流経のこころ 桐蔭のこころ

高校サッカー、流経大柏の応援歌「流経の心」は、高校ラグビーでも耳にする歌です。

2018年夏、菅平で開催されたアシックスカップ 高校セブンズ全国大会で、千葉県代表流経大柏が初優勝を飾りました。
準決勝で関東の王者 ライバル桐蔭学園を、決勝で前年の花園王者 東海大大阪仰星を破ってのことです。

15人制では関東高校スーパーリーグ1stステージでも31-26と桐蔭に競り勝ち(2ndステージでは14-21で敗れ総合順位はAブロック2位)、着実に力をつけているのが見えました。

県予選を危なげなく勝ち上がり、Bシードで花園に登場した流経柏は、第1戦 早実を53-0の大差で破り、第2戦では同じBシードの佐賀工業に完封勝利、さらには京都成章を45-14で下しました。

そして準々決勝。ベスト8が出そろう、花園が一番にぎやかな日。大トリが流経柏v常翔学園でした。1年生からスター選手として活躍してきたNo.8石田吉平選手(現明治/セブンズ日本代表)を中心に、高い攻撃力を持った選手がそろっています。

試合は前半常翔が0-14と圧倒。関西勢の躍進に花園のスタンドは大喜びでした。

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後半に入っても、15分過ぎまで両者得点なし。
後半17分、一気に前に出たWTB永山選手が左隅に飛び込み、続いて22分にはCTB土居選手がトライ、柳田選手のコンバージョン成功!

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26分には、ラインアウトモールからHO作田選手が飛び出してトライし、前半無得点の流経柏が17分からの猛攻で一気に逆転しました。常翔は流れを変えられず、無念の敗退となりました。

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大逆転劇を目の当たりにした花園の観客は「関東のヤツらじゃ、叩いたれ~!」と叫んでいたおじさんたちまで、彼らの闘いに魅了されたと思います。
もちろん、スタンドで見ていた私も。

流経柏の応援団は、ずっと大声で歌い続けていました。もちろん定番の「鬼のスクラム」「鬼のタックル」はたくさんの高校が使っているコールです。そのなかで、「流経の心」はメロディと歌詞が独特で耳に残るのです。

~流経の、こころ!
 たましいに響かせろこの歌
 勝利を信じ
 共に進もう 誇りを胸に~

ググってみた結果、元うたはMONGOL800の「琉球愛歌」。確かに同じメロディラインです。流経柏には沖縄出身の選手も毎年いるし、その影響かもしれません。

準決勝にコマを進めた流経柏でしたが、この大会で優勝する大阪桐蔭に敗退することになります。しかし、この後彼らは高校ラグビーファンの間で語り継がれる名シーンを生むことになりました。

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(ここからはMBSの録画を見て文に起こしてます)

ロッカールームで泣きじゃくる選手たちへ、静かに声をかける相監督。

「泣くのやめろ
 ぐっとこらえろ
 泣くならひとりで泣け
 ここでは泣くな」

「これからまだ
 お前たちのラグビー人生長いから
 届かなかった日本一を獲りに行かなければならない
 このあと4年間と社会人があるわけだから
 その顔で 必ず 将来

 日本一を獲ってくれ
 何年先でも 何十年先でもいい
 獲ったときの景色と 感想を
 俺に教えてくれ」

監督はこの後、「いいチームだったな」
と葛西キャプテンの肩にそっと手をおき、背中を向けます。

泣くなって言われたって、泣いちゃうよ。選手たちの嗚咽が一層大きくなったところで、フィルムは切れるのですが。

この後、選手たちが動きます。
それは、同じ関東で最大のライバル、桐蔭学園をグラウンドに送り出すこと。
それは、大学選手権で、慶應に敗れた京産大が、次の試合で同じ関西勢の立命館を送り出したあのシーンを思わせました。

赤い目をした選手も、まだしゃくり上げている選手も、桐蔭学園のロッカールームの前で、ライバルを送り出したのです。

~桐蔭の こころ 
 魂に響かせろこの歌
 勝利を信じ 共に進もう
 誇りを胸に~

流経の、を桐蔭の、に替えただけの簡単な替え歌。でもね、お互い1年の時からこの代になってからだって、何度も闘い続けたライバルを送り出す歌です。あまりにも美しかった。心が震えました。

決勝戦の日。
大阪桐蔭に対戦するのは、流経柏に送り出され、東福岡を破った桐蔭学園です。
私はMONGOL800の替え歌を口ずさみながら花園へ向かいました。

決勝に先だって行われる合同チーム東西戦の後、桐蔭のベンチ裏3列目という好位置を確保し、カメラを構えて両チームの登場を待ちました。 

桐蔭

桐蔭学園の選手たちは一列に並び、グラウンドに一礼するとバックスタンドの方にベンチコートをなびかせて走っていきます。
その時、バックスタンドにいる桐蔭のノンメンバーたちが渾身の歌を響かせました。

~桐蔭の こころ!
 魂に響かせろこの歌
 勝利を信じ 共に進もう
 誇りを胸に~

この歌を一発目に持ってくるなんて。
大人げなく、涙があふれて止まりませんでした。
試合が始まる前からこんなに心を持っていかれるなんて、花園やっぱりおそるべし。
そしてこのエピソードはテレビで取り上げられることもなく、現地で見ていた一万人ちょっとの観客のうち、流経柏と桐蔭の熱い話を知っている者だけに、ほかには得られない喜びをもたらしてくれました。

ありがとう流経柏。
ありがとう桐蔭のノンメンバーの子たち。

流経の相監督の最後の言葉も、こうして文字に起こすと歌みたいね。

第99回大会開幕まであと少し。
今年もたくさんドラマがみられるんだろうな。

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