文徒ジャーナル Vol.34

Index------------------------------------------------------
1)「PRESIDENT Online」が騙された「すしざんまい」美談
2)ベストセラー「日本国紀」を売りたくない書店の言い分
3)大阪府と読売新聞大阪本社が包括連携協定を締結 
4)脚本家・太田愛がテレ朝「相棒 元日スペシャル」の演出をブログで批判
5)最近書店閉店事情
6)Choose Life Project、右派はブーメランに大喜び、左派は謝りまくりだが
----------------------------2021.12.27, 2022.1.5-7 Shuppanjin

1)「PRESIDENT Online」が騙された「すしざんまい」美談

「PRESIDENT Online」はツイッターの公式アカウントに12月24日付で「お詫び」と記事の削除を発表した。
《【お詫び】当方で12月23日に配信した記事「ソマリアの海賊をあっという間に消滅させた"すしざんまい社長"の声かけ」は、内容が事実と異なるため削除しました。本件が「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された事実はありません。掲載前の事実確認が疎かでした。お詫び申し上げます。》
https://twitter.com/Pre_Online/status/1474220930276954113
「PRESIDENT Online」編集長・星野貴彦も「お詫び」をツイッターに投稿している。
《【お詫び(1)】12月23日の記事「ソマリアの海賊をあっという間に消滅させた"すしざんまい社長"の声かけ」を削除しました。こちらは、黒木安馬著『雲の上で出会った超一流の仕事の言葉』(あさ出版)からの抜粋でした。内容に不安があるため、本書からのほかの抜粋記事もすべて削除しました。》
《【お詫び(2)】版元への確認中ですが、本件が「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された事実はなく、内容はフェイクと思われます。掲載前の事実確認が疎かでした。当方では書籍市場の活性化のため、書籍抜粋の記事を多く展開しています。今後は、版元、筆者を慎重に選び、内容確認を徹底します。》
《【お詫び(3)】掲載後から多数のお問い合わせをいただいていましたが、プレジデントオンライン編集部が直接、執筆・編集した記事ではなかったため、対応に時間がかかってしまいました。あらためてお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。》
https://twitter.com/ho4not/status/1474221982338383873
https://twitter.com/ho4not/status/1474222370517032966
https://twitter.com/ho4not/status/1474222845048008704
「J-CASTニュース」は12月24日付で「すしざんまい社長とソマリアの海賊巡る記事削除 プレジデントオンライン謝罪『事実確認が疎かでした』」を公開している。
《 プレジデントオンラインが配信した記事は、あさ出版(東京都豊島区)が発行した黒木安馬さんの著書「雲の上で出会った超一流の仕事の言葉」の一部を再編集したものだ。
内容は、寿司チェーン店「すしざんまい」を運営する喜代村(東京都中央区)の木村清社長の活動を伝えるもので、木村社長が自らソマリアに出かけ、海賊たちにマグロ漁を教えると、国際問題となっていた襲撃被害が消滅したとしている。さらに、このエピソードはグローバル・マネジメント誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」でも紹介されたという。》
https://www.j-cast.com/2021/12/24427901.html?p=all
朝日新聞デジタルは12月24日付で「バズった『すしざんまい』美談 『ソマリア海賊消滅に貢献』の裏側」(今泉奏)を掲載している。
《つまり、木村社長がソマリアで支援をしたのは「元海賊」かどうかは不明で、「ソマリアの海賊をあっという間に消滅させた」という事実も認められないということでした。同社広報は「話に尾ひれがついてしまっています。美談の部分が強調されています」と教えてくれました。
日本からなかなか訪れることのできない地域を訪れて、社会貢献をめざす姿勢が高い評価を受けることは妥当なはずです。とはいえ、どこまでが事実なのかを見抜くことも大切なはずです。
同社によると、現在はソマリアでの活動は中断しているといいます。治安が悪化し「渡航が難しくなったことが原因です」(同社広報)。》
https://digital.asahi.com/articles/ASPDS4QB9PDSOIPE00G.html
「PRESIDENT Online」は2015年段階でフェイクと認定されているネタに飛びついてしまったということになる。アフリカビジネスパートナーズ代表パートナー・梅本優香里が次のようにツイートしている。
《2016年のフェイクニュースが復活。当時すしざんまいさんに確認しましたが、ソマリアにはまぐろを陸揚げできる港がなく、またすしざんまいは「冷凍倉庫や流通設備」していないので、沖合で捕獲しセーシェルで陸揚げしたとのこと。つまり、海賊は漁師になっていないし、なんの仕事もあげていません。》
https://twitter.com/umemotoyukari/status/1473924215678115841
https://twitter.com/umemotoyukari/status/1473935412318150659
そもそも「すしざんまい」を運営する喜代村の社長・木村清は公式サイトに「ソマリア海賊の話ってホント!?」を発表し、次のように書いている。
《ソマリアで海賊を撲滅した、という話が広まっていますが、正しくは現地で海賊が生まれる原因をなくし、海賊をしていた彼らが今後暮らしていくための手助けをしました。》
https://www.kiyomura.co.jp/tuna-king/legend#material1
「週刊文春電子版」コンテンツディレクター・村井弦がツイートしている。
《すしざんまいのソマリアの件、プレジデントオンラインが正直な対応をしてくれてよかった。しかし、記事のコメントやSNSを見ると、そのまんま美談として受け容れる人が相当いて、改めてフェイクニュースの問題は根深いと思った。特に美談系フェイクは“いい話”ゆえにチェックが甘くなるから要注意だ。》
https://twitter.com/Murai_Gen/status/1474233895101267970
そのまんま美談として受け容れてしまった人のツイートも紹介しておこうか。
海乱鬼《すしざんまい木村社長「マグロを獲ればいいじゃないか、もっと誇りを持った人生にしなくちゃいかん。」
ソマリアの海賊に船を与え、マグロ買取りを約束し海賊を止めさせた男は、マグロを日本一高く競り落とす、すしざんまい木村社長。元自衛官との事だが、男気も日本一だぜ。》
https://twitter.com/nipponkairagi/status/1473873865470537730
三枝玄太郎《本当にユニークな方。すしざんまいのマグロが安いのは、木村社長がソマリアをマグロ漁師にして一手に買い付けているからだという噂も。菅直人内閣の時も、よく「菅首相に意見を言いたい」と木村社長から直々に電話が架かってきた、と霞が関の人が言ってました。》
https://twitter.com/SaigusaGentaro/status/1473855587150884864

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