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向日葵畑に見下ろす
一面の黄色。
そのなかに君の麦わら帽子。
待って、置いていかないで。
僕は声をかける。
君は振り向いて笑顔になる。
夏が似合う、爽やかな笑顔。
いたずらっ子の君のことだから
走っていってしまうんだろうね。
僕は君がいたところに走ったんだ。
掻き分けるように、進んで
また君は遠くにいて。
いつの間にか向日葵畑は途切れて
高原の先、街があんなにも小さく見える。
君は街を見下ろしていた。
僕は息を切らしていたけれど君は涼しい顔。
「ねぇ、忘れないでね」
不意に呟いた言葉。
僕は、忘れないよ。
そう返すんだ。
そこで目が覚めた。
もう何年たつのだろう。
あの日見た向日葵畑もあの街も。
たくさん変わってしまったけれど
僕は忘れてなんていないよ。
いたずらっ子で、さみしがりの君。
今年もまた、君の命日が巡ってきた。
「向日葵畑に見下ろす」