「海賊王になった」マインドで航海することが、ゴールを達成する近道。不確定な現代にコーチングで“生きる指針”を手に入れる
仕事を取り巻く環境が刻々と変わるなかで、ビジネスパーソンにコーチングが広く普及しつつある。きっと身近にも、「コーチングを受けている知人」が思い浮かぶのではないだろうか。だが改めて、そこで得られるメリットとはなんなのか。
コーチングの先駆者 ルー・タイス博士に後継者に指名された脳科学者 苫米地 英人(とまべち ひでと)博士が、最新の認知科学に基づき、コーチングの効果を最大限に高めるために開発した「苫米地式コーチング」(以下、苫米地式)の認定コーチ、頼母木 俊輔(たのもぎ しゅんすけ)氏に聞く。
「自分はゴールを達成できる人間だ」と本気で信じるマインドが手に入る
――ビジネスシーンが目まぐるしく変わる現代に、コーチングを受けるメリットはどこにあると思われますか。
一番は、周囲の変化に囚われず、「自分が本当に目指すべきゴール(目標)」と、「それを達成できるマインド」が手に入ることではないでしょうか。いま、◯◯コーチングなど、コーチングという言葉が雑に使われていますが、本来のコーチングの定義は、「クライアントのゴールに対する自己能力の自己評価を上げる」ことです。つまり、「自分はゴールを達成できる人間だ」と本気で思えるように導くのです。
――その自信、手に入れたいビジネスパーソンは多いと感じます。苫米地式では、どのように自己評価を上げていくのですか。
まずはゴール設定から行います。例えば、最初にゴールを尋ねた際に、クライアントが「課長になりたい」と言ったとします。でも、それはあくまでも現状の延長線上にあるゴールです。そうではなく、もっと人生という大きな流れで捉え、「どう生きていきたいか」といった視点でゴールを考えてもらうのです。
また、ゴールは、ご両親やメディアの影響を無意識に受けていることもよくあります。私も以前は、ハワイに住みたいというゴールを設定していました。行ったこともないのに(笑)。私は今42歳ですが、幼い頃によくテレビで見ていた影響だと思います。
――ハワイ! 確かに1980年代は、“海外旅行と言えばハワイ”みたいなCMがしょっちゅう流れていましたね。
知らず知らず、繰り返し見たシーンや聞いた内容が、深層心理に刷り込まれているのです。だからまずは対話を通じ、クライアントの信念や価値観を探っていきます。そして、思考の全体像と、「物事を見る優先順位」を把握するのです。その上で、先入観や既成概念、誰かの願望に起因していると感じるゴール設定が出てきたら、「それは本当にあなた自身の願望ですか?」と問いかけて再考を促したり、聞いてもスルーしたり。「スコトーマ」と呼ばれる、心理的に盲点となっている部分を見つけて、それが外れるように、あらゆるアプローチを行います。
そういったやりとりから真のゴールを見つけて、「達成できる」と心から思えるよう、思考の構造や「物事を見る優先順位」を書き換えていきます。
今現在ではなく、「ゴールとなる未来」に臨場感を感じられるように
――思考の構造や「物事を見る優先順位」は、どのように書き換えるのでしょうか。
アプローチ方法は人それぞれに異なりますが、「未来に臨場感」を持ってもらうように導きます。
――臨場感。人が臨場感を感じる場面は、“今現在”ではないんですか?
はい、普通に生きていたら当然、臨場感は“今現在”にしか持てませんが、ゴールとなる未来に臨場感を感じられるよう、導いていくのです。「未来に臨場感を感じる」ことは、苫米地式の根幹とも言える部分です。
少年漫画『ONE PIECE』の主人公 ルフィを例にすると分かりやすいのですが、彼は海賊王になる以前から、「海賊王になった」マインドを持って仲間を率いています。イチローさんも小学生の時の作文にすでに、「契約金1億円でプロ野球選手になる」と書いていて、1年のうち360日、厳しい練習をしていたそうです。もちろん親の影響はあると思いますが、そうやって“未来の姿を強く思い描く”ことが元々得意な人はいて、それが「未来の臨場感を持って生きる」ということなのです。ゴールに対する臨場感を持つことで、圧倒的なエネルギーが出てきます。
――具体的にどうやって臨場感を高めるんですか?
たとえば、映画のプロデューサーになったみたいに、“映像を作るために不足している情報”を集めて、未来側の臨場感を強くする方法もあります。「上場企業を経営して、世界中を飛行機で飛び回っている」がゴールだとしたら、まずは「飛び回るのならエコノミーだと疲れるから、ファーストクラスだな。ファーストクラスの中ってどうなっているのだろう」と調べてみる。次は、「カプセル型のベッドで、ワインを飲んだりしているんだな。じゃあワインは何を出しているのだろう」と調べて、お取り寄せする。そうやって、情報を集めて映像を強化していくのです。すると、「ファーストクラスで世界を跳び回るためには、年商がいくらないといけないよね。だったら職種は……」と、どんどんゴールに関する解像度が高まっていきます。
未来志向で情報収集や行動をすれば、現実も未来に近づける
――つまり、ゴールに対しての道筋が分かるということでしょうか。
いいえ、道筋は分かりませんが、脳がクリエイティブに実現するための方法を考えてくれます。元祖コーチ、ルー・タイス博士の言葉に「Invent on the Way」というものがあります。「やりながら考える」という意味で、コーチングでは、“ゴールが先、方法は後”が原則なのです。本当にやりたいことを目の前にしたとき、私たちの脳は驚くほどクリエイティブに働きます。その状態にもっていくためにゴール設定が重要なんです。
また、未来思考で日々を生きるようになると、その人の中で、過去の後悔や悩みの優先順位が下がり、気にならなくなるメリットもあります。しかも、頭の中ではすでに、「なりたい未来の自分」に近づいていますから、人としての深みも出てきて、自ずと人間関係も変化していきます。
最近よく、“引き寄せ”という言葉を聞きますが、これがまさに、“引き寄せている”状態です。未来志向で情報収集や行動をしているから、現実でもその未来に近づけるのです。すると気持ちの上でも徐々に、「自分はゴールを達成できる人間だ」と思えるようになります。
――そう考えるとコーチって、とても大きな存在ですね。
コーチは、親よりも親友よりも、その人自身よりも、クライアントのことを信じている存在と言えるかもしれません。なぜか人間は、“自分の成功を本気で信じる人”がそばにいると、成功できる生物なのです。
私は、コーチという存在を「縁起」という考え方で捉えています。仏教の考え方で、「人は人との関係性で生きている」という意味なのですが、そんなコーチとの出会い自体が、クライアントを成功に導く1つの変数になるということです。
<PROFILE>
頼母木 俊輔氏 (たのもぎ しゅんすけ)
2019年から苫米地式コーチング認定コーチとして活躍。キャリアでは、長年「企業の編集」をコンセプトに、ベンチャー企業のデジタルマーケティングの最適化を担当。30以上のオウンドメディアの立ち上げと運営に携わる一方で、仕事術を紹介するWebマガジン 「キャリアサプリ」、起業家向けメディア「ゼロイチ」の編集長も務める。2020年には、オンラインサロン「コルクラボ」のメンバーと共に、「企業の編集パートナー」として企業の魅力を伝える会社コルクラボギルドを設立。
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こちらは、ライティングの技術をもっと磨きたいと学んでいる『さとゆみビジネスライティングゼミ』の課題として書いた、講談社様『現代ビジネス』を想定したインタビュー記事です。
課題が出た翌日に、ライターとしてジョインさせていただいている編集チーム『コルクラボギルド』の代表であり、「苫米地式コーチング」のコーチである頼母木 俊輔さんとお打合せがあり、藁をもすがる気持ちでインタビューをお願いして快諾いただきました。モギー本当にありがとう!!!
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