炎夜葬送
目の前で柔らかな炎が燃える。
僅かな光が、僕の目の前だけ照らしている。
辺りを包む濃紫の闇。
夜は深く、森の中に染み込んでいた。
熱された木が跳ねる音、木々を揺らす風の音。
時折、鹿が遠くで高い声をあげる。
風が立ち上る煙の邪魔をした。
白色が霧散する。
名残惜しくも無さそうに。
遺言だった。
この山を愛した彼は
出来ることなら野火で
そして、夜の闇の中送ってほしいと。
燃えていく。
白木の棺は炎に巻かれて崩れていく。
彼の体もきっと同じように崩れていくだろう。
また、パチンと木が跳ねた。
朝までには、きっと終わる。
白い骨になった君を集めて家へ戻るんだ。
君は、この夜に溶けてどんな夢をみるのか。
もう答えは聞けない、そんな疑問。
代わりに遠くで、鹿が刺すような鳴き声をあげた。
『炎夜葬送』