはどういうことなのか。
出演者自身の執筆による自己紹介と、それぞれの土地に関するテキストの抜粋をお届けすることから、本作を立ち上げる"わたしたち"について紹介します。
本藤美咲
self-introduction
こんにちは。本藤美咲です。
普段は音楽を演奏したりつくったりして過ごしています。
ライブハウスの上に住んでいて、ライブハウスで演奏していて、ふたつのライブハウスで働いていて、休みもやっぱりライブハウスに遊びに行く、というような生活で、主な生息地がどこかのライブハウスです。
小学5年生のとき、学校の音楽会でクラスのみんなで楽器を演奏して、体育館いっぱいの拍手を浴びたのがやみつきになってしまって、それから音楽でやっていきたいなと思うようになりました。幸せな事にそれからずっとなにかしら演奏して、聴いてくれる人がいて、一緒にやってくれる人がいて、生活しています。
小学校の卒業アルバムに寄せた将来の夢は「エンターティナー」でした。そうなれているかわからないけど、とにかく生で感じられる現場に、どんな立場でもいいから立ち会い続ける人生がいいと思って生きていることはずっと変わりません。
「観る」と「やる」は入れ替われて、じつはそこに境目って無いのではないかと思っています。バストリオのクリエイションの時間はまさに、人とつくってやる/人がつくったものを観るの両方をみんなで繰り返し何度も何度もやって、自分に残るものが沢山あります。
2019年の冬、26歳の時初めてバストリオに出会いました。共に音楽をする仲間の高良真剣くんが出演していたので知って、原宿のVACANTへ『ストレンジャーたち/野性の日々』という作品を観に行きました。
観たその日に、自分が書いていた感想です。
「相当に喰らってしまいました。息をたくさん吸ったというか、すごく気持ちがいい水域で泳いだみたいな感覚で眺めていた。
まさに今の私にもんのすごくガーンと響く言葉があって、いまずっと考えている。
いま目に入るもの、何も変わっていないんだろうけど、全部変わったように見えてもう戻ってこられない。」
自分にとって観に行くことはいつも必要なことで、特にバストリオを初めて観に行った2019年は、毎日のように何か観に行っている生活だったと思います。
それから3ヶ月ほど後に、コロナ禍が日本にも到来しました。しばらく生のものが全部ストップした時間があったあと、2020年の12月、バストリオで観て知った菊沢将憲さんの映画を観に行きました。
そこで今野さん、橋本さん、スカンクさんにも会えて初めてお話して、緊張しながら1年越しに『ストレンジャーたち/野性の日々』の感想を直接伝えられた機会がありました。自分でも驚くくらい、ついさっき観たみたいに言葉が溢れ出しました。
とうとう大好きなことをやってる人たちと話してしまった…!ととても高揚した気持ちのまま帰ったのを覚えています。
それから半年後くらい、2021年の夏に、バストリオのワークショップに参加しました。
当時弾き語りの人のライブを観に行くことが多くなっていて、弾き語りの人って剥き出しになる覚悟を持ってやってる、と感じて憧れていて、自分は普段サックスという楽器を持ってる事に頼ってしまってはいないか?楽器を隠れ蓑にしていないか?と自分に物足りなさを感じていました。
サックスを持たずに身ひとつでなにか伝えることができるようになったら、サックスを持っても剥き出しができるんではないか、と思って、それに挑戦する機会として楽器を持たずにワークショップに参加しました。いい人たちばかり集まっていて、発表をつくるのが楽しすぎました。
中條くんとはこのワークショップで初めて会いました。周りの人を自然に気遣う優しい人なのは初めから感じていたけど、この頃はこんなに逞しい人だったなんてまだ知りませんでした。悩んでる状態も肯定して、じっくり考えられる真摯な人だと思います。
これ以降、2022〜2024年は徐々にバストリオにどっぷり関わらせてもらうようになっていき、今年はひとつ終わったら次のひとつがまたやってくるような感じでずっと一緒に居るな、という印象です。
さとしゅんさんは、初めてバストリオを見終わったあと、ずっと立ってるのが奇跡だと思って写真を撮って帰った一本の木を、立てた人だったと思います。じっくりお話しできたのは今回のクリエイションが初めてでした。本当のことが言えてるか見れてるか、いつも誠実に考えている人だと感じています。
あの立つ木を見てから、それ以外にもこの世のもの全部ぜんぶ、奇跡でできてるように見えてました。
黒木さんと初めて話したのは初めてバストリオを観に行った日で、持って行った大きな楽器を笑顔で預かってくれた人で、思えばそこからいつも大変なとき手を伸ばして助けてくれる人です。自分のことも人のことも大事にできる強くて優しい人だと思います。
坂藤さんとは、じわじわと色んな話をするようになって、ライブの話とかを身近に話せるようになって嬉しいです。いつも全部を見渡してて、必要な場面で最高スピードで狙い撃ちしてくれるようなかっこいい人だと思います。
スカンクさんは、いつも私には見つけられない角度からものごとに切り込んで、思ってもみなかった面白い見方を与えてくれます。
遊び方を見つけて示してくれるというか、どうやったら楽しいか、常に探求している素敵な人だと思います。
橋本さんは、いつも真剣に周りのみんなのことを考えていて、だからいつもいつも弾けた明るさでいて、明るすぎてたまに心配になって守りたくなる人です。でもいつも結局守ってもらいっぱなしです。
今野さんは、全部を等しく大切に扱おうと、なにひとつ見捨てなくて済むようにとたたかってる人だと思います。こんな風に世界を見つめ続けるのは相当に根気のいることだと思うんですが、絶対諦めない人です。すごいです。
長くなってしまったしいつの間にか自己紹介じゃなくなってしまいました。すみません。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
いま言いたいことはとにかく、この愛おしい人たちを、たくさんたくさんの人にみて感じとりに来て欲しいということです。
どうぞよろしくお願いします。
公演情報
KACパートナーシップ・プログラム2024
バストリオ『Holy cow/わたしたちは一度しかない』
◾️クレジット
演出|今野裕一郎
出演|黒木麻衣、坂藤加菜、佐藤駿、スカンク/SKANK、中條玲、橋本和加子
音楽|高良真剣
◾️会場 京都芸術センター フリースペース
◾️タイムテーブル
11月2日(土)19:30~★倉田翠さん(akakilike)
11月3日(日)13:00~
11月3日(日)17:00~★出演者と今野裕一郎
11月4日(月・祝)13:00~★八角聡仁さん(批評家)
★=アフタートーク
◾️チケット
一般|予約 3,000円 当日券 3,500円
大学生以下|予約 2,500円 当日券 3,000円
14歳以下無料
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