かかしのおはなし
たんぼのなかに、ぽつんとひとり。
ぼくはたっている。
みのったおこめがおもたそうに
あたまをさげた。
ぼくのうではかざりだから
かれらのことをささえてあげられない。
ぼくのくちは、かかれたものだから
こえもだせない。
それでも、あるのかわからない
こころのなかで、がんばれとこえをかける。
すずめがとんでくる。
ぼくのことをしっているから
ちゅんちゅんと、なきながらかたにとまる。
おいはらおうにも、ぼくはかかし。
うごくこともできずにたちつくす。
なにもできないぼくは
どうしようもないぼくは
どうすればいいのでしょうか。
でも、あるひ。
ほしにねがったんだ。
そうしたら
ぼくはうごけるようになった。
ぴょんぴょんと、とびはねながら
すずめをおいかける。
みのったおこめに
がんばれってこえをかける。
あぁ、うれしいな。
うれしいな。
やくたたずのぼくは、もういない。
でも、たくさんたくさんがんばると
からだはうごかなくなったんだ。
たけのからだは、いまにもおれそう。
ぬののかおは、もうとれそう。
あぁ、こんなことなら
にんげんになりたいとねがえばよかった。
かなしいな、かなしいな。
できることがふえると
もっともっと、やりたいことがふえていく。
それなのに、ぼくのからだはたえられない。
くやしいな、くやしいな。
あしのたけがおれた。
ぼくはもう、うごけない。
たおれこむと、いちめんのほしぞら。
どうか、どうか。
ぼくをにんげんにしてください。
もっともっと、ひとのやくにたちたいのです。
でも、だれもこたえてくれません。
よかぜが、いねのあいだをぬけていきます。
ぼくのいしきは
よぞらにとけていきます。
あぁ、かなしいな。
くやしいな。
………………………
おや、かかしがたおれているな。
うんうん、ことしもよくやってくれた。
おかげでおこめもよくみのったよ。
ありがとう。
おじさんは、てをあわせました。
かかしのかおは
おじさんがえがいたときとおなじえがおです。
でも、そのめもとは よづゆでしょうか。
まるで、なみだをながしたようにぬれていました。
「かかしのおはなし」