かえりたいばしょ
ランタンのひかりがゆらゆらゆら。
ぼくのまえをあるく。
かぼちゃあたまは、ふらふらしながら
あるいていく。
みちあんないをしてやろう。
かえりたいところをおもいうかべろ。
そう、いわれて
ぼくはすんでいたいえをおもいうかべる。
よぉし、よし。
さぁ、すこしばかりあるこうか。
ふらふらとみちをいく。
まっくらなみちをランタンがてらす。
おまえは、しあわせだったか。
かぼちゃあたまはそうきいてきた。
ぼくは、どうだろう。
わからない。
ははは、とかれはわらう。
でも、かえりたいばしょがあるんだろ。
そうつづけた。
そうだね、かえりたい。
あたたかないえ。
やさしいかぞく。
ぼくは、きっとみちたりていた。
あぁ、さいこうなばしょなんだな。
うらやましいよ。
かぼちゃあたまは、つぶやくようにいった。
ぼくは、いままでをふりかえる。
おぼろげにおもいでがよみがえってきた。
すこし、なみだぐんでしまうくらいに
たくさんのことがあったはずなんだ。
おまえはさ、いろいろあったんだよ。
それで、あいして
あいされてきたんだ。
ランタンのひかりのさき。
なつかしい、いえがみえてきた。
むしくいみたいなきおくを
はりあわせていたぼくは、かけだしていた。
きおくをなくしてしまったようにみえても
それはきえてしまったわけではない。
おまえをあいしてくれたかぞくは
たしかにいたんだ。
ぼんやりとあかりのともったいえには
だれもいない。
ここは、おまえのきおくのなか。
じっさいのおまえのいえはもうないんだ。
かぼちゃあたまはそういった。
でも、ことばをつづける。
それでも、おまえがあいしたものも
あいしてくれたひとたちも
きえたわけではないんだよ。
だから、だいじょうぶ。
もうすこししたら、あるべきばしょにもどろうか。
ぼくは、おもいだす。
じぶんが、しんでいることを。
あいするかぞくにみおくられ
ベットのなかでやすらかにねむったんだ。
たくさんのめいわくをかけた。
いろいろとわすれてしまっていたぼくは
みんなに、つらいおもいをさせてしまっただろう。
ひとしきり、なみだをながす。
かぼちゃあたまは
となりでだまってすわっていた。
さて、いこうか。
ふらりとかれがたちあがる。
きっと、おまえはてんごくにいけるさ。
そうしたら、おまえのかぞくを
まっていてやればいい。
あぁ、りょうしんもそこであえるだろう。
だから、あんしんしていいぜ。
かぼちゃあたまはふりかえってわらった。
それからしばらくして
いちまいのとびらのまえへとやってきた。
ひらいたとびらのさきに
まっしろなひかりがあった。
さぁ、いきな。
ぶっきらぼうにかれがいった。
ぼくは、かれにむかって
「ありがとう」
そうつたえたんだ。
かぼちゃあたまは
にやりとわらって、てをふる。
ぼくは、ひかりのなかへと
すすんでいったんだ。
「かえりたいばしょ」