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1-20 concrete epic

『真実は無くなった無くなったというより厳密に言うと真実という言葉を皆口にしなくなった「居たいところに居続けて良い」何故なら真実という言葉こそが全ての争いの元凶である事に気付いたからだ各々にとっての真実はもしかしたら存在するのかもしれないしかしそれはいつも自我の宇宙という閉ざされた空間に生まれるつまり人の数いや生命の数と同じだけ存在する他人の宇宙の中には何人たりとも覗くことは叶わないいくら精神分析を学ぼうとねだからつまり真実がおまえの精神という外部からもたらされたならその時はヘンリーダーガーやアイローズコルバスが人に見つからないよう隠れながら真実と対話したように個人レベルで黙々と実践しなくてはいけない誰かを巻き込むと大体ロクなことにならない口にして敵味方に分断し相対的な価値を担保する行為は果たして真実の名の下に恥じぬ行いなのだろうかそれは自身が受胎した真実の重みに耐えかね痛みから逃れているだけだあまりに眩い真実の輝きがおまえの眼前で瞳孔をジワジワと焼き続ける激痛と運命に耐えかね自ら目に釘を打ち光を失う究極の現実逃避さつまりそれが「民」という漢字の語源ってわけ自ら目に槍を突き刺した人々は常識を持ち社会生活を営める一方で少数の「しっかりと」真実を実践する人間ってのは大体狂人か変人扱いさ「真実と大衆」がいかに水と油のように混ざり合わないのかわかっただろ?あーなんの話だっけそう幾つかの大きな争いが起こる度に人間は星の数ほど真実が存在するという事実を理解したがそのようなカオスを現実と認識し社会生活を営むことは恐怖でしかなかったので各々の真実を口に出すことを辞めず争いや差別は絶え間なく続き疲れ果て次第にいちいち一つ一つを尊重し敬うという努力を掛けることができるのは先進国に住む少数のヒューマニスト達だけとなり大多数の人間はそれまで人類が長い歴史の中でが培ってきた精神的統一性をひたすら劣化させ真実を裏付けるための事実の積み重ね方やレトリックを破壊しいかに誇大広告的でスキャンダラスで空虚で(その場しのぎという意味で)現代的なキャッチコピーで注目を浴びるかを競い合うことで自律性も倫理も捨て去りお先真っ暗のカオスを未来と信じ身を委ねた63年前ってそんなに昔じゃないけど兎に角世間ではそーゆー風潮がとても流行ったんだでもそれは10年もしないうちに行き詰まったよく考えてみればこれまでの人間社会自体が虚飾された真実が乱立してて毎分毎秒何億ものエントリーがある「永久に終わらない天下一武道会」みたいなもんなんだから変化のスピード感が変わっただけで結局本質的には今までと何も変わってないよねってなったんだ観覧車に乗ってグルグルしてるから風景が変わってるだけなんだってことねそんで皆が真実を語る事を止めること以外にその観覧車を降りる手段は無いのさ「真実らしく物事を語る奴はロクな奴じゃない」てのはおまえも小学校で習っただろ?各々の持つライトスタッフは行動の指針であって表現の指針ではないのさ「真実はいつも一つ!」て決めゼリフでお馴染みだったあの有名高校生探偵が主人公のドラマも視聴者からのクレームが増えて後半には「真実はいつも多様!」て変更されたの覚えているだろ?』おまえは得意げに語っていたが目を覚ますとゲロまみれの便器に抱きつきながらしゃがみ込んでいた「あれ?さっきまで合コンしてて向かいの大学院生の女の子がめちゃタイプで緊張して飲みまくって話しかけてどうなったんだっけあぁ酔っ払ったしかしあの子名前何だったっけミチコ?ケイコ?ぜってぇおれに気があったぜだっておれは見た目はアレだがめちゃインテリだからな」辺りを見渡すととりあえず合コン会場の居酒屋のトイレであることは何となく理解出来た恐らく自身のものであろう吐瀉物は床一面に撒き散らされており便器の水面を覗くと粘性のある濁った黄土色の胃液で満たされている「真実…真実…」おまえは便器に顔を突っ込み水面の胃液に口を付けるとジュルッジュルッとゆっくり啜り飲み滑らかな舌触りと強烈な酸味で喉の渇きを癒し終えるとそのまま顔の位置を変えずに右手で水洗レバーを回し顔を洗って立ち上がるとトイレットペーパーを5周程巻き取り鏡を覗き込みながら顔を拭いた「せっかくお母さんに買ってもらったフレッドペリーのポロシャツがグジャグジャだなぁ」フラフラとした足取りで席へ戻るとメンバーは誰一人居らずおまえのリュックと伝票が食い散らかした皿の真ん中にドサっと無造作に置かれていたトイレを汚した事を店員に謝り分割十二回払いで会計を済ませ外へ出ると新宿にはチラチラと雪が降り始めていた「どぉ〜りで寒いわけだな〜こりゃ!」おまえは駅に着いて終電を逃したことを知ると近くの満喫で夜を明かそうとしたが身分証を根こそぎ盗難されている事に気付き今夜の合コン代で今月の生活費も危うくタクシーも無理だったので都庁下のホームレスに口で抜いてあげるから一晩泊めてくれと交渉したら結局なんだかんだで6人のホームレスと最後までヤッてしまいヒリヒリと痛む肛門を押さえながら精子と皮脂が混ざって腐ったような臭いのするモーフを借りて寝た。

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