湖面の舞
ある日の話。
その日は良く晴れた日だった。
雲の無い夜は久しぶりだ。
車を走らせて猪苗代まで行こうか。
中山峠を抜けて
志田浜のセブンイレブンを過ぎると
左手の方に駐車場が見えてくる。
真っ暗なお土産屋の横を抜けて浜に出た。
スワンボートが寂しそうに
浜の上で休んでいる。
その横に腰を下ろす。
風もなく凪いだ湖面が真っ黒に見えた。
空には星、真っ暗な湖面には何も映らない。
呆っと眺めていた。
湖面の上に何かが歩く。
ゆらりゆらりと白色がたなびく。
それは、だんだんと人の形になっていった。
それを怖いとは思わない。
神様だろうか。
妖しいものであっても、美しいと思えた。
舞が始まる。
柔らかく、風に吹かれるような
そんな舞だった。
時間はわからない。
ただ、じっと眺めていた。
不意に強く風が吹く。
目をつぶるようなそんな風だ。
顔を上げれば、そこには真っ黒な湖。
立ち上がってズボンに着いた砂を払う。
良いものを見た。
そんな気持ちで、帰路を行った。
「湖面の舞」