【金魚/Amphibians】 #逆噴射小説大賞2020ボツ作品
バイオレンスを含みます
ブチ込まれたソーダ、薬の燃えたテーブル
いつだってわたしは可愛く泳ぐ金魚だった
男はソファーで口の端に泡を溜めて眠っている。煙の匂い。どこかで火を使ったのだろう。思い詰めた様子で部屋に戻るとこの男は大抵の場合は白い粉を火で炙りこのような状態になる。
拳銃。アルコールの瓶が雑に並んだ棚に無造作に置かれている。
小さく止まった足音。部屋の前だ。様子を探るように、音を決して届かせぬように漏れた音。もちろんソファーに腰をかけたままの男は気づかない。いつものように次の夜が来るまで起きないだろう。何もかもを垂れ流しながら、男はソファーで夢をみ続ける。
毎日ブチ込まれるソーダ、何かしらの薬。わたしはいつからか金魚以外の何者かになった。
水槽を出る。足がフローリングを踏む。少し沈んだような感覚の後、足を動かした。初めての陸。初めての足。水の中にずっといたが、思いの外自身の水分含有量は多くないようだ。
拳銃を掴む。ヒレ。ヒレだったもの。感傷。私の小さかった脳はこんなにも多く人間を学習している。モニター。垂れ流され続ける情報。名称と事象を関連づけて言葉を学んだ。
床に垂れ流される糞尿。水槽の外も一緒だ。私は勢いよくドアを開け前のめりに倒れるように入ってきた男の側頭部に拳銃を打ちつけた。
大きな音がした。ソファーの男が起きたようだ。誰だお前、男は言った。私です。金魚ですよ。あなたの飼っている金魚ですよ。
定まらない視線をさらに揺らす。
スマホ、金、車。男の大事にしていたものを借りることにした。更なる金。あるのは知っている。金。組織。金。それがあれば私の人生が始まる。金。黄金の世界、男は言っていた。動かない。車、窓、外、好奇の視線、朝。スマホ、スマホ、スマホ!私が珍しいか!肌が乾く、エンジンが弾んだ。風、空、乾き、外だ。
続かない
ボツ作品。応募作品によると比べると格段に面白くないにゃあ。
絵は気に入ってます。