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【ツチヤサイダー】 #逆噴射小説大賞2020ボツ作品
道に空き缶を見つけた。久々のことだな。どこにゴミ箱があるかはわからないけれどそれを拾ってデザインを見る。
【ツチヤサイダー】
小豆色の缶にはそう書いてある。初めて見るし、パクリの商品に違いない。近くで売っているのだろう。美味しくなかったのか随分と中身が残っている。
気にかけてみると道にはずいぶん多くの自動販売機があった。中には思っていたよりも多くの知らない商品が並んでいた。
何かの縁だ。ツチヤサイダーを購入してプルタブを開ける。プシュッ、爽快感を絵にしたような泡が缶から流れた。
「ご購入ありがとう。」
わたしの背後に声が響く。振り返ると前髪のきちっとした男性が立っていた。
「ど、どなたでしょう?」
「土屋です。」
男は真面目な顔でそう答えて、わたしの持っていた缶をさっと奪い、指先でプルタブのそばを弾いた。
「蜘蛛です。突然の非礼をお許しいただきたい。」
男はそう言って新しいツチヤサイダーを購入してきた。
「いかがですか?受け取っていただけますか?」
よくわからないが受け取った缶を開けてわたしは一口飲んだ。炭酸のおしるこ飲料と言ったところか。そう思うも束の間、目の前が回転しはじめた。わたしは缶を落とし、倒れ込んだ。
「うう、これは。」
「ツチヤサイダーです。」
「あなたは…いった…い」
「土屋です。」
目が覚めるとわたしは薄暗い場所にいた。戦隊モノでよくみるような地下施設風。そこは賑やかで一つの町のようだった。大きなヒヨコの格好をした者、お弁当の着ぐるみの者、いろんな姿をした者たちで溢れていた。側では例の男がわたしを見守っていた。
「ここは?」
「ツチヤサイダー本社です。」
「ここで何を?」
「猛者を探していたのです。先代の伝統を覆すような猛者を。非礼を詫びたい。ですがあなたには可能性がある。」
男はそう言い残し遠くに見える演説台に上がった。三本の矢で【土】と書いた旗がどこからか吹いてきた風に揺れてスピーチが始まった。
続
もちろんボツです。
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