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愛聴盤3選 No.2

こんにちは皆さん、ぶらいんどです。
いやはや、まだまだやる気が続いております。どうにかしてこの一時的な熱意を日常に染み込ませられたら、といったところでしょうか。それでは前置きはこれくらいにして、本題に入りましょう。どうぞ気軽にお付き合いくださいませ。

Heaven or Las Vegas / Cocteau Twins (1990)

さてさて、一番最初に紹介するのはスコットランド出身のロックバンド、コクトー・ツインズ『Heaven or Las Vegas』です。このアルバムを語るなら、まず知っておきたいのはこのアルバムがコクトー・ツインズの音楽的な絶頂期を象徴するものであることです。90年代に突入する中で、彼らのサウンドはまさに「天国」へ昇り詰めたと言えるでしょう。ドリーム・ポップの真髄を体現したこのアルバムは、私にとっても非常に愛着のある作品です。シューゲイザーへの影響力も大きいエリザベス・フレイザーの透き通るようなヴォーカルは、どこか見えない世界からの囁きかのようで、ドリーム・ポップサウンドを補強してくれています。

アルバム全体に漂う美しい旋律と空間的なサウンドスケープは確かに天国を彷彿とさせますが、そこには「ラスベガス的」な要素も間違いなく潜んでいます。表面の華やかさや夢幻的な雰囲気の裏には、時に冷たく、距離感を感じさせるような音響のニュアンスが隠れています。ロビン・ガスリーが創り出すギターサウンドにもそれは如実に現れていて、彼のギターは単なる煌びやかなメロディの提供にとどまらず、少し冷淡な雰囲気を漂わせています。そのギターのトーンが、音楽の奥に潜む複雑な感情を際立たせているのです。まるでラスベガスの華やかな街並みの背後に潜む退廃的な現実のように、聴くたびに感じるのはただのエーテル的な美しさだけでなく、その裏にある儚さや見放すような冷たさもまた味わい深いのです。

つまるところ、コクトー・ツインズの『Heaven or Las Vegas』は、音楽的な天国を経験させてくれるだけでなく、どこか皮肉めいた魅力も持ち合わせているのです。美しい旋律の背後に潜むのは、聴く者の心をじわじわと掴むちょっとした小悪魔的な感覚。これはただの音楽アルバムではなく、音楽という名の幻想的な冒険そのものなのです。

Loveless / My Bloody Valentine (1991)

次に紹介するのは、先ほどのコクトー・ツインズからも大きな影響を受けているアイルランド出身のシューゲイザー・ロックバンド、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの名盤『Loveless』です。

2年半の長い年月と27万ポンドという巨額を費やし生み出された本作。再生ボタンを押すと同時に響き渡る4発のスネア、その後に押し寄せる轟音ギターの音色。この瞬間、これが『Loveless』であり、これこそがシューゲイザーというジャンルなのだと、否応なく理解させられる──そんな衝撃的な幕開けを迎えます。

その衝撃は、ただの一過性のものではなく、アルバム全編を通して執拗に襲いかかってきます。浮遊感と重厚感が絡み合うサウンドは、まるで夢の中で聴いているかのような、半透明でありながらも抗えない魅力を放ち、リスナーを現実から容赦なく切り離していきます。ケヴィン・シールズのギターは、もはや楽器というよりも耳に絡みつく抽象画のよう。時に音の壁を叩きつけ、時に耳元で静かに語るような不安定さを持っています。
一方ヴォーカルであるビリンダ・ブッチャーの囁き声は、薄暗い廊下の先からかすかに聞こえる足音のように、不意に現れては消えていきます。彼女のボーカルは、その瞬間にしか聞こえない幻のようなもので、そんな不確かな存在感が、アルバム全体の独特な魅力へと繋がっています。

『Loveless』は、音楽そのものが形を失い、純粋な感覚へと変容する瞬間を体現しており、シューゲイザーというジャンルの不朽の名作として、今なおその影響力を誇示し続けています。この音の荒波に呑まれる覚悟があるなら、ぜひどうぞ。ただし、念の為に耳の保険はお忘れなく。

Remain in Light / Talking Heads (1980)

トーキング・ヘッズ『Remain in Light』、あの1980年の奇跡。何が奇跡かって、デヴィッド・バーンと彼のバンド仲間たち、そしてプロデューサーであるブライアン・イーノがアフロビートを取り入れながら、冷ややかなニューヨークのビル街を背景にスーツ姿で踊り狂うようなアルバムを作ったことでしょう。実際にデヴィッド・バーンはライブで大きすぎるスーツを着て、リズムに乗って踊っていたわけですからね。

このアルバムには彼ら特有の抜け目のないインテリジェンスが漂い、そこにはシュールで情熱的な現実逃避も共存しています。
まず目立つのは、やはりアフリカのポリリズムを中心にしたビート構造です。これにより、アルバム全体に流れるリズムが、従来のロックやポップのパターンとは全く異なる独自性を生み出しています。単純なリズムに留まらず、異なる拍子やリズムが複雑に絡み合い、曲全体が一つの巨大なパルスのように脈打つ。このリズムの反復が、トランス状態を誘発し、聴く者の心を波打たせるのです。
ベースラインもまた特筆すべき要素で、ティナ・ウェイマスのグルーヴはアフロビートの要素を取り入れつつも、ディープで粘り強く、そんなベースが楽曲全体を支える強靭な骨格となり、その上にギターやシンセサイザーの複雑なテクスチャーが絡みついています。

また、デヴィッド・バーンの歌唱スタイルは、まるで時折狂気すれすれの境界で現実を見つめ直しているかのようです。特に「Once in a Lifetime」では、彼の独特なヴォーカルが、突然日常のルーティンに気づかされる瞬間を鋭く表現しています。「これが俺の家か?これが俺の妻か?」と問いかける彼の声は、まるで自分の人生の流れに飲み込まれてしまったような錯覚を映し出し、聴く者に自己の存在を疑問視させます。

ロンドンではパンクの原動力が徐々に衰え、残されたアーティストたちが新しい音楽表現を模索していた時期、そんな中トーキング・ヘッズはニューヨークからその最前線に立っていました。ポスト・パンクからニュー・ウェイヴへの、静かな移行期において、このアルバムは新たな音楽言語の構築を進め、バンドの歴史的な功績を証明しています。

これにて愛聴盤の紹介は終了です。音楽の旅が、あなたの心に少しの遊び心と、たっぷりの楽しさを運んでくれることを願っています。次の冒険へと、どうぞ心を躍らせて。
それでは、また〜

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