<短編日記>U・F・O ミタ
眠くなるようなぬるい風と暖かな日差し。
長椅子が並ぶ校庭。
卒園前の集合写真撮影が行われていた。
彼女は他の組の撮影が終わるのを、プラスチックのカバの遊具に寄りかかり待っていた。ぼーっとしていた。
「あれUFO?」
同じクラスの、前髪ぱっつんの男の子が、
彼女の後ろの空を指していた。
彼の声に気づいたのは、
彼女と、もう一人近くにいた男の子だった。
屋上プールの、もっともっと高い空に
黒い丸が、ぽっかり浮かんでいた。
黒い丸は、モヤに包まれていて
ものすごい勢いで回ってるのがわかった。
ポケモンのゴースみたいだと、彼女は思った。
先生の掛け声が耳に入り、彼女の目線が地上に戻った。
「消えちゃった!」
男の子の声で、彼女はもう一度同じ空を見た。
綺麗な水色の空があるだけで、
黒い丸はもういなかった。
UFOじゃなくて、あれはブラックホールでしょ。
彼女はにんやり笑って、
長椅子に向かって駆けて行った。