文徒ジャーナル Vol.40

Index------------------------------------------------------
1)私的使用って横領だろ? テレビ朝日社長は「解任」こそが相応しい!
2)「河瀬直美が見つめた東京五輪」字幕「捏造」でNHKは「誤り」を認める
3)参議院議員・山田宏が駿台予備校に次ぎ目を付けたのはポプラ社だった!
4)Qアノン陰謀論支持の我那覇真子が「教育技術 小五小六 」の巻頭を飾る!
5)TikTokがステマ問題で調査報告を発表
6)「よみタイ」(集英社)が漫画「宗教2世な私たち」突然の公開終了へ
7)沖縄タイムス・阿部岳vsアジア記者クラブの攻防
8)平井美帆「ソ連兵へ差し出された娘たち」(集英社)が重い
9)バーグハンバーグバーグの過激広告ビジネス
10)東京新聞はNHKの虚偽字幕をついに「捏造」と報道!河瀬直美は沈黙
11)古塔つみ「トレパク」騒動の顛末 ロッキング・オン・グループは販売停止!
----------------------------------------2022.2.14-18 Shuppanjin

1)私的使用って横領だろ? テレビ朝日社長は「解任」こそが相応しい!

それにしてもテレビ朝日が酷い。報道機関としては死んだと言ってよいだろう。
共同通信は2月10日付で「テレビ朝日の亀山社長が辞任 ゴルフなどの経費を私的使用」を配信している。
《テレビ朝日は10日の取締役会で、亀山慶二社長(63)の辞任の申し出を受理し、決議したと発表した。会社経費の私的使用など社長として不適切な行為が確認されたとしている。辞任は10日付。早河洋会長(78)が社長を兼任する。》
https://nordot.app/864421015143743488?c=39546741839462401
「会社経費の私的使用」を「不適切な行為」に矮小化しても良いのだろうか。時事通信も「会社経費を私的利用」と書き、両者は利用と使用の違いでしかないが、「横領」とどこがどう違うのだろうか。時事通信は2月10日付で「テレ朝社長が辞任 会社経費を私的利用」を配信している。
《同社によると、亀山氏は昨年11月、実際には行われていない会合に出席する名目で出張し、会食やゴルフに参加。約60万円を会社の費用として精算していた。会食やゴルフの相手についても、実際は参加していない業務関係者の名前を使っていた。
私的な贈答品を会社経費で処理したほか、社用車を私的利用した行為も確認された。
このほか、定期的に開いていたスポーツ局の会合に合理的な理由もなく局長を参加させず、社内の混乱を招いたと指摘された。》
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022021000982&g=eco
定期的に開いていたスポーツ局の会合に合理的な理由もなく局長を参加させなかったというのはパワハラにほかなるまい。いずれにしても、公私混同やパワハラを平然と行うような人物を社長に据えてしまうのはテレビ朝日の、恐らくは構造的体質が問われているはずだ。会長の早河洋が社長に復帰するというが、早河の責任も問われてしかるべきだろう。テレビ朝日ホールディングス会長としての早河洋の責任は重いし、社長の吉田慎一もそうだ。早河、亀山はテレビ朝日のプロパー社長であり、社内で亀山は早河の鞄持ちと言われていたようである。一方、吉田は朝日新聞の出身であり、福島県知事の土地開発に絡む収賄汚職事件を取材し、1978年度の日本新聞協会賞を受賞している!
讀賣新聞オンラインは2月10日付で「テレ朝・亀山慶二社長が辞任、私的会食やゴルフなどを経費請求」を掲載している。
《昨年8月に同局の東京五輪の番組スタッフ10人が緊急事態宣言中の都内で宴会を開き、20歳代の女性社員がビルから転落して左足骨折の重傷を負うなど、スポーツ局社員らによる不祥事が続いた。社内で調査した結果、スポーツ局統括でもあった亀山氏の不正も発覚した。
亀山氏は事実を認め、「職員やステークホルダー(利害関係者)の皆様に大変なご迷惑をおかけしたことを、衷心よりおわび申し上げます」とコメントしている。》
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220210-OYT1T50278/
亀山慶二の経歴が日刊スポーツに掲載されていた。
《1959年(昭34)1月18日、東京都生まれ。早大法学部卒業後の1982年(昭57)に全国朝日放送(現テレビ朝日)に入社。01年に「世界水泳福岡大会」中継のプロデューサーを務めるなど、大型のスポーツ物件で力を発揮。05年に編成制作局長、10年に取締役、14年に常務取締役、16年にビーエス朝日監査役、そして17年にテレビ朝日専務取締役を経て、19年6月に社長に就任。社長としてはビジネスソリューション本部長代行、スポーツ局統括を担務し、AbemaTV取締役も務めていた。》
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202202100000999.html
亀山は2001年にテレ朝が世界水泳選手権の国内放送権の独占契約を結んだ立役者である。
毎日新聞は2月11日付で「テレ朝社長が辞任 ゴルフ、会食に私的流用」を掲載している。
《同局によると、亀山氏は2019年6月に就任。スポーツ局担当役員として、各地のイベントなどに出張していた。しかし21年11月、業務とは無関係な人物との会食やゴルフ代など計60万円を経費として請求。スポーツイベントへの出張という事前申請があったが、虚偽だった。》
https://mainichi.jp/articles/20220211/ddm/012/020/121000c
毎日新聞客員編集委員の小川一は毎日新聞の記事を引用ツイートしている。
《テレ朝社長辞任の速報を聞いて、部長らによる補助金詐取事件の引責かと思いました。そのぐらい詐取事件の罪は重く、トップとして出処進退をきちんとしたのだろうと。ところがなんとゴルフ、会食の私的流用が理由でした。この理由での辞任は今も信じがたいです。》
https://twitter.com/pinpinkiri/status/1491878246551818241
テレビ朝日は「辞任」を受理するのではなく、「解任」すべきではなかったのか。「辞任」では亀山は何の処分も受けず、功労金なり何なりをしこたませしめることになるはずだ。
テレビ朝日は2月10日付で「当社代表取締役社長辞任について」を発表している。そこには、こう書かれている。
《3. 異動の理由
当社では、2021 年 8 月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことを受け、同年 12 月、再発防止策を策定する目的で、当社役職員によって構成される「役職員の業務監査・検証委員会」(以下「検証委員会」といいます。)を設置し、コーポレートガバナンスの観点からスポーツ局のガバナンスを中心に監査・検証いたしました。その過程で、スポーツ局統括でもある亀山氏の業務執行上の不適切な行為が明らかになったため、亀山氏本人及び社内関係者の事情聴取、伝票等の関係書類の精査を実施しました結果、以下の事実が確認されました。
(1) スポーツ局長との意思疎通の欠如
亀山氏は、当社社長に就任した 2019 年6月以降、スポーツ局内において報告会を主催し、ほぼ毎週スポーツ局内の主要な役職者を招集して協議していました。報告会は、会社として正式に設置した機関ではありませんが、スポーツ局内の意思疎通・情報共有・円滑な指揮命令の伝達にとって、重要な役割を果たすことが期待されておりました。
しかしながら亀山氏は、合理的な理由もなくスポーツ局長をこの報告会に参加させないだけでなく、スポーツ局長との日常的な意思疎通も十分に行っていなかったため、スポーツ局内の指揮命令系統の混乱を招き、職場環境を悪化させる事態となっていました。
(2) 不適正な伝票処理による会社経費の私的使用
亀山氏は、当社社長就任後、スポーツイベントへの出席・営業活動のため、会社の費用負担で国内各地に出張していました。しかしながら、その中には業務との関連が認められないにもかかわらず、その際の会食・ゴルフ等の費用を含め、あたかも業務上の関連があるかのように仮装し、会社の費用として経費の精算をしていた事例があったことが確認されました。
(3) その他
上記(2)の不適切な伝票処理以外にも、亀山氏には、代表取締役社長として不適切であって、業務の遂行に支障をきたすおそれのある行為が確認され、取締役の善管注意義務に照らして問題視せざるを得ないものがありました。
放送事業という公益性の高い事業を営む当社社長には高い倫理観が求められることに加え、上記(1)のとおり、スポーツ局内の指揮命令系統を混乱させ、職場環境を悪化させた上、上記(2)及び(3)のとおり、他の役職員の範となるべき社長自らが不適切な行為に及んでいたことは、スポーツ局内の規律を著しく弛緩させるものであって、続発したスポーツ局内での不祥事の遠因となったと評価せざるを得ず、検証委員会としては、この点において、亀山氏の行為は当社社長として許されるものではないと判断しております。
一方、検証委員会の調査の過程で、亀山氏も検証委員会の指摘した上記の各事実を概ね認めてその責任の重大性を認識した上、当社のステークホルダーの皆様及び役職員に対する反省と陳謝の意を示し、当社及びテレビ朝日ホールディングスの一切の役職を辞任する意向を示すに至りました。
検証委員会は、その調査結果を本日の当社及びテレビ朝日ホールディングスの取締役会に報告し、上記のとおり、両社の取締役会において亀山氏の一切の役職の辞任を正式に受理し、これを承認した次第です。》
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0074/files/yID2MvsP5d.pdf
「東スポWeb」は2月11日付で「スポーツ局に“刺された”?…テレ朝・亀山社長の経費流用辞任を追跡」を掲載している。
《それにしても、公表されたゴルフ代など経費使い込みの総額は、民放キー局の社長を辞任に追い込む額としてはあまりに少ない印象だ。
「早稲田大学時代にゴルフ部主将を務めた亀山さんは、営業時代からゴルフ接待を当たり前のようにやっていた。テレビマンにとって、プライベートと仕事の線引きなんてあやふやで大したことじゃない。この程度じゃ済まない多額の不正や、女性絡みの不適切行為があったんじゃ…なんて噂が昨年末ごろには流れていた」と元同僚は明かす。》
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/3990260/
結局、テレビ朝日に不祥事が多いのは社長からしてモラルを欠如させていたという、何ともお粗末な結末である。社長が社長なら部長も部長で、部長が部長なら社員も社員ということであれば、もはやガバナンスが崩壊してしまっているということではないか。こんなことではモラルもモラールも何もあったものではあるまい。そんなものとうの昔に摩滅してしまっているのだろう。社長の首を挿げ替えたくらいで解決できるような、これは問題ではあるまい。
そうそうテレビ朝日労組は日本マスコミ文化情報労組会議(通称MIC)の活動を嫌って民放労連を脱退して、労使協調(=労働貴族化)路線に舵を切った。その結果がこれである。
スポーツ報知は2月11日付で「テレビ朝日『モーニングショー』、亀山慶二社長の不適切行為での辞任を報道せず」を掲載している。「モーニングショー」は今や「報道ステーション」を凌ぐ存在感を見せ、テレビ朝日の顔となっている番組である。
昨年、テレビ朝日のスポーツ局の東京五輪スタッフが緊急事態宣言下にありながら、打ち上げと称してカラオケ飲食したうえに転落負傷事件を起こした際には、この問題を正面から取り上げ、テレビ朝日の社員コメンテーターである玉川徹を始め、キャスターの羽鳥慎一までもが謝罪した「モーニングショー」であったが、今回は、一切、取り上げることはなかった。ちなみに前夜放送の「報道ステーション」では報じて謝罪している。
https://hochi.news/articles/20220211-OHT1T51039.html?page=1
https://mainichi.jp/articles/20220210/k00/00m/040/444000c

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