日本酒検定準1級の過去問解説(2024/9/7分) 問11~20
前回の振り返り(問1~10)
前回は、日本酒検定準1級の問1~10について解説してきました。
まだ、そちらをご覧になっていない方は先にこの記事をどうぞ!
それでは続きを解説していこうと思います。
問11
高温糖化酛を使用した酒母の育成機関を選択肢より一つ選べ。
1:約3週間 2:約2週間 3:約1週間 4:約3日間
11問目は酒母に関する問題でした。
酒母造りには①乳酸添加法(速醸系酒母)、②乳酸菌育成法(生酛系酒母)の2種類があります。
高温糖化法は①の乳酸添加法の内の1つの方法になります。
通常の速醸酛では、酒母用タンクに水、麹(酒母麹)、醸造用乳酸、酒母を投入したのちに、蒸米を投入し、加熱冷却を繰り返して、10~2週間かけて酒母がつくられます。
高温糖化法は上記の速醸酛に使用される仕込み水を56℃前後にすることで、不要な微生物淘汰と効率の良い糖化を行い、1週間程度で酒母がつくられるといった製法です。1940年ごろに、広島県で開発されました。
(テキスト71ページ)
A.3:約1週間
問12
山卸しを廃止するに至った要因として誤っているものを選択肢より一つ選べ。
1:国立醸造試験場の開設 2:軟らかい酒米の酒米の開発 3:竪型精米機の登場 4:糖化力の強い麹菌の開発
12問目は山廃酛に関する問題でした。
山卸しとは、11問目で紹介した酒母造りの②の乳酸菌育成法(生酛系酒母)で行われる工程です。
生酛は古くから日本酒造りに使われてきた製法であり、酒造好適米や精米技術も発達していない時代から連綿と受け継がれてきたものです。
よって、古来より続いて行われてきた生酛では米の糖化がなかなか進まなかったため、米をすりつぶして投下を速めていました。これが「山卸し」と呼ばれるものです。
ただ、この作業は重労働であり、明治時代に国立醸造試験所が開設され、手法の改善、米の改良などにより、その必要性が次第に薄れていきました。
竪型精米機は昭和に入ってから開発されたので、山卸しの廃止とは時代が異なります。
(テキスト72ページ)
A.3:竪型精米機の登場
問13
初添え時に投入される原料(酒母を除く)の割合を選択肢より一つ選べ。
1:5~10% 2:10~15% 3:15~20% 4:20~25%
13問目は醪の製法に関する問題でした。
醪造りは4日かけて行います。1日目は初添え、2日目は踊り、3日目は仲添え、4日目は留添えと呼ばれます。
1~4日目で投入される材料の比率は、1:0:2:3となっています。
100を6等分すると約16となるので、比率で考えるとすぐに覚えられると思います。
(テキスト76ページ)
A.3:15~20%
問14
❝留添え後から3~4日経過後の白い泡が表面に広がった醪の泡の状態❞を指す名称を選択肢より一つ選べ。
1:筋泡 2:玉泡 3:高泡 4:水泡
14問目は醪の泡に関する問題でした。
醪造りは留添えを終えると、アルコール発酵が本格化していき泡の状態がそれぞれ変化していきます。
①筋泡・・・留添え2~3日後、表面に数本の泡
②水泡・・・留添え3~4日後、泡が表面に広がる
③岩泡・・・水泡の後、岩のように泡が増える
④高泡・・・岩泡より泡が高くなる
⑤落泡・・・泡がだんだんと落ち着いてくる
⑥玉泡・・・泡立ちがかなり少なくなる
(テキスト78ページ)
A.4:水泡
問15
吟醸酒の搾り粕など軟らかい酒粕の名称を選択肢より一つ選べ。
1:板粕 2:練り粕 3:ばら粕 4:土用粕
15問目は酒粕に関する問題でした。
醪は搾りの工程を経て、個体の酒粕と液体の日本酒の元に分離されます。
酒粕は普通酒で、水約15%、炭水化物約30%、アルコール分約8%などによって構成されており、種類も複数あります。
①板粕・・・スーパーなどで販売されている四角い板状の酒粕
②ばら粕・・・吟醸酒の搾り粕のように柔らかすぎて板状にならない酒粕を集めた物
③練り粕・・・酒粕を練り合わせて、ペースト状に加工したもの、料理用として使われることが多い
④踏込粕(土用粕)・・・板粕やばら粕をタンクなどで半年程度熟成させたもの
(テキスト84ページ)
A.3:ばら粕
問16
醪造りに関する説明として誤っているものを選択肢より一つ選べ。
1:濃醇な酒質を目指す場合には発酵温度を高めに保つ 2:華やかな吟醸香を得るには総破精型麹の利用が有効である 3:完成した醪の糖分が多いと甘口傾向になる 4:完成した醪のアルコール度数は一般的には18~20%である
16問目は醪の性質に関する問題でした。
以下に醪の特徴を紹介します。
醪のアルコール度数=18~20%
高温=酵母の活動が活性化=濃醇な酒質
低温=酵母の活動が緩やか=軽快な酒質
糖分含有量高=緩やかなアルコール発酵=甘口+低アルコール度数
糖分含有量低=活発なアルコール発酵=辛口+高アルコール度数
総破精型麹=糖類の提供が多い=酵母の活動が活発化
突き破精型麹=糖類の提供が少ない=酵母の活動が緩やか
華やかな吟醸香=低温+突き破精型麹
(テキスト79ページ)
A.2:華やかな吟醸香を得るには総破精型麹の利用が有効である
問17
パスツーリゼーションの日本語を選択肢より一つ選べ。
1:高圧殺菌法 2:低温加熱殺菌法 3:紫外線殺菌法 4:高温殺菌法
17問目はパスツーリゼーションに関する問題でした。
醪から絞られた日本酒は、瓶詰めの前に酒中の酵素を失活や不要な微生物の繁殖を防ぐことを目的に火入れの作業が行われることがあります。
19世紀後半のフランスの学者ルイ・パスツールによってパスツーリゼーション(低温加熱殺菌法)が開発されましたが、日本は古来より同じ原理を用いた火入れが行われていました。
(テキスト87ページ)
A.2:低温加熱殺菌法
問18
ラベルの義務・任意・禁止表示など規定している法律を選択肢より一つ選べ。
1:酒類業組合法 2:酒税法 3:景表法 4:独占禁止法
18問目はラベル表示の法律に関する問題でした。
日本酒に関する法律は代表的な3つの法律として、①酒類業組合法、②景表法と公正競争規約、③酒税法があります。
①酒類業組合法・・・義務、任意、禁止表示に関する規定、地理的表示に関する表示基準、特定名称酒の表示について定めている。
②景表法と公正競争規約・・・誤解を与える不当、誇張表示を防止する法規を定めている。景表法のなかで、誇大表示の防止や適正な事業活動を行うために定めた自主的なルールが「公正競争規約」である。
③酒税法・・・種類に課税を課すための法規を定めており、酒類の定義、分類、品目、税率を定めている。
(テキスト98ページ)
A.1:酒類業組合法
問19
米・米麹のみを原料とし、精米歩合55%の日本酒が名乗れない特定名称を選択肢より一つ選べ。
1:純米酒 2:純米吟醸酒 3:純米大吟醸 4:特別純米酒
19問目は特定名称酒に関する問題でした。
特定名称酒は原料と精米歩合によって分類が行われます。
前提として、特定名称酒を名乗るためには、
①麴米の使用割合が15%以上であること
②3等以上の原料米を使用すること
が必要である。
その中で、原料に米、米麹のみを使用しているものは「純米」、精米歩合が60%以下だと「吟醸」、50%以下だと「大吟醸」を名乗れる。
(テキスト104~107ページ)
A.3:純米大吟醸
問20
清酒の必要記載事項に関する説明として誤っているものを選択肢より一つ選べ。
1:製成加熱処理を一切せずに出荷する場合、保存や飲用上の注意事項を記載する 2:外国産清酒を一部使用した場合、原産国名を表示すれば、使用割合の表示は不要 3:輸入品の場合には原産国名を記載する 4:特定名称酒を表示する場合は、原材料名に近接する場所に精米歩合を併記する
20問目は日本酒のラベル表示に関する問題でした。
日本酒ラベルの表記には、酒類業組合法に基づいて「必要記載事項」「任意記載事項」「必要禁止事項」が定められています。
必要記載事項の項目を確認します。
①原材料・・・使用量の多い順に記載する(水は除く)+特定名称酒は精米歩合も記載する。
②製造時期・・・瓶詰めが行われた日を記載(容量が300ml以下の場合は年月を省略可)+貯蔵年数表示は製造所から移出した時期の表示が必要。
③保存または引用上の注意事項・・・生酒のように加熱処理がされずに出荷される場合には注意事項の記載が必要。
④原産国名・・・輸入品の場合に記載。
⑤外国産清酒を使用したものの表示・・・外国産製品を使用した場合は、外国産清酒の原産国名と使用割合を記載する+10%の幅をもって記載してよい。
⑥製造者の氏名又は名称
⑦製造所の所在地(記号表示可)
⑧容器の容量
⑨清酒または日本酒表示
⑩アルコール分
⑪その他
(テキスト109ページ)
A.2:外国産清酒を一部使用した場合、原産国名を表示すれば、使用割合の表示は不要
今回は問11~20を解説してきました!
問21~30について解説した記事はこちらになります。
是非こちらもご覧ください!