映画『のさりの島』〜藤原季節さん天草里帰り上映会レポート〜📝
映画『のさりの島』
〜藤原季節さん天草里帰り上映会レポート〜
※ このレポートは映画『ジム』上映会時に配布させていただいた会報冊子「NOSATTA」に掲載されたレポートの再編集版になります。
昨年12月、映画のロケ地天草で行われました主演・藤原季節さんのTAMA映画賞受賞を記念した上映会に行ってきました!
映画『のさりの島』全国公開1周年を記念して、こちらのページでは、映画『のさりの島』ファン兼、映画『ジム』上映会実行委員として、2日間の上映会の様子をレポートしようと思います。
季節さんが天草を訪れたのは、撮影以来約2年ぶりだったそうです。
📽2021年12月18日(上映1日目)
この日の天草は〝今季一番の寒気〟との予報通り冷え込んでいましたが、会場となる本渡第一映劇の入口は多くの人で賑わっていて、天草上映会スタッフさん達の歓迎の声と、お客さん達の笑い声が響いてとても温かい空気に包まれていました。
会場に入ると、客席はイベントを心待ちにしてる人達が上映前の待ち時間を各々楽しんでる様子。劇場は天井が高く、壁一面に高倉健さんのポスターが貼られていて『のさりの島』の場面で見たままの光景。まるで作品の中に入り込んだような感覚に。この場所に来れた嬉しさで高揚しソワソワしながら席に着きました。
ふと前を見ると、ステージと最前列の間に机が置かれていて、机上にフォトスタンドが2つスクリーンに向いて置かれているのを見つけました。艶子さんを演じられた原知佐子さんと中村五木前天草市長のお写真です。そこはとても清らかな空気に包まれていて、お2人とこの場所で一緒に作品を拝見できる喜びに更に胸が熱くなりました。
上映後の休憩を挟み、天草の馬場市長と山本起也監督の挨拶からトークイベントが始まりました。
天草市長、山本監督の冒頭挨拶
馬場昭治市長「藤原季節さんおかえりなさい。そしてTAMA新進男優賞おめでとうございます。前中村市長も今日は一緒に映画が観られて天国できっと喜んでると思います。」
山本起也監督「完成披露の時は季節さんを呼ぶことが出来なかったので、今日は第一映劇で皆さんとこの映画を観れたこと嬉しく思います。今日は中締めの意もありますが、これからもこの『のさりの島』を全国各地に届けていきたいですね!」
お2人の挨拶後、藤原季節さんへ天草上映委員会から花束と記念品の贈呈。受け取った鮮やかな花束を見て「人生で貰った花束の中で一番大きいです!ありがとうございます!」と季節さんは嬉しそうな笑顔に。
天草フィルムコミッションの小山真一さんが「皆さんのラブコールが叶って、やっと藤原季節さんが帰って来てくれました!季節さんは熊本空港から天草に向かう車中で「空が広い!空気がうまい!」と言ってましたよー!」と会場で待っていたファンに帰郷時の様子も伝えてくださいました。
和やかに会が進む中、開始早々に季節さんのマイクにトラブル発生!!緊急事態に上映会スタッフさん達がアタフタ走り回ってる中、季節さんは笑顔で「僕は舞台もやっているのでマイクなしでも喋れます!!」と地声でエールを送る一幕も!(カッコイイ!)
その後、無事マイクが入り一安心でした。
藤原季節さんの冒頭挨拶
藤原季節さん「高い場所から失礼します。今日は来ていただいてありがとうございます。先程、ひとりで銀天街を歩いてきました。こっそり山西楽器店に行ったんですが、山西のおばあちゃんがひとりで座っていらしたので「季節ですよー」と言って驚かせちゃいました。
そのあと銀天街のアーケードをくぐって、若い男がしゃがみこんで電話をかけるシーンの場所に立った時、自分の中で込み上げるものがありました。
楽器店に行った時には原さんの姿を思い出したりしました。
今、この場所に原さんの写真があるんですけど、原さんはこの映画を観ることが出来ずに天国に召されました。なので、今日は原さんにこの映画を届けることが出来て嬉しかったです。今日は天草に来ることが出来て、皆さんに感謝の気持ちしかありません。ありがとうございます!」
1日目のQ&A
以下、イベント1日目のQ&Aレポートです。
ーー天草の思い出は?
季節さん「銀天街という場所が大好きで思い出に残ることばかりです。さっき銀天街についた瞬間に「そうそう!この感じ!」と思い出しました。出来ればこのまま1人でふらっと飲みに行きたいくらい好きです(笑)撮影時には休日もあったので、日が暮れるとひとりで飲みに行ったりしていて。そのうちに大好きな居酒屋も出来ました。撮影中に、みつばちラジオに出演したことがあったんですが「〇〇(居酒屋)が美味しい」と放送中に話したら、次にそこへ飲みに行った時に、今まで見たこともないくらい大きな刺身の舟盛りが出てきて(笑)ひとりでは食べきれなかったので、当時一緒に撮影してた学生俳優たちを慌てて呼んで、みんなで食べたことがあります。」
※撮影時、山本監督と季節さんはお酒を一緒に飲む機会がなかったそうです。監督は撮影することに必死だったのと、当時は真冬でお風呂もない合宿所生活で少し体調を崩されていたそうで、お酒を飲むこともなくどんどん痩せていった…とおっしゃってました。
ーー撮影当時は御自身もキツイ時期だった?
季節さん「この映画の撮影の時期は、自分は一体何歳までこの仕事を続けられるのか?ということをとても考えてた時で、特に天草に来た時期は何に追われてるかわからないくらい心がジタバタしていたんです。そんな時に自分のことを、そっとしておいてくれた天草の静けさに救われました。当時は、数ヶ月程休みがなかった時で、必死な状態で天草に辿り着いて、銀天街の近くの宿で何時間も眠り続けていました。今日も移動の車中で、天草に入る瞬間に眠りについて…目覚めると広い空に雲があって、光が差していて…。神がかってる町なんだな〜と改めて思いました。天草に来ると、何故かよく眠れるんです。もし、休息したくなったら「自分にはこの場所がある」という“心の故郷”みたいな場所が出来て、天草に出会えてよかったなと思います。」
ーー1番好きなシーンはありますか?
質問に対して季節さんが「難しいですね〜」と考えてる間、小山さんが「僕はね〜2つある!」と発言され、「えっ!?1番じゃ無いんですか!?」という季節さんとのほっこりしたやりとりが発生し、会場に笑いが起きました(笑)
小山コミッショナーには1番が2つあって、それぞれに「ほんわか」と「胸キュン」とシーンに名前を付けているんだそうです。「ほんわか」は、艶子さんが食卓でソーダフロートを作るシーン。撮影にはかなり手間が掛かった場面だそうですが、アドリブもとても良くて非常に現場が温かかったとのこと。「胸キュン」は、駐車場で将太が清らに車の鍵を投げ渡すシーン。リハーサルの段階から、そこにいたスタッフ皆んなが〝キュン〟としたそうで、あれはやられた…と話されてました。
実は、その鍵の渡し方は季節くんのアドリブとのことで「屋上でブランコを蹴ったり、ハッ!とさせられるシーンは大体季節くんのアドリブが多かったね。」と山本監督が付け加えてました。
そして肝心の季節さんは、好きなシーンはあったけれど小山さんの話を聞いてるうちに忘れちゃったと笑って話してました(笑)
ーー埠頭のシーンで着ている服が突然変わる?
季節さん「あそこは皆さん不思議に思われたと思うんですけど…。今思うと、何故それが起こったのかわからないです。撮影に入る時、この作品では色んな“境界線”を曖昧にしたいと思っていたんです。映画を見てくれた方の感想で、「映画館を訪れていた少女は、ほんとは生きているんだろうか?」と言ってくれた方がいたんです。それが元SMAPの稲垣吾郎さんなんですけど。吾郎さんは「あの映画館に佇む少女は生きていたの?あ、でも(監督に)聞かなくていいよ。それはわかんなくていいっていう映画なんだよね?」と言ってくださって。なんて素晴らしい感性の人なんだろうと思いました。その後も、ラジオでこの映画のことを紹介してくださいました。
その〝映画館で佇む少女が生きてるか生きてないか〟の境界が曖昧になっていることだったり、主人公の若い男の服があのシーンだけ違ってるということで、何か時間が分断されて一瞬消えたように思える…。そんなチャレンジは、通常の映画撮影の場合はあまり出来ないことだけれど、山本監督が自分のアイデアをどんどん受け入れてくださったので、そういったことが次々と起こっていった作品になったのかなと思います。とても自由に演技させていただいた作品だったなと思います。」
山本監督「この作品の“ここが勝負!”というシーンは特にわからない難しい作品です。原さんとの生活空間での濃密なやりとりとかも勝負なシーンだったけれど、スチールで〝どのシーンをメディアの素材にするか〟はとても悩みました。チラシを作るときに〝このカットをメインにしよう〟と思ってもこれといって無い。でも、映画として連続してみると何か境目がない曖昧な感じがいいというのがありましたね。」
※あのロケ地の埠頭は、地元の方でも知ってる人が少ない場所とのこと。小山コミッショナーもお気に入りの場所でだそうで、小山薫堂さんも「滑走路みたいだね」と言っていた大好きな場所でもあるそうです。ロケハン時にも、山本監督が「ここは絶対!」と思ってた場所とのことで、清らと若い男の2人の象徴的なシーンとして印象的な場所になったとおっしゃっていました。
ーー作品に『のさり』という言葉は出てこない?
山本監督「「のさり」という言葉はこの映画の中には一切出てこないんです。実際にこのタイトルが決まったのは、決定稿の印刷が入る直前だったので、撮影中は「のさり」という言葉は全く実感していなかった。撮り終えて作品を沢山の方に観ていただきながら反芻していくうちに、この「のさり」という言葉が自分の中で育っていった感じがします。この作品が本当の意味で「のさりの島」だと感じたのは、コロナで上映が延期になってからです。それまでは制作していくことと、作品を完成させることに必死で、映画の本質を考えるということはなかった。その作業から開放された頃にコロナの自粛期間になり、空いた時間で「これは何の映画だろう?」と考えたんです。もし、延期もなくそのまま上映が始まっていたら、あまり考えずに突き進んでいたかもしれないですね。そう考えると「コロナにのさったんだな」と思います。もし、撮影中に「のさり」という言葉を意識していたら、台詞に「のさったね」とか書いて理屈っぽくなっていってたかもしれない。」
※季節さんも撮影中には全く意識してなかったけれど、今では「のさり」という言葉を意識しない日はないと言っていました。
ーー次の予定や準備は決まってる?
季節さん「朝ドラに出る野望があります!撮影当時、天草中の人に「朝ドラ出てよ!」と言われていて、「出ます!出ます!天草帰ってくるまでに出ますから!」と言っていたのに、出てないじゃん俺…と思って(苦笑)できれば主人公の相手役くらいで出たいですね。そろそろオーディションとかもチャレンジしていって、頑張ります!」
約1時間のトークイベントがあっという間。終始アットホームな雰囲気で会場は大盛り上がりとなり、1日目の上映イベントは終了しました。映画館を出ると、すっかり日が落ちた天草の街に静けさが訪れていましたが、会場を後にした方々の笑顔と共に、沢山の笑い声が銀天街の夜に響いてました。
📽2021年12月19日(上映2日目)
2日目は、朝9時からの上映開始。早い時間にも関わらず会場内はとても賑やかで、今日もイベントを楽しみにされている人たちの笑顔と熱気で溢れていました。
この日も上映後に一旦休憩を挟み、天草の馬場市長と山本起也監督の挨拶からトークイベントが始まりました。
天草市長、山本監督の冒頭挨拶
馬場市長「藤原季節さんおかえりなさい。そしてTAMA映画祭新進男優賞ご受賞おめでとうございます。中村前市長が市を上げて応援していたので季節さんの受賞を心から喜んでると思います。中村市長よかったですね!」
山本監督「僕も藤原さんも、人生の中でいろんな映画や映像の仕事をしながら人生を終えていくと思うんですが、この天草という場所、この3年間という時間は作り手として忘れられないと思うし、もしこの先迷ったり苦しんだとしても、この3年間に戻ってくればまたそこから再生できるかもしれないと思うことが出来る。そんな時間を、藤原さんと一緒に過ごすことができました。ありがとうございます。」
※ちなみに、山本監督はこの日、今冬初めてセーターを着たそうです(笑)
藤原季節さんの冒頭挨拶
季節さん「こんにちは、藤原季節です。天草に帰ってきました。帰ってきてやっぱり、撮影のことを沢山思い出しました。山西楽器店や、銀天街を歩いて、あの頃どんな気持ちで〝将太〟という役を演じていたか、思い出しました。今日も映画を一緒に見ていただいた…原知佐子さんにお会い出来たというか…やっと自分の中で…悼むことが出来始めている気がします。昨夜は、ささやかながら皆でお酒を飲むことも出来て、この『のさりの島』という作品に出会えて幸せな人生だなって、今、感じています。本当に僕は感謝しかありません。ありがとうございます。」
話しながら、撮影当時や今現在の様々な想いが込み上げたようで、時折声を詰まらせながらも、言葉を丁寧に紡いでくれた季節さん。溢れ出た涙を決して拭うことなく、真っ直ぐな眼差しで語る彼の姿に、強さと朴直さを感じてとても胸を打たれました。
実は、この挨拶が終わりトークイベントが始まってすぐに、ステージ照明が突然落ちてしまうトラブルが何度か発生したんです。スタッフの方々は復旧作業に大慌てで大変そうでしたが、私はなんとなくこの時に、この場所に原知佐子さんと中村前市長がいらっしゃっていて「泣かないで!ここで見てますよ!」と悪戯して励ましてくれてたように思えて…。会場内はとても深い愛で満ちていた気がしました。
挨拶中には客席との「おかえり〜」「ただいま〜」のやりとりにほっこりする場面もあったり、涙ながらにお祝いの花束を受け取って「ありがとうございます。お花いっぱいいただいて…」と季節さんが笑顔になる場面もあり、イベント開始から会場内は優しく温かい空気に包まれていきました。
2日目Q&A
以下、イベント2日目のQ&Aレポートです。
――TAMA映画祭新進男優賞受賞について
季節さん「俳優を始めてから10年近く経ってるので、他の映画祭では選考対象外になることが多いんですけど、市民の方々が作ってる映画祭などでは頂けたりするので嬉しいです。あたたかい賞ですね。先ほど銀天街を歩いてる時にも「おめでとう!」と沢山声かけていただいて…。賞の受賞とかは授かり物なので、あまり喜び過ぎないようにしようと思ってたんですけど、これだけ「おめでとう!」と言われると本当に受賞して良かったなと改めて思いました。」
今回の里帰り上映会は、小山コミッショナーが授賞式の夜に、馬場市長に映像をお見せしてその日のうちに「じゃあお祝い会しよう!」といことになり、約2週間というスピードで準備したと話されてました。凄い!!!
――昨夜は天草料理を食べましたか?
季節さん「なんなんですか?あの美味しい食べ物(だご汁)は!残してたまるか!と思って5杯くらい食べました!出された卵焼きが撮影時の味(ちょっと甘めだそうです)と食べた瞬間に気がついて。「これ味似てません?」て聞いたら「実はそうなんです」と、当時の味に似せて作っていただいたようで。本当にありがたい夜ご飯でした。一気に天草人に戻りました。」
前日の上映イベント終了後に、天草上映実行委員会の方々と、映画の撮影時にだご汁を作っていただいたお店でお食事したそうです。
季節さんがだご汁を食べた後の第一声は、映画の中で若い男が艶子さんの食事を初めて食べた時とまんま同じで「うめ~!」と言っていたと小山コミッショナーが教えてくださいました。
映画の撮影に入る前、小山コミッショナーは中村前天草市長に焼酎天草の「池の露」の一升瓶を「現場で飲んでね」と頂いていて、ご自宅の倉庫でずっと保管していたとのこと。昨夜は皆さんで、その焼酎で献杯をしたそうです。そして、献杯終わった瞬間からは皆さんガンガン飲まれたようで、「楽し過ぎてテンション上がって何喋ったかあまり覚えていない(笑)」と季節さんも話されていました。山本監督はその一升瓶抱えて飲んでたとの小山さんからの報告もありました(笑)かなり楽しい夜だったようですね!
――撮影時の学生さんたちとの思い出は?
季節さん「天草に来て、この2日間で撮影中のことを色々思い出しました。京都の学生たちは、撮影中にどんどん変わって行きましたね。初めはみんな緊張していて、何をしていいのかわからない感じだったので〝この状態をどうやって突破させようか?〟と常に考えていたんです。それで〝学生たちがもっと山本監督に反抗したらいいんじゃないか?〟と思い、学生たちに「山本監督倒そうぜ!」と焚きつけてました(笑)そしたら、当時、第一映劇で「止め俺」のトークイベントを学生としたんですけど、そのトーク中に「僕はいつか山本監督倒します!」と言い出した学生も居たりしたので、ちょっと焚付けすぎたかなと(笑)でも、その彼らの変化を見ているのが楽しかったですね。」
撮影期間中はとてもハードだったとのことで、撮影日程後半の崎津では体力と気力とも尽き果てた学生さんたちが、食後の休憩時にはあちらこちらでゴロゴロと転がって死んだように寝ている状態だったそうです。「それだけ精魂込めて打ち込んで、撮影してたんだな。」と小山コミッショナーがおっしゃってたのが印象的でした。「当時はキツかったと思うけど、終わってみるとあの撮影の日々はきっと忘れられないでしょうね~。」と季節さんも当時を振り返り、懐かしそうに話していました。
山本監督は、この『のさりの島』では良い学生さんに恵まれ、皆さんハードな日々を乗り越えて逞しくなっていったと話されてました。学生さん達は、初めは自分達が居る環境がわからず目が泳いでいる様子だったけれど、後半には体はボロボロで体力も限界なはずなのに、目は鋭く生き生きとしていた。彼らから作品に真摯に向き合い「良いもの作るんだ!」という意気込みが感じられたと。その撮影の日々を学生さん達がどう捉えてくれるかが心配だったそうですが、現在は、映画の世界に飛び込んでいく人も実際に出てきていて、この作品はそういう意味でもうまくいったのかな、いいステップになったのかな、と思うと、とても嬉しそうに話されていました。
――銀天街のかかしのシーンでのエピソード
清らが銀天街で沢山のかかしに囲まれてるシーンでは、実際のかかしには本当に魂が入っていてまるで〝生きている〟ようだったが、カメラで撮るとどうしても〝物体〟に見えてしまうので、とても難しくて苦労したシーンだったとのこと。山本監督のイメージでは「イケる!」と思っていたそうですが、当初の設定段階のものと全く違うものになったそうです。監督としては、銀天街に何百体とかかしを並べて動いてるようにコマ撮り撮影をしたかったらしいのですが、「そんなことやったらみんな死んじゃうからダメ!」とスタッフに言われて泣く泣く諦めたというエピソードも(笑)
季節さんは、この出演予定のない銀天街のかかしのシーンの撮影現場に、ふらっと見学しに行っていたことも話してくれました。当時は、カメラを持参して撮影に参加していたので、現場では学生さん達の顔写真をパシャパシャと撮っていたそうです。そしてそんな季節さんの姿を、小山コミッショナーが撮影していたそうで「かかしの中の季節」の写真を持っているから後であげるね!と季節さんに話されてました。(小山さん…その写真とても見たいです(笑))
――黄色の牛乳箱が全て見ていたお話
季節さん「山本監督が、この黄色の牛乳箱をずっと大事にしてる姿とか、撮影されたドキュメンタリー作品などを観させていただいてると〝モノが宿す何か〟というその〝見えないもの〟を大切にされている監督さんなんだなと思いました。」
山本監督「『のさりの島』はこの黄色い牛乳箱が見ていたお話と思ってます。この箱だけがいろいろ見て知っている。おばあちゃんと過ごす時間の中で、若い男の変化の様子を、この箱が証人になっておばあちゃんと一緒にずっと見守ってるんです。」
今作のキーアイテムのひとつにもなっている、この黄色い牛乳箱。天草に昔からある牛乳屋さんのものだそうで、この作品の中での何か〝キッカケ〟となるものはないか?と探してる時に、この牛乳屋さんに相談をしたら、この箱を2つ回収してきてくださったそうです。そういった点でもとても貴重なものだそうです。
山西楽器店が2021年末に閉店してしまいましたが、冒頭のシーンのロケ地、諫早のバスターミナルも2022年の春になくなってしまいました。バスターミナルは当初は別の場所の予定だったそうで、ロケハン時に現地を訪ねたら、その当初予定していた場所が新しくキレイになっていて、イメージと違ってしまったそうです。そのあと別の場所を探していて、偶然に巡りあったのがあの諫早のバスセンターだったそうです。
「もしも別の場所で撮ってたとしたら、また全く違う映画になってたかもしれない。「のさり」という精神性のある場所に辿りついたからこそ、この物語も膨らんでいったし「再生」という意味では、主人公が辿った道のりと映画が辿った道のりが重なっていてなかなかない経験。偶然という必然だった。」と山本監督は話されてました。
「銀天街も撮影してたころとは景色が変わっていってる。永遠に続くものはないけれど、このフィルムの中では永遠に焼き付く。100年後だったとしても同じ場面がそのまま残っている。それが映画の強み。そういうものに季節くんも携わっている。」と小山コミッショナーが言っていた言葉が、鑑賞したばかりのこの映画の余韻と重なって、とても胸に響きました。
【客席からの質問タイム】
Q:天草でこの作品を作ると決まった時に季節くんは天草についてどう感じましたか?
季節さん「天草については、歴史の教科書で知っていたくらいでした。でも、台本を読んだ時に「移動するオレオレ前線」と書いてあって。前線が本州から四国渡って九州に辿りついたのなら、この主人公にはこれ以上行く先がないんじゃないかと思いました。その当時は、天草に〝終点〟というイメージが自分の中にはあったので、あの若者が〝最後に行き着いた場所〟なんじゃないかと考えてました。映画の最後にあの若者は船に乗ってますけど、その後に彼がどうなったかまでは描かれてない。でも自分の中では「彼はきっと大丈夫だからそっとしておこう」と思っていて、物語のその先は考えていなくて。彼が天草の土地で「その後どうなっていくのか」ということは、特に考えなくてもいいんじゃないかという話は監督としましたね。」
Q:杉原亜美さんとの絡みで印象的だったことがあれば教えて欲しい。
季節さん「〈清ら〉という名前がぴったりな方だなと思いました。撮影中は、彼女がリラックスしてなるべく自由に演技できるといいなと思っていて、できるだけサポートしながら共演していました。印象的だったのは、埠頭での「あなたどこの人なの?」と清らが話すシーン。足場がとても不安定な場所だったので、彼女が僕に近づく時に足元を気にしながらセリフを言って演技するのが、初めはとてもやりづらそうでした。その時に「やりづらいと思うことをあえてやってみたら?」と言ったら、彼女は僕の目を真っ直ぐ見たまま近付き台詞を言ってくださって。もしかしたら危なかったかもしれないのに。そんな彼女の姿がとても素敵だったし、その演技が出来るって素敵だなと思いましたね。」
山本監督は「彼女に対しては季節さんと役者同士の2人のやり取りの中で、映画の中におさまっていっていってくれるだろうと当初から思っていて心配することもなく安心していた。」と話されてました。
イベントの最後には、両日とも「のさらー」さんへのプレゼント抽選会がありました。当選者には実際に撮影に使われた山西家の洗濯ハンガーや、銀天街の看板など、作品ファンにはたまらない貴重な品物がプレゼントされました。この品々は、小山コミッショナーが撮影後に御自宅で大切に保管されていたとのこと。そして当選者には、そのプレゼントを季節くんから直接手渡されるという嬉しすぎるサプライズもありました!!!
(なんと!私も幸運なことに「お買い物なら銀天街」看板が当選しました!!看板には季節さんのサインも入っています!家宝です。ありがとうございました(嬉泣))
この抽選会中、『のさりの島』の熱烈なファンのお客様たちを「のさらーさん」と委員会の方が何度も呼んでいたのを聞いて、季節さんは「のさらーさんって言うの??」と小さな声で聞き返したりしてました。そうなんです「のさらー」って言うんですよ、季節さん(*^^*)
最後は、季節さんの挨拶で2日間のイベントが幕を閉じました。
藤原季節さんの締めの挨拶
季節さん「天草で会いたい人や、行きたいところも増えて時間が全然足りないので、すぐにでも天草に帰ってきたいです。京都芸術大学の学生で「天草でいつか映画撮りたい」と言ってる人もいるみたいなので、もし、その映画にご縁があって、出演することがあればまた帰ってくることも出来ますし。せっかくなら天草で朝ドラを撮ればいいんじゃないですか?そしたら一年くらい天草居られるので、市長お願いします!!(笑)
また〝本渡第一映劇でお会いしたい〟という一言に尽きるのですが、これからも応援よろしくお願いいたします。今日は来ていただいてありがとうございました。」
天草の方々の愛情がたっぷり詰まった温かみのある優しい上映会イベント。撮影を懐かしみながら話されるエピソードが、どれも初めて聞く事ばかりで、ファンの私にはとても貴重で、最高に楽しい時間でした。実際に映画が撮影された場所で、こんなにも濃密な時間が過ごせたこと、とても贅沢で忘れられない経験だと思います。
山本監督、天草市長、小山コミッショナー及び関係者の皆様、そして企画してくださった上映委員会の皆さま、本当に本当にありがとうございました。心から感謝しています。
突然決行した天草旅行でしたが、旅先で触れ合った地元の方々が皆さんとても優しくて親切で。初めて訪れた場所なのに、何故か心地よい懐かしさに包まれた感覚となり、心がとけてくようなとても素敵な時間を過ごせました。
天草の空気を肌で感じられたこと、大切な映画のロケ地を巡れたこと、大好きなイルカに会えたこと、地元の美味しい料理が食べられたこと、そして直接触れ合って新しい出会いや縁が繋がったこと、コロナ禍でなかなか人に会えない時期を過ごしていたので、そんな体験がとても嬉しく幸せなことだということを改めて感じられた数日間でした。
「来てよかったな、また来たいな。」と心から思える忘れられない旅になりました。。。
また機会があれば、ゆっくりと天草を訪ねて旅してみたいです。
以上、里帰り上映会レポートでした。
ご拝読いただき、ありがとうございました。
2022.05.29 ぶんず
★上映会概要★
・2021年12月18日(土)
熊本県天草市 本渡第一映劇
15時30分〜上映開始、上映後舞台挨拶
・2021年12月19日(日)
熊本県天草市 本渡第一映劇
09時00分〜上映開始、上映後舞台挨拶
ʕ•ᴥ•ʔ💕💕