『中指の魔法』(著者:片島麦子)は豊島岡女子学園中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容・あらすじを紹介します!
■『中指の魔法』(著者:片島麦子)について
このお話は、ちょっと変わった不思議な能力を持つおばあちゃんと男の子のお話です。
最初はファンタジーではなく、実際に起こりうる話なのかなと思って読んでいたのですが、どうも主人公の緑(ロク)とその祖母のおおばあには不思議な力があるということがわかります。
緑の力は、いわゆるハリーポッター的な杖を振り回すような魔法ではなく、呼吸(いき)合わせと言って、呼吸を合わせることで夢の中に入っていくことができるという力です。
緑とミウリという少女が呼吸合わせによって、夢の中で体験することを軸に、緑とおおばあ、緑と母との関係、そして、緑が小さいときに亡くなった父親の記憶などをテーマに物語は進みます。
本を読むことに慣れていない小学生には難しい本ですが、緑という男の子の目線で描かれているので、本好きな小学生にはぜひ読んでもらいたい本です。
男の子が主人公ですが、女の子も出てくるので、男女問わず本好きな生徒さんにおすすめです。
詳しいあらすじを最後に書いています。読書感想文などを書く際に参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)
中学受験では、2016年度第1回豊島岡女子学園中学校の国語の入試問題で出題されました。
◆2016年度第1回豊島岡女子学園中学校の国語の入試問題
大問3番でリード文あり、「1おおばあと黒革の手袋」から文庫で7ページちょっと出題されました。緑(ロク)がいつものようにおおばあとレストランで食事をして帰ってきて、数学者であるお母さんと、緑が小さい頃の話をしている場面です。
大問1番は漢字、大問2番は論説文で大問3番まででした。
この大問3番の設問形式は、5択の記号選択問題が9問、抜き出しが1問で全部で10問でした。
■『中指の魔法』のあらすじ(ネタバレ)
緑(ろく)に父親はいない。数学者として大学で教鞭を執る忙しい母と、いつも傍にいるのはその母の母であるおおばあだった。
おおばあはいつも黒革の手袋を両手につけて、平屋の日本家屋に住んでいた。そして、おおばあの家は人の出入りが絶えず、その人々はおおばあに悩みを相談に来て、おおばあはそれで生計を立てていた。おおばあには不思議な力があったのだ。
その黒革の手袋の秘密をあるとき、緑は教わる。おおばあの右手の中指は驚くほど短かった。そして、おおばあと緑は黄金色の糸で結ばれていて、おおばあの不思議な力を緑も受け継いでいると言う。
緑が病院に誰かのお見舞いで行ったとき、緑はその不思議な力を初めて体験する。ミウリという女の子の夢の中に呼吸を合わせることで入っていくことができたのだ。これを、呼吸(いき)合わせとおおばあに教わる。
夢の中で、緑とミウリはお花畑でいっしょに遊ぶ。ミウリはママに枯れた花は死体と同じであると言われたことを緑に話す。緑もミウリにおおばあややじろべえ(飼っている犬)の話をする。2人は夢の中で楽しく時を過ごす。
その後、飼い犬のやじろべえと呼吸合わせをして、やじろべえの夢の中に入ってしまう。そうすると、血まみれの人間の姿が。獣の本性なのか、衝撃的なシーンが現れ、緑はその後しばらくやじろべえと今までのように遊べなくなってしまう。
そして、その後緑は呼吸合わせをしなくなってしまう。
緑が中学生になったとき、おおばあからおじいちゃんの眼鏡をもらう。緑のおじいちゃんは腕のいい眼鏡職人だった。おおばあはこの眼鏡が緑にそのうち必要になると言うが、緑にはまだピンと来なかった。そこで、一度おおばあに預かってもらうと言って眼鏡を返す。
そして、同じ中学のクラスの女の子が原因不明の病気で眠り続けていて入院しているので、担任のサクラ先生とお見舞いに行くことになる。その女の子は幼い頃、緑がいっしょに目覚めた高遠美瓜(ミウリ)だった。
緑はおおばあに相談に行く。おおばあは緑とミウリはつながっていると、そして、ミウリは夢に取り込まれてしまっている、お前に必要なのは勇気だと言う。ところが、緑はなかなか決心がつかない。
そんな折、おおばあは虫歯がひどいにもかかわらず、歯医者に行かなかったため、菌が全身にまわり、亡くなってしまう。そして、母から父のことを聞かされる。緑がずっと航おじさんだと思っていた記憶は父の記憶であったと。父は緑が5才のときに、緑に向かって血を吐いて倒れてそのまま入院して亡くなったために、緑はあまりのショックで父の記憶を消してしまっていたのだ。
緑はついに、ミウリに面会に行く決心をする。
ミウリと呼吸を合わせると、みどりの花畑にミウリはいた。ミウリはそろそろ帰ろうかと思っても帰れないということを告げる。おおばあに助けを求めると、父が現れる。そして、父が緑を驚かせてしまったことを謝り、その後ミウリと緑をこの夢の世界から脱出する場所まで連れて行ってくれる。そこには、もう一人のミウリが倒れていた。そして、ミウリの髪の毛に挿しているみどりの花がこの世界へやってくる切符だった。そのみどりの花を捨てれば元の世界へ戻れる。ミウリがみどりの花を捨てた途端、みどりの花畑がヒステリックに怒り出し、大蜘蛛に糸の巣をかけてもらう。その大蜘蛛は黄金色の巣を作り出し、花たちの動きを止め、ミウリはミウリにキスをする。
ミウリはミウリ、緑は緑、別々の部屋で目を覚ます。ミウリは学校に通うことができるようになり、2人は別々の高校に進むが、大学の建築学科に進学が決まり、一人暮らしの準備を始めた頃、またミウリの母から手紙が来る。また、緑は眼鏡を見つけ、ミウリのところへ向かう。