新日本の次世代エース海野翔太を考える
今まさに2025年イッテンヨンからの帰路である。
2025年1月4日
レッスルキングダム19
メインイベント
IWGP世界ヘビー級選手権試合
王者 ザックセイバーJr. vs 挑戦者 海野翔太
43分44秒 セイバードライバーでザックが防衛
この試合の正直な感想としては、予想通りでもあり期待はずれ。
もちろんこの感想は、ザックが翔太に勝ったという「試合結果」についてではない。
翔太にフォーカスしてこの試合を見たときに、
素人目に見ても、予想通りの技を繰り出し、試合のターニングポイントでの技やムーヴのチョイスを誤っていたようにしか見えなかった、ということだ。
自分自身、大きな期待を持って現地で見届けたこの試合について、
プロレスを見始めて20年(これでまだ短い部類に入るのだから怖いコンテンツである)、新日本のここ数年の配信試合はほぼ見ている視点での感想を、ひとまずここに殴り書いておきたい。
⚫︎前提として、海野翔太に対する基本的な評価⚫︎
おそらく、ここから海外遠征からの凱旋帰国後〜今年下半期の翔太に対するボロクソな言葉が並ぶので、アンチ感が出てしまうためあらかじめ言っておくと、
自分は海野翔太というレスラーは、新日本プロレスの次期エース確定であり、それに相応しい素材であり、エースにならなければならない宿命があると思っている。
中邑真輔は知らなくても棚橋弘至は知っている。
内藤哲也は知らなくてもオカダカズチカは知っている。
さらに言えば武藤敬司や蝶野正洋のように、
(これより前は時代が違いすぎるので例えにならないと思うので割愛)
プロレスの試合を見たことがなくても多くの人が知ってるというレベルまで辿り着いて欲しいと思っている。
その理由は、分かりやすいところ言ってしまえば、生まれ持った天性のビジュアルと美しい肉体。
この点を重要視している理由を次に述べる。
ユークス時代から徐々にではあるが、ブシロード体制になってからは特に、
新日本プロレスの最高位王座を戴冠する選手は
顔立ちが良く、スタイルのいいレスラーという傾向がある。
もちろんその選手達に確たるプロレスの技術と試合内容があることは大前提なので、
イケメンだからIWGPを巻ける
ではなく、
日本プロレス界の顔となる新日本のIWGPを巻くためにはビジュアルも大変重要だ
という点には留意されたい。
他団体でもこの流れは強いので、一概に新日本がということでもないが、
プロレスを広く世間に届けるためには、
テレビCMであったり電車や街中の広告であったりネット動画の数秒で興味を持ってもらう必要がある。
それにはまず、この人カッコいい、色気ある、もっと知ってみたい、と思わせるビジュアルが必要だ。
言ってしまえば、YouTubeのショート動画で丸刈りで髭面のおっさんが一瞬目に入ったら(逆に目立って興味を惹かれるかもしれないが)大多数の人からは興味を持たれず流されるということ。
ここまでいうとただルッキズムでプロレスを語るように見えるので重ねて述べておくが、
大前提は、現場の観客(=プロレス界の住人)を満足させていることが最重要だ。
ここで改めて海野翔太というレスラーを見てみる。
・世間の大多数の人がイケメンに分類するであろう顔立ち
・180cm越えの現代プロレスのヘビー級で申し分ない身長
・バランスが良く大きく逞しい肉体
そのうえで、
・プロレス界の功労者、レッドシューズ海野レフェリーの実子
というプロレスオタク注目のポイントもついている。
翔太が出場していたヤングライオン杯を見てみると、
ヘビー級でビジュアルで世間の注目を集められそうな選手として
翔太に期待するのは自然な流れではないかと思う。
↓2017年
https://sp.njpw.jp/115667
↓2019年
https://sp.njpw.jp/213797
とはいえ、
北村が圧倒的肉体とパワーで世間を揺るがすのを見たかったし、
カールが新日本に残っていれば今ごろ翔太の対角線に立ち、天山小島、棚橋中邑、オカダ内藤のようなライバルストーリーを作れたのではないかとか考えるし
(とはいえ最近ついにNXT王座戦線の気配だ、がんばれ!)
オーカーンが今まさに広まりつつあるその話題性と個性で世間を支配する姿ももちろん見たい。(個人的には、あの頃の真壁に近づきつつある、今年もう一つ化けてくれ!という感覚)
話が逸れてしまったが、
自分自身の海野翔太というレスラーに対する期待値は当初から高く、
その上で前座試合が素晴らしく、そのファイトに魅了されており、
スーパースター、ジョンモクスリーとの師弟アングルまで用意され、
(もっともこれが現状の最大の足枷になっているように思うのだが…)
海外遠征に出発した海野翔太に期待値爆上がりしたファンがほとんどだったことだろう。
期待せざるを得ないじゃないか。
⚫︎凱旋帰国後の海野翔太⚫︎
2019年末からコロナ禍の海外遠征を経て、2022年11月に凱旋帰国を果たす。
※凱旋帰国前に新日本のアメリカ大会に出てたじゃないかとか、禁断の扉に出てたじゃないかとかは面倒なので割愛。
正直この頃から、自分が今も抱いている違和感は感じていた
ラフネック(荒くれ者、という意味らしい)という二つ名で、
師匠モクスリー直伝のデスライダー(ダブルアームDDT)をフィニッシュとする
が、
コスチュームがピンクと白を基調としていて、
サイリウムを振りながら、
子供のファンと積極的に触れ合う
いやいや、
荒くれ者ならそっちに振れよとか、
ヒーロー(エース)キャラなら二つ名とフィニッシュ変えろよとか
おそらく同じようなことをこの時期からずっとツイートしていたはずである(確かそう)
まぁそこの矛盾も含めて"ラフネック"海野翔太だから楽しんでくれよ、と新日本が言っていると思って納得はしていないがそういうものとして見ていた。
肝心の試合内容については、なかなかに良かったんじゃないかという記憶で、
自身はスーパーなムーヴはできないが、
スタミナがあり、スピードがあり、
スーパーなムーヴをする相手(オスプレイとか)にしっかり対応して
メイン級の試合ができる選手
というイメージを持っていた。
なお、このイメージは今も変わっていない。
(変わっていないのが問題なのだが…)
実際、Historic X-overでのオスプレイとのシングルはかなり好きな試合で、
今後定番ムーヴができてきて、フィニッシュの改良があれば、
間違いなくシングル戦線で納得のあるプッシュでエースになるなと思っていた。
⚫︎2025レッスルキングダムへ向けての海野翔太⚫︎
話を直近の流れに向けると、
イッテンヨンのメインが翔太になるんだろうなという感覚を覚えたのはG1が終わったタイミングだ。
G1を優勝したザックセイバーJr.が、その場で「10月の両国でIWGPに挑戦する」と宣言したときだ。
この時の感覚としては、
・内藤哲也のコンディションがヤバい
・世代交代の流れから、イッテンヨンで内藤陥落、新時代の幕開けなのだろう
・内藤を介錯するのはザックか?辻か?
というところ。
つまりは、次の王座戦で内藤政権は終わるという確信というか、内藤哲也のためにも終わらせてくれという願望があった。
その上でザックが優勝し、
10月の両国でIWGP挑戦という、いわばオカダ時代の前に戻す宣言があった。
ザックが内藤を介錯する(してほしい)、
となるとイッテンヨンは?
G1でサックに勝っているのは海野翔太と鷹木信悟だ。
このとき、鷹木ではなく翔太だと思った理由としては、感覚であるが、
世代交代の流れなら翔太だろ、というところと、
鷹木はドームに不足しがちなゴツゴツ枠担当、という、ある意味当たっていた思い込みによるものである。
なんにせよ、この時点で、
10月の両国でザックが悲願のIWGP初戴冠
↓
直後に翔太登場、G1での勝利から挑戦決定、
↓
レッスルキングダムのテーマが流れつつ睨み合い
という絵が浮かんだ。
実際のところどうなったかは語る必要もないが、
翔太が出てきたときのブーイングはまさに見解一致だったし、
あれは内容が期待に追いついてこない翔太本人へのものでもあり、
こんな露骨なシナリオしか作れないのかという新日本プロレスへのものでもあった。
(少なくとも個人的にはそう思っている)
SANADA、鷹木も出てきて一悶着あったが、
とくに感情は動かなかった、
くじ引きの流れとかもう少しなんとかならんかったのか?という感じ。
(とはいえ、この両国は実際に現地に行っていて、内藤が予想に反して勝つんじゃないかとか、いやいや流石にザックが勝つだろとかドキドキしながらメインを楽しんでいた、
ハズレのない良試合で内藤が陥落するに相応しいだったと思う)
何はともあれ、この時点で、イッテンヨンメインイベントはザックvs翔太と確信したので、
今後の全ての試合が前哨戦というような気持ちで観戦することになった。
結果、その後何事もなくザックが2度防衛し、
翔太はSANADAとのシングルに勝ち、大阪で再度ブーイングを食らうのだが、
まぁ感想としては何も無い。
ザックの2度の防衛戦はそれぞれ素晴らしかった、以上!という感じ。
ここまで書いてようやく、本題の今回の試合に関してである。
(ここまでちゃんと読んでいただいている方がいれば、それは相当な暇人か、僕とプロレス観がピタリと一致している方なので是非呑みながら語りたいところであります。)
⚫︎2025年イッテンヨンのメインイベント⚫︎
試合結果は最初に書いた通り、
ドームあるあるのロングマッチで、ザックの防衛
終わってみれば、ザックの完勝、終始ザックのペース、という感じ。
戦前の見どころとしては、
次期エースである海野翔太は、叩き上げ支持率抜群大正義ガイジンのザックセイバーJr.相手にこの逆境を跳ね返す何かを見せられるのか??
というところだったと思う。
実際ベルトを取る取らないではない。
今回語りたいのはそこではない。
結果としては、先にも書いたが、予想通りでもあり期待はずれ、という率直な感覚を持った。
前哨戦や下半期の内容を見るに、
仮に勝っても支持率でザックを上回る納得感はないだろうな、という予想は当たってしまい、
とはいえ翔太にはこれをひっくり返してほしい!という期待は裏切られた。
凱旋帰国後ずっとあった違和感、疑問がそのまま会場の空気に現れたと思う。
去年に続きバイクに乗って颯爽と登場、
今年はアリーナを一周しステージに乗り上げて花道から入場、
試合序盤は腕をめぐる攻防をじっくりと進めて、
ザックの持ち味を存分に受ける。
ここまでは非常によかった。
途中、自然発生的にブーイングが飛ぶシーンがあったが、悪ノリのようにも思たものもあれば、
実際にヒール寄りのムーヴをしていた故のものもあり、一概にはなんともいえない感じ。
試合も後半になったころ、
タッグリーグで負傷していた左足首を変形の裏足4の字?(よく見えなかった)で攻められる流れがあり、なんとかエスケープ、
その後なんとか立ち上がりエルボーで反撃!というシーンでの弱々しいエルボーにブーイング。
ここでのブーイングをした人は本心で翔太に期待していたが失望した人であろうと思う。
プロレスの自然な流れとしての、
「反撃のエルボーに力が入らない!先ほどの攻めが効いています!!」
だったのだろうが、
あそこは正にターニングポイントだったと思う。
あの場面、会場中が、翔太よく耐えた!という雰囲気。
ここで一撃それまでの強烈なものを叩き込むことを選択していれば、
不屈の精神力を印象付けることができ、会場を味方につけることができたのではないか。
(実際に足攻めが負傷箇所にめちゃくちゃ効いていて、立てないほど激痛で本当の本当に強く打てないということかもしれないが…。プロレスラーではないためわからない。そのあたりは今回は考えず、試合の組み立てとして選択できたものとして進める。)
また、その後の翔太反撃シーン、
ロープエスケープしているザックを踏みつけ連打、レッドシューズレフェリーの静止を突き飛ばして踏みつけ連打、というシーン。
これは意味が本当にわからないところというか、
ここでガチヒールムーヴで自らブーイングを誘う意味はあるのか??という疑問。
戦前のコメントや煽りVでの次期エースになる宣言、
各地で子供たちからもらったお手製ベルトを持ち入場している、
(正直サクラだと思ってる部分もあるが)
先述のコスチュームやイメージカラー等々が純粋100%ベビーフェイス
という、この試合の外枠の部分との大きな矛盾。
これはモクスリー直伝のラフネックの部分だ。
と無理矢理に解釈できなくもないが、
それはそれでベビーフェイス正統派ヒーローの荒くれ者というよくわからないキャラクターの矛盾。
(そもそもそのモクスリーとだって向こうのヒールターンによって今敵対関係になってんじゃないのかよ、いつまでそいつの技そのまま使ってんだよという部分もあるが更に更に長くなるので我慢しておく)
「初めてプロレスを見た人が疑問に思うような所があってはならない」
たしか2019年イッテンヨンでケニーとやる際に棚橋がこんなニュアンスのコメントをしていたと思う。
↓1:00ごろ〜
https://youtu.be/oKWBcE_nlmQ?si=k2HOY2DmWwTiUnEL
棚橋のコメントと今回の翔太の矛盾では意味合いが若干の異なるが、
今回初めてプロレスを見にきた人が、
「チャレンジャーの日本人の方は悪者側なの?ヒーローキャラじゃないの?」
って疑問に思うムーヴだったと思う。
今回のイッテンヨンでいえば、
棚橋が前哨戦でEVILに対して怒りのイス攻撃を見舞った、
あれは相手が極悪ヒールであり、それまでやられてきた多くの蛮行があり、かつ棚橋が絶対的ヒーローであるからこそ、あの瞬間だけのブチ切れとしてとても映えるものであり、
当日の試合が大盛り上がりする一つの要因となったものだ。
それをベビーフェイスがベビーフェイスに対して、ブーイングされている側であったとしても、
ヒーローにならねばならない翔太がやってはいけないムーヴだった。
ましてやその相手がザックセイバーJr.である。
日本プロレスのファンにとってザックは
若くしてノアに参戦し、
小川良成に師事し、
鈴木みのるに師事し、
ファイトスタイルを貫き通し、
コロナ禍でも日本に残り続け、
日本語でマイクもできる、
つい最近悲願の最高位王座を獲得した、
大正義ガイジンスターである。
なんなら、もはやガイジンというイメージすら薄れているまである。
その俺らのザックに対してあえてヒールムーヴをしたのだから、その瞬間ベビーフェイス同士の決戦という意味合いが薄れてしまったように感じた。
まぁ、相手が今のザックであったことも、翔太にとっては不運だったのかもしれない。
話を戻して、
かねてよりのギミックの矛盾
試合内容における選択ミス
この2つが露骨に出てしまった試合だったと思う。
⚫︎海野翔太がエースになるためには⚫︎
何はともあれ、イッテンヨンは終わった。
それに、翔太がエースになるだけの資格があり素質があることには疑う余地はない。
では何が足りないかといえば、納得感だ。
試合結果として勝ち負けの面、
これは新日本さんどうにかしてくださいというところ。
今のところ今年のG1優勝最有力は翔太だ。
ギミック、アングルとしての面、
まずはどうしてもモクスリーの影がちらつくところを清算しなければならない。
その流れでのカスタニョーリ戦、
いずれ来るであろうモクスリーとの決戦に向けていい流れを作ってほしい。
そしてモクスリーとの決戦において、フィニッシュのデスライダーを自分のものとして昇華させるのか、
決別して新技を用意するのか。
いずれにせよ、師匠が今は敵対関係でその人の技で勝ってるとかいう意味不明な状況をなんとかしてほしい。
(これは新日本とAEWの問題でもあるが…)
それが直近の手のひらクルーポイントかなと思っている。
繰り返すが、素質と素材は誰しもが認めるところ。
今日のザック戦、この試合のときは酷かったなハハハハと笑って振り返ることができるように。
新日本プロレスの将来は海野翔太にかかっている。
もちろん、辻陽太、上村優也、大岩陵平が大爆発してその座を奪い取る未来を否定しない。
そしてその対角線には、グレートOカーン、成田蓮、ゲイブキッドが立ちはだかって欲しいし、
ボルチンがヒールターンしたら…なんて妄想は尽きない。
なんにせよ今のところは、新時代その先頭は海野翔太として描かれている。
この長文をとてもマイナスな気持ちで書き始めたのだが、終わってみれば期待感しかない。
期待しているぞ、海野翔太。
今回はここまでとしておく。
拗らせたプロレスオタクの期待と偏愛を綺麗に締めることはできないので、某解説者の言葉を借りる。
今年もプロレスを楽しみましょう。