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<無為フェス#7>映画を上演する試み——BUoY(ブイ)地下・無為開放プロジェクトに参加して——

2022年4月17日(日)、映画『籠城』に関するクローズドの実験に参加した。

映像作品として既に完成された『籠城』の「声」のみを抜き取って編集した映像をBUoYの地下空間に投影し、それに合わせて声の出演者がその場で自身の声を吹き込んでいくという試みだ。

この実験は、「BUoY(ブイ)地下・無為開放プロジェクト」の中で行われた。

『籠城』に声の出演をしていたメンバーのうちその日都合がついた3人(永澤康太さん、金城恒さん、宮城嶋遥加)には、小手川監督から『籠城』のテクストが渡された。

BUoYの地下空間の壁に『籠城』の声のみが抜かれた映像が映し出され、『籠城』の“上演”が始まる。BUoYの地下空間は元銭湯として使われていたのを現在はアートスペースとして活用しているという不思議な場所で、『籠城』の映像はその雰囲気のある空間のコンクリートの壁に映し出された。参加者3人はそれぞれ離れた自分の好きな場所で映像を観ながら配布されたテクストを読み上げる。永澤さんはラジカセマイク、金城さんはエコーのかかるBluetoothマイク、宮城嶋は地声、自分の声の出力のされ方もそれぞれ自由に選択した。金城さんは銭湯の浴槽の中に入って「ここが落ち着く」と言いながら浴槽の近くでテクストを朗読したり、永澤さんはラジカセマイクを使ってマイクのノイズを発生させてみたり、宮城嶋はBUoYの広い空間を活かして身体運動をしながら映像を観たり…。映画館や教室といった場所ではない映像の上演を自由に楽しみながらテクストを読み、聞く。

私は、普段は演劇の舞台で演じることを仕事にしている。演劇の仕事において空間と身体のライブ性ということは永遠に向き合い続けなければならない。その瞬間の自分の身体、他者の身体や声色、空間の景色、空間の色…今その場に在るからこそ感じられる様々な事象に対して自身の身体を開き、呼応させる。今回の『籠城』を上映し上演するという試みにおいても、演劇がもつライブ性の片鱗を感じた。

自分以外の読み手が自分の前の台詞を映像のどのタイミングでどんなテンションで発語するのだろう、それに対して自分はどのような台詞を発し声を紡いでいくのだろう、同じ空間に確かに存在する共演者(=他者)の気配を感じながら共にリアルタイムに『籠城』上演を創り上げているという感覚が確かにあった。

一旦、映像作品として世に発表された『籠城』という作品。これを、また異なる手法で捉え直し実験するという今回の試みは、『籠城』の声の出演者という立場からも、本来舞台での上演を仕事としている舞台俳優という立場からも大変面白く、貴重な機会であった。改めて、この実験の提案をしてくださった小手川監督、髙山プロデューサー、それから、会場を提供してくださったBUoYの皆様にこの場を借りて感謝申し上げる。

SPAC-静岡県舞台芸術センター俳優(2022年3月まで東京大学大学院総合文化研究科修士課程在籍)
宮城嶋遥加(映画『籠城』声の出演)

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※ BUoYスタッフより※
「無為フェス」詳細については以下の記事をご参照下さい。


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