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【今日コレ受けvol.098】PC端会議

7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。


向いているか、向いていないかでいうと、きっと向いていなかった。
けれども大好きだった職場がある。
2年間派遣社員として勤めた、「管」を扱うメーカーだ。


「管」と言っても種類は幅広く、ホースから土管のようなものまで、サイズも素材もまちまちだ。私の仕事は営業事務で、お客さんからFAXで入る注文をPC入力し、自社工場に加工と発送をオーダーすること。

担当はホースで、おそらくそのメーカーで一番注文が多い資材だった。毎朝9時に出社すると、注文のFAXがどっちゃり。工場の当日出荷受付が15時で締め切られるため、それまでに、高速でPCを打たなければならない。
「どんな素材のホースを何メートルにカットして、この接続部品をつけて、どこどこまで納品お願いします」といった内容だ。

営業事務は合計5人いて、ほかの資材も似たりよったりの忙しさなので、周囲の先輩達も死ぬほど高速でPCで打っていた。
でも、打ちながらも口は動かす。私を含め、全員でひっきりなしに話をしていた。視線は画面に固定したままで。

内容は覚えていないけれど、誰かがある営業さんの真似したり、誰かが昨日見た韓流ドラマのあらすじを語ったり…と、他愛もない話だ。
それが途切れることなく、にぎやかだった。

「井戸端会議」とは、昔井戸の近くに集まった女性が、水くみや洗濯をしながら会話をしたことに由来する言葉だそうだが、まさにそんな感じ。
「PC端会議」とでもいうべきか。

おそらく、脳と手、そして感情が根深くつながらないと書けない今のライターの仕事とは、使う筋肉が違うと感じる。あのときの経験って、今何かに生きているのかな……と、ふと。

「受ける」力かもしれない。
 受けて、つなぐ力?

ライターは聞くのが大切な仕事のひとつだ。その次に、相手の話を受けて、さらに深堀りをしたり、違う角度の質問をしたりと、「受ける」力が大切な気がする。
言うなれば、話を聞いて内容を理解しつつ、ときにはメモを取りながらも、同時に次の戦略(質問)も考える力? 

そこに、多少なりとも活きている気がする。
少ない脳のCPUが増設されたのかもしれない。


ところで、その職場で鍛えられた力がもう1つある。早食いだ。力というか、もはやクセ?
工場に15時までにオーダーしなければならないので、昼ご飯は一人約15分。支給されるまあまあ大きなお弁当を、“かっこむ”ように食べていた。

そのクセが未だに抜けず、誰かと食事をした際に、だいたい一番に食べ終わってしまう。
咀嚼力と胃液の分泌が鍛えられた、のかも。

ただこのクセは健康のために、今後は直していったほうがいいのかもしれない。でも、あの2年間の名残りがちゃんと自分の中にあると思うと、なんかうれしい。

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