中高年ひきこもりは大きな黒い犬
ビッグ・ブラックドッグ・シンドローム(大きな黒犬現象)という言葉がある。アメリカの捨て犬シェルターでは、大きな黒い犬は敬遠される。引き取られるのは、いつも丸っこくて小さくて可愛らしい容姿の犬。
絶滅危惧種を救うNPO団体がパンフレットの表紙にするのは、いつもパンダのように可愛らしい動物だけだ。決してゴキブリのような昆虫が表紙に載ることはない。
これは人間の世界でも同じで、小さな女の子の臓器移植のために億単位の募金が集まるが、数百人のホームレスのためにはそんな金額は集まらない。私的支援は残酷だ。誰が世の中で求められる弱者かをはっきりとわからせてしまう。
ボランティアを志す人間も外国にいる目がきらきらしたストリートチルドレンのためにわざわざ渡航する。すぐそばに自国のホームレスがいてもだ。かわいそうな人間にもランキングが存在する。
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先日、中高年のひきこもりの数が内閣府から発表された。おそらく、彼ら・彼女らはかわいそうランキングでは下位に位置するだろう。この調査がもう十年早ければ、かわいそうランキングで中位にいけたのではないか。いや、もう二十年早ければ……。
フランスのように暴動が起きるのであれば政治的に影響力が大きく、政権の退陣の可能性までおよぶかもしれないが、多くの日本のひきこもりは幸か不幸か平和的である。いずれ、彼らの存在を気にするものはいなくなるではないだろうか。道ばたに転がる石ころにように。
※かわいそうランキングについては、「矛盾社会序説」(御田寺圭著)を参考にしました
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